AI着色は昭和時代の夢を見るか(その26)


PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今月もまだまだ続きます。今回もまた最初の北海道撮影旅行で撮影したモノクロネガから、1972年7月14日に行った室蘭本線沼ノ端-遠浅間・千歳線沼ノ端-植苗間で撮影したカットのカラー化です。「あそこ」は今回で最終回。次回からは、また違うネタで行きます。今回掲載したカットのモノクロ版は<「あそこ」での一日(その6) -1972年7月14日--><「あそこ」での一日(その7) -1972年7月14日-->の中で掲載しています。また今回もカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があるカットもありますが、<続・「あそこ」での一日 カラー版(その11) -1972年7月14日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。



さていよいよここで本当に撮りたかった本命、札幌貨物ターミナル行きのフレートライナーがやってきました。青函連絡船の定数一杯の17輛のコキをD51が単機で牽引する姿は、蒸機全盛時代の北海道でも白眉の一つ。かつて43・10前は十三本木峠を三重連で越えていた列車ですから、いかに平坦で評定速度が遅いとはいえ、かなりの酷仕業ということができます。しかし、この編成を全部まとめて撮影できるところが長万部-札幌間では少なく、この千歳線下りの築堤を上り線のガーダー橋のところから狙うというのが一番の撮影ポイントとなっていました。まずは、少し傾きだした陽射しを受けて走る全編成を捉えます。カラー化も手慣れたもので、なかなかいい感じに仕上がっています。


前のカットはかなり遠方にいるところでシャッターを切っていますから、引き付けてからアップでもう一度狙います。前のカットでもコンテナを緑に塗ってきた感じがしましたが、このカットを見ると目の錯覚ではなく、明らかに緑を入れてきてますね。AI君、最初の頃はコンテナに色を付けられなかったのですが、その後学習してバージョンアップしたようです。とはいえ、低彩度で色を挿して様子を見るという習性は相変わらずですな。草はちょっと枯草っぽくなっちゃったかな。でも小樽築港のD51138号機の北海道のカマにしてはキレイな感じも表現できているし、樽前山もモノクロより目立つし、見返しで射し込む深い午後の陽射しの感じもでているし、一応及第点でしょうか。


同じ千歳線上り線の土手から、追分機関区のギースル装備のD51805号機が牽引する室蘭本線の返空セキ列車を撮影します。これも同じ理由で全編成を一望で捉えられるポイントが少ないのが実情で、どうしてもみんなこの構図になってしまいます。ここに来た人なら誰でも一度は撮っているでしょう。最末期の75年に北海道に来た時は、この土手が人垣になっていました。草地の感じはなかなかいいですね。リアルです。目の錯覚か、黄帯がうっすら黄色く見えるのですが、またこれもAI君得意の低彩度での様子伺いでしょうか。そう思って目を凝らすと、遠くに見える発電所の塔屋もモノクロよりくっきりしていますし、なにより赤白っぽく見えます。まあ、赤白は知識として学習していてもおかしくはないですが。


上の2列車を撮影するために千歳線上り線の土手の上に陣取ってましたので、室蘭本線の上り貨物はお座なりなカットになってしまいました。まあ、午後も深くなると正直言って撮影に飽きてきてますので、こういう遊びもしてみたくなるというものです。牽引機は鷲別機関区のD51596号機。鷲別のカマらしい煤けた感じも良く出ていますし、植物による微妙な緑色の違いもウマく表現しています。とはいえ、またもガーダーはグレーに塗ってきました。あとコンクリートの壁面には苔を生やし過ぎです。その2点さえのぞけば、あとはいい感じに上がってるんですけどね。それでもモノクロ版よりはカラー化した方が活き活きした感じの画面にはなっています。


いよいよ「あそこ」でのラストショット。岩見沢機関区のC57168号機の牽引する室蘭本線の下り旅客列車です。これも原野の感じは及第点でしょう。こういうのは慣れているようですね。草原が濃い色だと緑、薄い色だと枯草と認識するようです。なんか、微妙に花を咲かせちゃってますね。まあ、愛嬌の範囲でしょうか。これも発電所の塔屋がうっすら赤白っぽく見えますから、やっぱり意図的にやっているようです。まあ、この原野が今では苫小牧のメインの市街地になってしまっているんですから、半世紀の年の流れというのは、本当に大きいんですね。そんな昔に行ったような記憶じゃないんですが。それだけ撮影旅行は非日常でアドレナリンが出まくったということでしょう。


北海道撮影旅行の初日であった、あそこでの怒涛の一日を終えて苫小牧に戻ります。苫小牧には親戚がいたので、鮨をおごってもらいました。生の海老の握りを初めて食べた(当時は東京まで生食できる状態で輸送できなかった)のもいい思い出です。その帰りがけのワンショット。沼ノ端駅での鷲別機関区のD51742ごうきが牽引する下り貨物列車とのすれちがいシーンです。乗車中のディーゼルカーには全く色を付けていませんが、クリーム色の部分しか写っていないので、そんなに違和感はありません。このカットのポイントは、右端のモーターカー。ちゃんと黄色に塗ってきました。こういう作業用機械は黄色ということは学習しているようです。カット全体でも、いいアクセントになっています。




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