コレステロールは高めが長生き

脳卒中など少なく低死亡率

コレステロールが高いと心筋梗塞になりやすいとされ、数値を気にしている人は多くいますが、やや高めの方が脳卒中などが少なく、かえって長生きできることを示すデータも相次いでいます。

大阪府守口市で、1997年度に健康診断を受けた住民約16,000人を5年間にわたって調べたところ、男性の場合、コレステロール値の高い人の方が死亡率は低かったことがわかりました(グラフ1)。

男女あわせると、糖尿病の患者や喫煙者はそうでない人に比べ死亡率が高かった一方、高コレステロール血症の人は、かえって死亡の危険が小さかったのです。調査をまとめた守口市民保健センター保健総長で循環器専門医の辻久子さんは「守口市ではコレステロール値の高い人の脳卒中が少なかったため、死亡率が低いと考えられます」と説明しています。「心筋梗塞の予防のためコレステロールを下げる治療は、既に心筋梗塞を起こして再発の恐れがあるなど発症の可能性が高い人に限定して行うべきだ」とも指摘をしています。福井市や大阪府八尾市でも、コレステロールの高い人にがんが少なく、死亡率が低いとの調査があります。 高コレステロール血症の診断基準値は、日本動脈硬化学会の指針で、男女とも220以上とされています。これには成人の1/4以上、中高年女性に限ると半数以上の人が該当し、「過剰な治療につながっている」との指摘があります。このため、東海大医学部教授の大櫛陽一さん(医学教育情報学)は、実態に即した新たな基準値を提唱しています。現在の基準値は、米国での調査で、コレステロール値220以上の場合に心筋梗塞が多かった、との結果が基になっていますが、これは30、40歳代の男性のデータで、女性や50歳以上の男性では、心筋梗塞が増えるのは数値が280程度以上の場合だったのです。そこで大櫛さんは、全国の健診受者約70万人のデータから、健康的な人の95%の人が収まる範囲の上限値を計算しました。これを高コレステロールの基準値とした結果、「中高年の場合、男性は260台、女性では280台とすることが妥当」だということになりました。現行基準に比べ、かなり高めです。逆に若い年代では、数値は低めが望ましい(グラフ2)。この結果を昨年の日本総合健診医学会で発表しました。大櫛さんによると、治療が必要なのは1.遺伝的な要因でコレステロール値が高い家族性高コレステロール血症の患者 2.心筋梗塞や脳梗塞の病歴がある人 3.新たに算出した基準値に近い状態が数年続き、高血圧や糖尿病、喫煙などの要因を持つ人−だということです。

 

日本動脈硬化学会は診療指針の改訂を進めています。
改訂委員の帝京大内科教授、寺本民生
さんに話しを聞きました。

1.改訂のポイントは?

現在の指針は英語を日本語に訳す時にあいまいさがあり、これをなくすことが目的です。
基準値の変更はしないと思う。(患者のため、治療のためではないんですね。)

2.日本より心筋梗塞の多い米国で、高コレステロールの基準値は240と高く設定されていますが?

米国は国民の平均コレステロール値の低下によって心筋梗塞が減っている。日本は逆に数値が上昇傾向にあり、基準値を同じにする必要はない。 (だからといって、何故220と20も低く設定する必要があるのでしょうか?)

3.日本人の中高年女性の半数以上が高コレステロール症(つまり病気)とされてしまう点はどうですか?

そこは問題で、基準値を男女で分けるべきという議論もある。しかし根拠となるデータが少ない。
(では220とした米国のデータは日本人全体に当てはめる根拠はなんだったんでしょうか?)

4.単にコレステロール値が高いからと薬を処方する医師もいますが

残念ながら一部にそういう場合もあるようだ。高コレステロールに特に注意が必要なのは30、40歳代の男性で、心筋梗塞の要因とされる中性脂肪が高い人や、善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロールが低い人が多い。糖尿病、高血圧などさまざまな要素を総合判断して治療してほしい。(読売新聞 h17/02/20 朝刊 一部改定) 

追加(2005/04/13)
高コレステロール 低い診断基準値が過剰治療の温床に

コレステロールが高い、と言われ、健康に不安を抱く人は多い。日本では驚いたことに、成人の4分の1以上、中高年女性に限ると半数以上が高コレステロール血症とされ、患者は2000万〜3000万人!とみられる。 高コレステロールが問題なのは心筋梗塞などが起きやすいとされるからで、日本動脈硬化学会は総コレステロール値220以上の場合を診断基準としている。だが昨年、大阪府守口市で住民約16000人を5年間にわたって調べた結果、コレステロールの高い人の方が脳卒中などが少なく、死亡率が低いと報告された。福井市や大阪府八尾市などでも同様の調査がある。

日本動脈硬化学会は、診断基準の目的は、心筋梗塞などになる可能性がある人の「スクリーニング」 (選別検査)だと説明している。だが、実際に心筋梗塞を発症するのは年間1000人あたりわずか1人程度とされ、中でも女性の発症率は、男性の半分と低い。それにもかかわらず、中高年女性の半数以上を「異常(病気)」と判定する現行の検査は、あまりに大雑把ではないのか。むしろ余分な精密検査を強いるうえ、多くの人に健康への不安感を与える害が大きい。薬物療法を受けている患者の3分の2程 は女性とされ、「多くの中高年女性に必要性の疑わしい治療が行われている」と指摘される。東海大学医学部の大櫛陽一教授は「動脈硬化学会の基準値を超えるコレステロール値の患者に、薬物治療をせずに心筋梗塞を起こしたら、『責任を問われるのではないか』という強迫観念が医師に浸透し、過剰な治療につながっている」と分析する。 日本動脈硬化学会とは別に、日本人間ドック学会は、閉経後の女性の場合は総コレステロール値240以上を高コレステロールとする診断基準を公表している。日本総合健診医学会でも昨年、大櫛教授らが、中高年の場合は男性で260台、女性なら280台とする新たな基準値を提唱した。その場合、高コレステロールと診断される人は、全体の5%程度に絞られる。

医学界でも、現行の診断基準へ異論が高まってきた。 コレステロールが高いうえ高血圧、糖尿病、喫煙など心筋梗塞の危険因子と呼ばれる要素をいくつも併せ持つ場合や、心筋梗塞の病歴がある人など治療が必要な場合もある。コレステロール値を基にした画一的な治療から、男女差や年齢を考慮し、心筋梗塞の恐れの高い人に絞って治療をするための診断基準に改める必要がある。

核酸の基礎知識

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