四柱推命の実占 ~ 貧富、財帛


はじめに

 このページでは、とくに財や貧富の問題について取り上げます。
 財産や貧富とかは基本的に偏財、正財でみますが、それは偏正財が自分のコントロール下にあるものを意味するからです。また、財は食神傷官から生じられますから、食神や傷官も財につながるものだとします。よって貧富をみる場合には、命式中あるいは行運中での財、食傷のはたらきをみます。
 しかし、従財の場合を除き、財が強すぎる場合には財を担えないとし、貧乏または財によって苦労するとします。

- 内 容 -



例1 財旺身強で官殺を恐れず富貴の命 (1940/9/1)

『星命術語宝鑑』

1940年9月1日午時生 男命

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丁火禄午、時上劫出、午未一合、日時火聚。初秋金旺透出、身旺財旺。財旺生官於歳月、早歳出仕。妙在庚金繋甲生丁、霊日正格。読書聡明如顔回、小称神童。高中全校第一名。丁運畢業於台大経済系。亥運、目前服務於経済部。前程極公明、富貴皆全。五福常随。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金火木土水 火金の強さは拮抗している
 財帛格  喜神:木火(水) 忌神:土金
 午未合、劈甲引丁


【訳文】
 丁火に建禄午があって、時柱に劫財が出ている。午未は合であり、日時に火が集っている。初秋は金が強く透干しており、身旺財旺である。財旺で年月の官を生じて、早いうちから出世する。庚金が甲につながり丁を生じるというこの組み合わせの妙は、まさに霊日正格である。読書をし聡明であるのは顔回のようであり、小さい時から神童といわれた。高校では一番の成績で、丁運に台湾大学経済系を卒業した。現在亥運で経済部に勤める。前途は明るく、富貴ともにあり、福は常に多くある。

【命式】
 霊日格というのは、丁日が春夏秋生まれで、用神が庚で甲のとなりにあり、甲が日主を生じている場合をいいます。すなわち「劈甲引丁」の命式です。
 秋の火ですから、季節的には日主は強くはありません。日時支も支合ですので、通根としての作用も弱いといえます。この命式では正財が当令しており最も強いため、木火が喜神といえます。財が強い場合、従財格を除けば、その財に負けないぐらいに日干が強い必要があります。
 幸いこの命式では火は決して弱くはありません。日時支は弱いながらも火の根であり、時干にも丙があり助の働きをします。それ以上に丁を強めるのは月干の甲であり、しかも年干に庚がありますから、いわゆる「劈甲引丁」で、丁は強められます。年月支は水局であるため、浮木となる可能性もありますが、幸い壬はなく、辰が木の根となりますし(土を含むのでなおよい)、丙もありますから、浮木や湿木とはなりません。
 喜神が強いので、いい命式といえます。

【判断】
 財が強く、財を使うことができるので富命です。では貴命といえるでしょうか?「滴天髄」には貴命のカギは「官星」であるといっています。この命式で正官は壬です。壬は日干と合し日干を弱めるので基本的には忌神です。しかし幸い若いときの壬年においては、年支が火の根となっており、水とのバランスが保てそうです。22歳は壬寅年ですので大運亥が年支申との冲を解いて年支寅が火の根となりますし、32歳壬子年は子が日時支の合を解くので、午未が火の根となり、火が強くなります。つまり、正官は一応忌神ですが、正官年でも日主が強くなるため、官とのバランスが図られるわけで、いわゆる「官星に理会あり」という年になります。また大運亥の蔵干には壬がありますから、この期間は試験や就職に非常によいと判断できます。

 今回見直してみると、日主も財も強く身財両停であり、両神成象格といってもいいかもしれません。日主と財の両神成象格では官殺は通関用神であり喜神となります。とすれば壬年は就職昇進にはよい年となります。

 残念ながら、戊運以降この人がどうなったかはわかりません。私思うに、この命式のよさは甲にありますので、42歳からはあまりよくないのではないかと思います。


例2 月支正財格で財を失う例

『当代八字実務編』

1966年8月26日巳時生 男命

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身強用神湿土金、用神在月支申金、謂之真神得用。戊寅年冲月支申金、股票欠損三百万。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:火水金木土
 財帛格  喜神:水金  忌神:火木土
 巳申合


【訳文】
 身強で湿土と金を喜神とする。用神は月支の申金でこれは真神用を得るという。戊寅年は月支の申金を冲し、この年、株式で三百万元(約千百万円)の損をだした。

【命式】
 「命理正宗」の例ではない月支正財格を挙げてみます。「命理正宗」の月支正財格抄訳を参照してください。
 日干は年支に通根しており、劫財が2つもあるので強いといえます。
 日支は月支と合しているし七殺が貼身しているので、従旺格というほど日主は強いとはいえません。
 財はというと、月支にしかなくしかも合されているので、きわめて弱いです。この命式の用神は月支蔵干をとって一応正財としますが、着目すべきは七殺でしょう。七殺は喜神となります。

【判断】
 30歳から亥運ですが、亥は巳を冲して申との合を解きますから、財のよさが出てきます。しかし、いかんせん劫財が多く、群劫奪財となってしまいます。『命理正宗』によれば、財格においては身強でも比劫による身強は歓迎されません。
 戊寅年は32歳ですが、喜神の癸を合し、せっかく働きはじめた月支の申を冲しますから、いいとこなしです。悪くすれば命を落とすところですが、年が若いので、死にいたるところまではいかないでしょう。しかし、亥運に入ってせっかく得たなけなしの財を失うことになりそうです。
 日本円で千百万円でも、物価水準から考えると、かなりの大金です。ただ、株をやっている割には額が少ないように思われますが、命式においては財が弱いのでもともと財に縁がある命式ではありません。


例3 時上偏財格の富貴の命

『星命術語宝鑑』

1937年9月20日寅時生 男命

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本造身旺忌印而両梟出干、梟刃格正。羊刃架殺、土木包弁業。
丙運重殺、27歳癸卯年失恬。婚後10年無子、乙運発財蔵嬌、生活浪費。巳運助刃、40歳丙辰年與妻発生官訟離婚、與妾正式結婚矣。昆仲三人、本命如果発財無子、不発財、一枝伝芳。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:土金火木水
 月刃格  喜神:木水  忌神:火金土
 酉丑半会、寅戌半会


【訳文】
 この命は身旺で印を忌み、二つの偏印が透干している。まさに梟刃格である。羊刃が殺にかかる。土木請負業。
 丙運は殺が重なり、27歳癸卯年で父を失う。結婚後10年子がなく、乙運に発財で妾を囲い、浪費生活を送る。巳運は羊刃を助け、40歳丙辰年に妻と訴訟を起こして離婚、妾と正式に結婚する。兄弟は3人。本命はもし発財すれば子はなく、発財しなければ一枝伝芳(一人娘?)をもつ。

【命式】
 今回も『命理正宗』の例ではない時上偏財格をあげてみます。時上偏財格抄訳を参考にしてください。
 ここでは梟刃格にしています。梟とは偏印で、刃とは羊刃のことです。月支が羊刃でそれを偏印が生じているのをいいます。
 日干は月令に旺じて日支にも通根し、月支年支が半会でしかも印が貼身していますから、強い日主といえます。
 正官は日支時支に通根して半会ですから、弱いわけではありませんので、この格は従旺格にはならず、私流の格局の分類では月刃格となります。
 『命理正宗』では 庚日寅時で他に財がない命式を時上偏財格としています。時上偏財格で身旺で、他に財がありませんから、『命理正宗』の見方でいけば、財の行運にいけば富貴の命になりそうです。
 日主が強いので、丁正官は喜神となりますし、時上偏財格は官星を恐れません。官が喜神で強いですから、貴命といえます。しかし、よく考えると命中の官は印を生じるため、喜神といっても役割上は忌神的であり、あまり清廉潔白というような貴とはいえないでしょう。

【判断】
 乙運はまさに財運でありますから、財運がよくなるのはそのとおりです。また時上偏財は気前がよいというのも、そのとおりになってます。では離婚の件はどうかというと、大運巳は三合会局となり日主が強くなりますし、丙は七殺で一応は喜神であるものの官殺混雑で、辰は日支を冲しますので、離婚の可能性がみてとれます。(ただ酉と合なので、日支の冲の作用はさほど強烈ではないと思います)偏財は妾の象意があります。
 家庭生活ははたから見れば問題があるように思われますが、離婚自体はもはや特殊なことでもありませんし、富貴と道徳とは別のものだという功利的な考えからすると(中国占術はだいたい功利的で道徳性は問わない)、この命式は富貴の命といってよいのではないかと思います。
 私は、たとえ富貴であっても家庭生活がごたごたしているのはいやですけど。(これも生まれもった価値観かもしれませんが)


例4 未婚破財の命

「子平命学弁証」

1961年6月4日午時生 女命

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本造尚未結婚。「逗陣」的男友倒是不少、有政商名流。丁運、経営餐庁、迷上六合彩、十賭九輸、債台高築、交酉運、宣布倒閉[ホウ]路。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水土木金火
 偏印格  喜神:火土  忌神:木水金
 戊癸干合、巳丑半会、卯辰半方局、辰紅艶


【訳文】
 この命は未婚である。「逗陣」(一緒にいるというような意味だと思います。方言?)する男友だちは多い、中には有名人もいた。丁運にレストランを経営したが、宝くじにふけり、負けが込んで借金を築く。酉運に入り倒産して夜逃げした。

【命式】
 古い見方をすれば、日主が強くまた財官が透干しており辛が癸を生じているので、好命といえそうです。せいぜい傷官見官が欠点と判断されるものの、互いに離れており、それほどの凶意はないと判断されるでしょう。しかしながら実際は違っています。
 五行の強弱でいえば、戊は丑辰に通根して月令は丙ですからいかにも強そうですが、木は卯辰で方の一部、金は巳丑で半会、財は丑辰に通根し傷官に生じられてますので、癸水に比べて弱いといえます。すなわち、喜神は火土で木金水は忌神です。さらに戊は正財癸と合しており、女性が忌神の月干正財と合するのは概してよくありません。さらに時支に沐浴があり、日支辰は紅艶桃花で、身持ちのよくない女性である可能性が高いといえます。
 正官乙はありますが戊にはあまり作用がなく、日干戊は癸と合してますので、本人の関心はもっぱら財的な方面にあり、結婚にはさほど興味がありません。

【判断】
 丁運は辛を激しく剋して弱めるので、凶意を含みながら(財印交戦で丁辛の干関係も悪い)もまだましなのですが、酉運は巳酉丑の金局が成立して、忌神の傷官と財が強くなり倒産ということになります。もっとも酉は卯と冲、辰と合でもあり複雑な地支の関係となりますが。
 以降、戊は喜神ですが癸と争合するので、多少ましな程度、辰と冲、卯と合なので、日干の根となることができます。ただ地支の関係が複雑で、流年干支次第では悪くなります。己運は喜神ですが、まずまずという程度。亥運は木局の一部で方と局が混じり、しかも木は忌神ですからいいことはありません。
 行運喜忌を考えると、この命は好命とはいえません。


例5 澳門実業家の命

『命理通鑑』

1895年3月15日亥時生 男命

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巨富伝徳用之命。従澳門娯楽事業経営致富、死於壬運庚子年冬、寿六十六歳。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木土金水火
 財帛格  喜神:金土  忌神:木火水
 卯酉冲、亥卯未方局


【訳文】
 巨富である伝徳用の命。澳門の娯楽事業の経営で富をなす。壬運庚子年の冬に死す。66歳。

【命式】
 辛金が酉に坐しておりまた印もあるので強いとします。己土は未に通根していますから、これも強いといえます。また乙木は月令に旺じ、亥卯未の会局となりますから強いといえます。ただし、卯酉の冲があるため、会局といってもその力は弱まります。
 身強財旺ですのでこれは典型的な富命です。しかし、辛の根である酉は卯と冲であり根としての作用は弱くなっています。ですから、財と日主では日主が弱く、日主を強める金土が喜神、水木火が忌神となります。
 もっとも、これは原則論であって、実は己は辛を汚す作用があり、必ずしも全面的に喜べる干ではありません。むしろ乙木が己土を抑えることで、かえって乙木が喜神となっているともいえるわけです。だからといって己土が辛金を生じないというわけではありません。ただ生じる際に凶意が出てくるというわけです。

【判断】
 乙木運から事業は転機を迎えます。これは財運に入ったということもありますし、甲運では己土を合去して、より財への働きかけが直接的になったことで、内情はともかく、財が増えることになります。そのあとは西方金運ですから、これはまちがいなく喜神運です。
 しかし、壬運は辛金を淘洗するはずなのでいいはずですが、庚子年に亡くなってしまいます。庚は乙を合去し、この命式の特徴である財を奪ってしまい、己土への制がきかなくなりますので、これは悪い運には間違いありません。
 では壬はどうか。この場合、流年が子であり、水は強い命式になってしまいます。こうなると、傷官の悪いところが出て辛金は極端に弱くなります。これは普通に日主が弱くなる命です。若くて体力がある時ならともかく、年をとってくれば亡くなる可能性が高くなります。


例6 才あって富なき命

『八字命批範例』

1955年2月25日卯時生 男命

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男命傷官為用、不見財配、雖巧不富造。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木火土金水
 印綬格  喜神:金水  忌神:木火土



【訳文】
 男命で傷官を用とする。財配をみず。巧といえども富ならぬ造。

【命式】
 丁日主の春生まれですから強い日主です。しかも巳寅未に通根しています。乙木は月令木ですし、未卯に通根しているからやはり強いです。戊は未に通根していますし、丁に生じられていますが、木火ほど強くはありません。地支に水がなく癸水は弱いです。金は巳中にありますが、それしかなく最弱です。
 木火が強いのですが、傷官もそれほど弱くなく、七殺もありますから、普通の内格として印綬格とします。ただ傷官戊は丁を洩らし喜神ですから、傷官格といった方がいいでしょう。
 内格ですから扶抑用神をとり、水金を喜神、木火を忌神とします。命中の戊は喜神ですが、行運の土は基本的に忌神です。
 なお、この命式は全陰の命式です。この命式は比較的見やすい命式でしょう。

【判断】
 まず財に関して言えば、この命式の喜神である癸水を働かせるには財が必要ですが、財がありません。殺も喜神なのに極めて弱いですから、貴でもなく富でもありません。
 土は行運では癸を剋すので忌神なのですが、命式の戊は丁を洩らし乙を剋するので喜神です。いわゆる有火有炉であり、戊が丁の強さを緩和します。すなわち喜神の傷官であり、これは才能豊か、聡明であることを示します。早年は北方運で七殺がやや強くなりますから、成績は優秀でしょう。
 財が喜神でも命中にほとんどありませんから貧命です。大運でも晩年に申酉庚辛が巡ってきますが、酉は卯と冲、巳と合で作用が弱くなり、申は寅と冲、巳と合でやはり作用が薄いです。また庚は乙と合するので作用はありません。よって行運でも財はなかなか働いてくれません。
 この命式は聡明さや才能を生かして喜神運のときに安定した職業につくのがよいのですが、印比劫が忌神で強くまた官殺が喜神で弱いため、忍耐力や協調性に欠けており、組織内での成功は難しいでしょう。ただ貧乏覚悟で芸術家(小説家とか)や学者を目指すという手はあるでしょう。と思うのですが、残念ながらどういう職業についているのかは載っていませんでした。


例7 行運で富命となる例

「当代八字実務編」

1952年10月5日戌時生 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:土水木金火
 正官格  喜神:木水  忌神:金火土
 甲己合、申酉戌方局、辰酉合



【命式】
 甲日主で秋生まれですから弱い日主です。辰に通根していますが、辰酉の合にあって、通根の作用は弱いです。また秋生まれで地支に金の方合があり、金の行運では日主が弱くなります。しかし甲比肩、壬偏印がありますから、全然弱いわけではありません。
 己土は甲と合して日干への影響力大です。辰戌に通根していますから、強いと判断されます。壬水は申辰に通根していますが、己の剋を受けます。
 五行的な強弱は土水木の順です。申酉戌の方合がありますから、金は比較的強く、火は最も弱いということになります。したがって喜忌は、木水が喜神、土金火が忌神です。
 四柱をみると、年干支および時干が喜神です。これは祖先の徳を受けつぐ、事業を継承することを示唆します。実際、この命は父親から受け継いだ会社の会長を勤めています。

【判断】
 財が強く日主が弱い場合に行運で日主が強められれば富命となります。21歳から北方水運、41歳からは東方木運となっており、日主を強める喜神運が続いています。この時期に富をもつことになります。事業は成功するでしょう。
 ただ、この命においては、地支に金が多く、庚辛の行運では利を失う可能性があります。また、官殺が地支に多いのは内面的には消極的であり、事業を興すというよりは二代目として事業を守る方にむいています。


例8 帰禄格で貧命の例

『命理正宗』

1602年1月1日亥時生(推定) 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木火土金水
 従強格  喜神:金水  忌神:木火土
 亥子丑方局、子丑合、申子半会、申亥害



【命式】
 壬日で冬生まれですから強い日主です。地支に水が多く方を為していますが、方(亥子丑)と局(申子辰)が混じっています。また、天干は3干が印で地支に申と丑があるので、どちらかというと従強格でしょう。したがって、喜神は水金木であり、忌神は火土です。火財は印を剋するので忌神となります。
 ところで、昔の格局ではこの命式は帰禄(日禄帰時)格となります。帰禄格は身旺がよく食傷財運で発達し、官殺、印、比劫を忌むとされます。身旺ではありますが、印が強すぎるため、帰禄格としてもあまりよくありません。また財のない帰禄格は貧命とされます。

【判断】
 財である火が忌神ですから当然貧命ですし、金寒水冷の命ですから、身体もあまり強くないと思われます。
 行運をみてみると、早年は土火で忌神運ですからよくありません。なお丙は辛と合して水化するので喜神となりそうですが、比劫奪印でかえって庚印を弱めますので、それほどいいわけではありません。本来金寒水冷の命ですから暖(丙)が欲しいのですが、丙では役に立たないというわけです。すなわちよい命になりようがありません。丁は少しはましでしょうが、火も木もなしではその作用はわずかです。乙運は庚と合して取り去るので忌神運ですし、午未は、子午、丑未の冲で子丑の合を解くのですが、午も未も丑も忌神ですからもちろんよくありません。また合冲乱れるのは生命の危険があります。
 この命式は、帰禄格とみてもよくありませんが、そういう格を知らなくても、貧命であることはわかります。


例9 帰禄格で福命の例

『命理正宗』

1602年11月27日亥時生(推定) 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水金木火土
 従旺格  喜神:金水木  忌神:火土
 寅亥合



【命式】
 壬日で冬生まれですから強い日主です。辛は2干ありますが、印としての作用はあまりありません。庚とは違うところです。地支には寅亥があり、互いに合となっています。寅亥とも木を含み、地支においては木が強いです。一応従旺格ととることができ、金水木を喜神とし火土を忌神とします。
 ところで、昔の格局ではこの命式は前と同じく帰禄(日禄帰時)格となります。帰禄格においては食傷、財を好むということであり、寅中に甲木丙火がありますから、これは帰禄格としてはよい命式と言われます。
 果たしてそうでしょうか?この命式も依然として財は忌神ですから富命とはいえないでしょう。とくに丁は壬を合して取り去るのでよくありません。

【判断】
 さて、財のことはさておいて、行運を見てみますと、中年までは水木運ですから喜神運です。すなわちその間は福命といえます。
 丙は辛と合して水化します。例8のように庚印を奪うということはありませんから、五行的に火は忌神であってもこれは喜神といえます。辰運は壬の根となりますので喜神運、丁運は忌神運、巳運は亥と冲ですが、寅亥の合を解き、また辛の根となりますから、忌神とはいえません。ただし単純に喜神ともいえません。合冲乱れるのは若干の凶意を含みます。
 すなわち、行運は大半が喜神運であり、これは好命といえます。ただ財のよさはありませんから、富命とはなかなか言えないでしょう。忌神で弱いので食うに困らないだけの財はあると思われますが。
 この命式は、帰禄格とみてもよいわけですが、それよりも従旺格として行運を見ていったほうがよいでしょう。例8、例9でわかるように、帰禄格だからいいとか悪いとかは即断できません。もちろん従旺格だからいいとか悪いとかも言えません。


例10 億万富命の例

『星命説証正編』

1565年10月17日申時生 男命

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51行巳運、損失財帛、56至68財帛倍進。63行辰運冲刑、進入疾厄難郷、70甲戌年流刃冲、寿止。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:火土木金水
 財帛格  喜神:金水土  忌神:木火
 


【訳文】
 51歳巳運のとき財帛損失、56歳から68歳で財帛倍になる。63歳辰運冲刑となり、病気をして故郷を離れる。70歳甲戌年流刃冲で死ぬ。

【命式】
 丁日主の秋生まれですが、戌未に通根しており丙火や乙木もあるので、強い日主です。戊傷官は丑戌未に通根しており強いですが、日主に若干劣ります。月支に辛偏財があります。したがって財官食傷を喜神とし印と比劫は忌神となります。
 辛運は財ですが丙と合するので、財のよさが表れてきません。しかし忌神の劫財を取り去るので、巨財ではないですが、財を作ることはできます。巳運は火を強めるので破財となります。次の庚運では乙庚と干合し、秋で丑戌申が土金支ですので、金化します。すなわち財多身強で大富を得ることができます。次の辰運は戌を冲するので平運です。己運は食神であり喜神運、卯は戌と合ですが、未と会で印を強めますので忌神運となります。

【判断】
 この命はもともと日主が強く食傷(土)が多いので、財運が巡ってくれば、食傷生財となり、富命となります。水は本来喜神のはずなのですが、癸は戊を合去しますので、忌神です。すなわち傷官があるために貴命にはなりにくいです。

[2011年8月6日追加]


例11 私営企業的老板の例

『中国実用四柱預測学』

1956年4月3日辰時生  男命

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従92年至97年発了大財、従98年(戊寅年)至2001年(辛巳年)比一年差、近両年都是欠本、完全没有賺銭。


【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金水木土火
 化水格  喜神:水木  忌神:土金(火)
 申子辰水局、子卯刑


【訳文】
 92年から97年大財を得る。98年(戊寅年)から2001年(辛巳年)まで1年から2年ぐらい、資本を失い、まったく稼ぐことができなくなった。

【命式】
 丙辛の干合があります。月令は乙木ですが、申子辰の水局があるので、私は丙辛は水化するとみます。水化しないとすれば、丙辛は合去となります。いずれにしても金水の強い命式と考えていいでしょう。私は従児に近い化水格とみます。そうすると、喜神は財食傷であり、印と比劫は忌神ということになります。官は微妙です。
 財は月令であり食傷(水)の生を受けますから、食傷生財の行運で発財する命式です。

【判断】
 21歳からの甲午乙運は財官運であり喜神運です。午は子を冲しますが、子は辰と会なので、冲の作用はあまり強くなく、かえって午が弱くなります。この期間におそらく発財し老板(社長)になったのは、やはり甲乙木運によるものでしょう。
 92年壬申年は36歳で未運に入ります。未は卯と木の半会であり、94年から甲乙年となりますから、おそらくここで大きな財を作ります。
 ところが、97年からは丙運となります。従児格では官殺は必ずしも忌神とはいえませんが、喜神ともいえません。術者によっては、丙運は丙辛の争合となり化水を解いて破格となる、と説明するかもしれません。まあ現象としてはそうなっています。流年を見ると、戊寅、己卯、庚辰、辛巳と東方運なのですが、印比劫の年であり、また寅や巳は申と冲合、辰は自刑で子卯は互刑ですので、年回りとしてもよくありません。
 さらに申運ですが、申自体は庚の根となり忌神運となります。比劫は喜神である財を壊しますので、財の弱い従児格ではとくに悪いといえます。

[2012年6月10日追加]



作成 2012年 6月10日追加
改訂 2020年 7月25日  HTML5への対応、一部見直し