●パス伝による長崎設定

長崎は古来、海国として発展してきた土地である。島嶼部の五島・松浦、本土では平戸、長崎が水軍衆の拠点あるいは貿易拠点として栄えた。特に長崎は江戸期を通して対ヨーロッパ貿易港の地位を保ち、幕末動乱期には幕府及び諸藩が武器や軍艦の調達に足繁く通うなど、時代の転換にも大きな役割を果たした。近現代でも、日本海軍の軍港・工廠や第二次大戦後は米軍の基地が置かれるなど、海外・海との繋がりは本当に強い。ゆえに、外国絡みの設定・シナリオが似合う。

 

●長崎・その特色

長崎は鎌倉後期から(島嶼部)南北朝・戦国時代から(本土)港として発展し、はじめは元・明期の中国で栄えた仏教(元のラマ教、明初の白蓮教)系の神族、及び仙族(明は中期以降道教が勢力を強めた)、後にはヘブライ神族が多く渡来した。

両者は今なおこの地に強力な地盤を築いているが、江戸時代にキリシタンが弾圧されたことから、一部のヘブライ神族は仏教神族と習合し(マリア観音など)、純粋なヘブルではなくなっている者も多い。仏教諸神族や仙族は弾圧を受けなかったのでそのままである。

 

設定&シナリオソース

●長崎

長崎はもともと、何の変哲もない海辺の村であった。ここが脚光を浴びるのは、大村純忠が長崎をローマ教会に寄進したことを知った秀吉がこれを没収、直轄地にしてからである。秀吉は一応、バテレン追放令を発したが、彼らの渡航を規制する実効性のある法律は施行しなかった。そのため、長崎は以後も貿易港&バテレン渡航地でありつづけた。

秀吉にはカルトマジックや拳法の本場である朝鮮・明との戦いに彼らの力を利用しようとしていた節があり、彼らから様々な技術・魔術などを入手する代わりに渡航を黙認した可能性が考えられる。もしかすると、豊臣家やその譜代の九州大名、例えば小西家などには西洋剣術、銃砲術や魔道の技を身につけた超人部隊が編成されていたかもしれない。あるいは、獣人などの人間兵器が開発されていたとしてもいい。PCをその子孫ということにすれば、るろ剣・サクラ調の超人剣士が作成できよう。

ちなみに小西行長については以下を参照。

 

●小西行長(聖アゴスティーノ)

豊臣大名。肥後宇土194千石。官途は摂津守。アゴスティーノの洗礼名を持つキリシタン大名であり、その信仰はかなり深かった。文官とされているが、加藤清正と対抗できるだけの強力な軍団を有し、朝鮮の役では講和交渉の使節として明の宮廷にも乗り込むなど、幾度も死線をくぐっている。出自は薬屋・海上商人であり、外交の他調達・輸送任務や船戦を得意とした。

天草に飛び地で領地を持っていた。死後、殉教者として聖人に列せられた。

役者は赤坂晃(最初は舞台役者として業界入り。1993年以降、本来の状態に復帰している。「元禄繚乱」の浅野大学長広)、渡部篤郎(「北条時宗」の北条時輔)を希望。

 

・転生体作成の指針

技能はまず間違いなくハイテク。系統では外国語・薬学を取得させるべきである。闇の住人ではないので魔道の線はない。小西軍は銃の装備率が高かったという説もあるため、射撃でもいいだろう。魔界魔法メギド系でも可。技能が自作できるなら、水上戦闘術や航海術を持たせるのもいい。転生前なら、熊本城宇土櫓に住んでいるというふうにするといいだろう。(清正公の神域に招かれたPCが往時の姿を取り戻した熊本城内で迷い、西洋風の開かずの扉を発見し、不審に思って触れると扉が開きカテドラルさながらの行長の神域に通じているとか)

 

江戸時代になるとキリスト教への弾圧が強まり長崎は天領とされ、三代将軍家光の時代になると出島が置かれてヨーロッパ人の渡航が制限されたため、バテレン渡航地としての機能は失われたが、「唯一の」対ヨーロッパ貿易港としての機能は残った。出島設置・渡航制限の直接の原因が島原の乱であることは言うまでもない。

島原の乱に関しては、乱の首領天草四郎が実は羽柴天四郎といい、豊臣秀頼の子であるという野史が存在する。これを事実とし、さらに彼が生き延びたとするならば、出島に逃げ込みヘブライ神族エージェントの力を借りて魔人化し、再三の徳川への復讐・日本征服を企むといった江戸時代シナリオが考えられる。あるいは、彼を海外逃亡させ、その子孫である大財閥の主が現代、ヘブライ神族の天使/堕天使たちを率いて日本乗っ取りを企てるとしても面白い。逃亡先によっては、イスラム神族との結託もありうる。

ちなみに天四郎については以下を参照。

 

●羽柴天四郎秀綱

薩摩に落ち延びた豊臣秀頼が当地の娘との間にもうけた子の一人。秀頼の四男ないし五男とされる。詳細は全く不明。豊臣一族として設定するか、あくまで天草四郎として設定するかでキャラクターが決まってくるだろう。

 

・一応の作成指針(謝)

どちらにしても貴公子風になるのは間違いない。天草四郎として設定するなら、ハイテクや魔道を身につけ武術にも通じた白面の貴公子、豊臣一族ならば恐るべき魅力と智謀を身につけ、黄金の魔力を操る魔性の美少年(危)、特技は超能力ないしはコンプと魔道、といったところか。

 

時代が下って田沼期には、田沼意次の積極貿易策によって長崎貿易が拡大され、長崎は蘭癖大名たちの聖地と化した。長崎通いの常連としては薩摩の島津重豪などが有名である。また、諸藩藩医や町医者、本草学者などにも長崎へ留学する者が多くいた。平賀源内も長崎へ足繁く通い、後にはここから海外へ逃亡したという風説もある。

田沼意次の長崎貿易に絡めて設定をする/シナリオを作るなら、内容は田沼のキャラ設定に大きく左右される。彼を風説どおりの極悪人にするなら、将軍家転覆を企てる田沼が海外から毒物や超強力な魔道書/魔道具(ヘブライ系が適当だが、中国系やイスラム・アラビア系でも目先が変わって面白いだろう)を密かに輸入し、将軍を廃人にしておいて日本乗っ取りを進めるとか、悪魔を召喚して日本を支配する(おお、ウォーザード)という展開がまず考えられる。時代が合わないのを承知で大岡越前を出し、PCを彼の部下、協力者として田沼(悪魔)の陰謀を阻止させるといった展開は時代劇スペシャル的で面白い。あるいは、海外から呼び寄せられた魔道集団/暗殺集団とPCの剣士・喧嘩屋などとの死闘というのも燃えるかも。

 

さらに後代の幕末動乱期、長崎には海軍伝習所の所在地、幕府及び諸藩の武器調達先としてグラバーをはじめとするヨーロッパ商人、伝習所教官として招かれたフランス・イギリスなどの軍人などが多く滞在した。彼らのうちには、西洋武術や魔術を伝えた者もあったかも知れない。この辺はるろ剣・サクラそのものになってしまうので詳述しない。


●長崎奉行

徳川幕府の長崎奉行は貿易の利といううまみのある地位だけに、長く務めようとする者や昇進を拒否して職に留まった者、密貿易を行う者など曲者が多かった。西洋人と多く接する役職ゆえに、他では身に付けられない技能を修得する者も多かったことだろう。

中にはキリスト教や魔道の技に通じる者もいたかもしれない。

ここでは、そうした曲者たちを紹介する。

●井上政重

徳川秀忠の老中井上正就の弟。大目付。長崎奉行は務めていないが、元はキリシタン(カトリック)だったといい、島原の乱鎮圧の副使でもあったため掲載。鎖国に際しては平戸オランダ商館長カロンと宗旨問答を行いこれを論破。出島移住を呑ませた。

 

・転生体作成の指針

井上一族は官僚としての優秀性を買われて抜擢された新興譜代の一家である。ゆえに技能はハイテクが望ましいと思われる。政重のキリスト教通という面を強調するのなら、魔道でもいいかも。平和な時代に立身したこともあって戦闘を得手とする一族ではない。兄の正就は江戸城中で目付豊島明重に刺殺されている。剣を使わせるとするなら速剣であろう。

 

・政重シナリオ・伝道団ラピュ−タ島へ帰れ

九州の空に、突如巨大な浮島が出現した。浮島からは強力な磁場のようなものが出ており、ヘブライ神族にゆかりのある人間たちは次々とそこへ吸い込まれていく。無論PCとて例外ではない。吸い込まれてしまったなら、そのPCはそこで次々と処刑されてゆく人々の姿、そしてそれを指揮する陣羽織姿にクルスをつけた武将の姿を目撃する。

歴史に詳しいPCがいた場合、その武将が井上政重であることが判明する。

あるいはプロローグで政重の転生体(有名な宗教家とか、青年政治家とか)を出し、行方不明にしておいて、彼が行方不明になった直後に事件を起こして、転生体本人の口から「我こそは井上筑後守政重。公儀大目付である」などと言わせてもいい。

脇侍として島原の乱の元凶・松倉重政・勝家父子を出し(空飛ぶガレオン船に乗っている。彼らはルソン征服計画を企んでいたので)たり寺沢堅高(巨大なカニに乗っている。家紋がカニなので)を出しても面白い。板倉重昌(スナイパーと化している。前世では狙撃されて死んでいる)などでもいいかも。

吸い込まれなかったPCには、侍(エージェントを改造)、忍者軍団(ガイア−ズ・ジライヤを使用)・烏天狗部隊が襲い掛かる。

PCたちは混乱の巷と化した街を救い、あるいは仲間を救うべく、政重の乗る浮島を沈めなければならない。

救援としては、天草四郎の島原城、小西行長の宇土城などが浮遊城となって蘇り、浮島に攻撃をかけてくれる(戦闘部隊はエンジェル、テンプルナイト、クレリック)、三浦按針のガレオン船が空中戦艦となって砲撃を加えてくれる、などが考えられる。

 

●汚職奉行竹中采女

江戸初期の長崎奉行。密貿易がばれて処刑される。外様大名でありながら長崎奉行となった人物である。おそらく相当の手腕を有していたのであろう。

 

・転生体作成の指針

密貿易がばれて処刑されたということから、技能はトリックがいいだろう。彼の竹中家は秀吉の軍師竹中半兵衛の弟の家であるから、ハイテクを持たせてもいいかもしれない。武術は汚職役人らしく短筒を使わせたいので射撃を推薦。あるいは速剣・抜刀術でもいい。役者は竹中直人を希望。

 

●切腹奉行松平康英

フェ−トン号事件の時の長崎奉行。石高が低く手兵がわずかしかおらず、ために外敵を打ち払うことができなかった。事件後責任を感じて切腹した。彼の遺言ともいえる上表によって、以後長崎警備は黒田・鍋島両藩に任せられる事となり、藩主鍋島閑叟の指導のもと、鍋島藩では西洋式操船術がさかんとなって、幕府の長崎海軍伝習所の訓練生たちをはるかに上回る腕前の藩士が多く生まれた。

 

・転生体作成の指針

前世の記憶が残っているなら、まずハイテク・速剣のいずれかになるだろう。

前者は先進技術の摂取に熱心になったパターン、後者はあくまで武士の戦いに固執しているパターンである。もしかすると西洋憎しの一念で清末、特に義和団事件の頃大陸に一度転生しており、二度目の転生でそのとき身に付けたシャーマンマジック+拳法を再び選択ということもあるかもしれない。長崎という土地柄、奉行という職務を考慮すれば、中国・清国・唐人との関係も充分築き得るから、奉行時代にすでに習得していたとするのもありかも。

 

 


●平戸

平戸は戦国後期、ポルトガル、イギリス、オランダなどヨーロッパ諸国の商館所在地、はたまた台湾と交易した末次平蔵らの日本商人や顔思斉、鄭芝龍(鄭成功の父。ちなみに成功の弟の家系は今も平戸に健在である。興味がある人は出してみるよろし)ら後期倭寇の大立者の日本における拠点として栄えた。平戸の大名松浦氏は、将軍家光のころまで貿易を続行し、松浦氏の幕閣への献上品は舶来品が常識となっていたほどである(これで松浦氏は相当困ったらしい)。

また、松浦氏関連では寛政期の『甲子夜話』の著者松浦静山という大物もいる。彼はこの本のために全国から様々な逸話を収集しており、また家臣や一族についての人物伝も多数書いている。松浦氏関連の図書館には『甲子夜話』編纂の過程で没になった悪魔関連の逸話や特殊技能を持つ家臣・夫人が独自に開発したオリジナルの剣術特技やカルトマジックの知られざる術も眠っているかもしれない。平戸には三浦按針の商談用の屋敷もあったことであるし、彼の日記や宣教師たちの残したキリスト教関連の書物と共に漁ってみるのもいいだろう。

 


●五島・松浦

五島・松浦は松浦水軍、宇久水軍などの海賊衆が平安、あるいは南北朝期の倭寇の時代から根拠地としてきた土地である。彼らは朝鮮半島や沿海州から、中国内陸にまで足を伸ばして貿易を行い、歴史に名を残した人物も多くいる。

鎌倉時代の松浦党・佐志房はフビライ・ハンを討ち取るべく元の大都に赴いたといい、戦国時代の宇久家当主・宇久純晴は李氏朝鮮が賞金をかけて手配したほどの大海賊にして豊臣大名であった(彼は結局、捕まることはなかった)。

また、名前は分かっていないが、前期倭寇の中には李氏朝鮮開祖・李成桂と一騎打ちをした勇者もいる。海賊が好きな人は、彼らの末裔や転生体をPCにするのもいいだろう。