Macゲーマーの為の三次元指南(改訂1.1版)

Peter Cohen, pcohen@macgaming.com
1999年 2月 11日 午前11:00(米国東海岸標準時)
(Rj訳:1999年 2月 13日)

(註:インターネットの通例に漏れず、この文書は状況に応じて変更されるべき「生きた」文書です。もし不正確な記述やもう通用しなくなってしまった情報を発見したら、校正と共に電子メールで flargh@macgaming.com までお知らせ下さい。)

(Rj註:但し、この翻訳にはRjの誤訳等が含まれている可能性があります。マチガイがありそうでしたら、原文を参照して確認の上、英語で指摘してあげて下さい。Rjの誤訳については、 rj-taka@t3.rim.or.jp までお知らせ下さい。また、原文の版が上がったのにRj訳が古いままだと気付いたら、教えて下さい。時間があれば更新したいと思います。)


導入

数年前、三次元ゲームはゲーム業界の頂点への上昇を始めました。DoomやMarathonのようなゲームが颯爽と登場し、その後QuakeやUnrealというものが続いたのです。三次元技術は今やアクションゲームの主流となり、この爆発的に拡大しつつある市場で立ち行くのに躍起になっているゲーム会社は、他社との差別化を図るべく複雑な三次元描画法を用い始めています。

今日のゲーム市場は、(狭いはずのMac市場に於いてすら)大量に出回る製品で埋め尽くされています。ゲーマー達は、三次元ゲームを快適に遊ぶためには一体どの描画加速カードを買ったらいいのか迷ってしまいます。「どんな特徴のを探したらいいんだろう?」「今自分が気にしてるカードは、実際どのくらいすげいんだろう?」ゲーマー達は難しい決断を迫られているのです。ということで、ここで指南をまとめてみることにしました。

Macの三次元ゲームは、PC(IBM PC/AT互換機)のそれと大して変わりません。開発者は通常ソフトウェア・レンダリングの為のコードを書き、その後、一つかそれ以上のハードウェア加速の為のコードを加えます。それ用の描画回路を積んだMacで、より高速に動くようにする為です。


Software rendering(ソフトウェア・レンダリング)

ソフトウェア・レンダリングは、Macのハードウェア構成がどうであれ(最低限必要な構成というものはありますが)、とにかくゲームを動かせるようにするものです。この方法では、CPUが全ての動き/形状/照明及び特殊効果を計算します。結果として、この方法ではハードウェア加速(Rj註:「描画の為の計算及びその結果のアナログ化などを担当する、CPUとは別の回路系統」を使った描画加速。)の利用できる環境と較べて貧弱な画像表現しかできません。要するに絵が汚い、と。特に、ゲームが要求する「動作環境」の最低限の線に近いマシン構成では、マトモに動かない場合が多いです。速いMacに買い替えるなりCPUをすげ替えるなりしないと、この方法での描画具合を十分に向上させることはできません。(Rj註:例えば、描画加速回路を搭載しないPPC604/132MHzのマシンでUnrealをやったら、多分それは紙芝居にしかなりません。そいつにPPC750を積んだCPUアップグレード・カードを刺せば、一応ちゃんと遊べるようになります。)

劣悪な描画具合の打開策のもう一つは、普及したSDK(ソフトウェア開発キット/Rj註:ソフトウェア開発者向けに用意されたライブラリなど。今の文脈では、Glideとかのこと。)を使って描画する為のハードウェアを追加することです。現段階では、GlideとRAVEという2つのAPI(Application Program Interface/Rj註:OSがアプリケーションに公開しているプログラム・インタフェイス。今の文脈では、RAVEとかのこと。)がMacの世界では有力です。もう一つ、OpenGLというものがあります。他のプラットフォームではOpenGLが普及していますが、Macの開発者にとっては、これから、ですね。


RAVE(レイヴ)

RAVE(Renderer Accelerated Virtual Engine)は、QuickDraw 3Dと共に用いるべくApple社によって開発された技術です。Apple社は、三次元物体とその情報を操作/表示する為に、QuickDraw 3Dというものを開発しました。RAVEは、QuickDraw 3Dやその他の高レベル・システムソフトウェア(例えばOpenGLなど)とハードウェア加速回路との間の橋渡しのような役割を担います。加えて、できるだけ速く描画する必要のあるゲームでは、RAVEと直接やりとりすることができます。三次元画像に現実性を付与する為の複雑なルーチンを呼び出すことには制限がありますけど。RAVE加速は、多少の例外はありますが、現在のMacの三次元ゲームでは広く普及したものになっています。

多くの製造者がRAVE互換の描画加速カードとそれ用のドライバを作りましたが、今では全てのMac(Rj註:PowerMac G3 DT/MT、PowerBook G3 series、iMac以降の機種)でATI社の描画回路が使われています。Macに採用されているATI社の描画回路には、RAGE II(今やのろすぎて使えない)と、RAGE PRO(劇的に改善され、最近のゲームでも十分使える/Rj註:Unrealではやや苦しいっす。それと、RAGE PRO turboってのがありますが、違いは「turbo」と印刷してあるかどうか、だけ?)です。ごくごく最近になって、ATI社はRAGEシリーズの最新版、RAGE 128ってのを出しました。今のところ、RAGE 128は新G3シリーズ(青/白)に採用されています。この三月の終わりまでには、Mac用のPCI描画加速カードとして、3つの製品が出る予定です。(Rj註:NEXUS 128/RAGE ORION/XclaimVR 128の3つ。日本では四月の出荷予定だそうです。)

ATI社はApple社と協力関係にあるので、ATI社のRAVEドライバは他の競合相手よりもよいゲーム用特殊効果を発揮します。RAGE PRO搭載ではないMac(第二世代のiMac/PB G3 series/PowerMac G3よりも前の機種)を使っていても、それを積んだカード(Nexus GA/XclaimVR/Xclaim3D)を刺せばその恩恵にあずかれます。これらのカードは通常汎用目的に使用でき、RAVEでの3D描画以外に、QuickTime動画の再生/古来より伝わる二次元QuickDraw描画をも加速します。RAGE PROを積んだカードを出しているのは、ATI社だけです。

最近Apple社が全部のマシン(Rj註:青/白以前)にRAGE PROを積んだおかげで、RAVE互換のゲームが一気に増えました。この傾向はApple社がRAGE PRO搭載モデルを売る限り続くでしょう。RAVEは他のMac用ビデオカードでもサポートされてたりしますが、これらのカード製造者は急激に拡大しつつあるMacのゲーム市場でイマイチぱっとしません。

RAVEはMacでの描画加速方式の標準となりつつありますが、独占支配的であるとも言えません。昨年リリースされたMyth IIやHornet KoreaではGlide加速が使われてたりします。しかし、RAVEってのが、Macでの描画加速方式としては先にあったものです。GlideとRAVEの両方を比較できるユーザからは、時折RAVEの絵の汚さを嘆く声が聞かれます。ATI社のRAVEドライバは、今後もより幅広い特徴(Rj註:特殊効果の表現など)を実現するべく改善されていくでしょう。(Rj註:三次元描画に関しては、おそらく今後はRAGE 128用以外はドライバの改善を期待しない方がいいかと思われます。しかし、現時点ではRAGE PROで「汚い」ということもありません。霧も光沢/反射面もコロナもLaraさんの姿態もキレイに表現されます。但し、Voodoo2カード等と較べると描画速度はのろいです。)

Apple社が将来のMacOSに於いてOpenGLを描画方式標準として採用した(下の方を参照)ことで、Apple社デベロッパ・リレーションズの人たちはゲーム会社に対して積極的に将来の製品でこのOpenGLを採用することを奨めています。OpenGLが浸透すれば、RAVEへのサポートはやがて消滅するでしょう。


Glide(グライド)

ごく最近、3Dfx Interactive社はGlideという独自描画技術を導入しました。これはゲーム開発者によってライセンスされたソフトウェア・ライブラリです。Voodoo/Voodoo2/Voodoo Banshee搭載カードを刺したMacでのみ、Glide加速の効くゲームを楽しめます。

Voodooは、Macゲーマーが最初に目にした3Dfx社の回路セットでした。Voodoo搭載カードは、大雑把に言ってRAGE PRO搭載カードと同等の描画速度を実現します。Voodoo2は一番新しい回路セットで、こいつは大雑把に言ってVoodooの三倍の演算能力(Rj註:RAGE PRO=120万ポリゴン/秒、Voodoo2=450万ポリゴン/秒、ドリキャス=300万ポリゴン/秒)を持ちます。Voodoo2ではSLI(Scan Line Interleaving)が使えます。これは、二枚のカードに処理を分担させるやり方です。(Rj註:例えば一画面を構成するのが600本の水平線だとして、それらに1から600までの番号を振るとします。SLIは、片方のカードに奇数部分を、もう一方のカードには偶数部分を描画させることによって、描画速度を劇的に改善する方法。但し、単純に倍速にはなりません。典型的には1.5倍程度かと。)Voodoo Bansheeは、Voodoo2をベースに、一般目的に対応させた描画技術(回路セット)です。

Glide加速ゲームはRAVE加速ゲームよりも幅広い特殊効果を発揮します。しかし、Voodooカードには一つ大問題があります。それは、古来より伝わる二次元画像を加速、或いは表示すらできないということです。これは、3Dfx社のVoodoo Bansheeの導入によって解消されつつある問題です。Bansheeは、三次元部分はVoodoo2で、それに二次元描画の為の強力な加速回路を加えたものです。MacGaming.com がこの入門書シリーズで触れていますが、BansheeとVoodoo2の三次元描画速度の比較(対決)は、今のところ(どっちが速いか)結論の出せない状態です。もっと情報が集まったら更新します。

Voodooカードは、それ用に作られたRAVEドライバを使えばRAVE描画も可能なはずですが、多くのRAVE互換ゲームでしばしば描画錯乱が起きてしまうようです。(Rj註:例えばVoodoo2カードの一つ「Game Wizard」には、「GameWizard Rave」というライブラリが付いてきます。)

VoodooはMacの世界に最初TeckWorks社のPower3Dで持ち込まれました。この、4MBのVRAMを積んだVoodooカードは、今年(Rj註:昨年?)初めに製造中止になりました。TechWorks社はそれ以来Macの3Dfx市場に戻ってきてません。VillageTronic社は、MacPicasso 540というVoodooカード、そして最近はMacMagicというカードで、この市場に留まっています。加うるに、同社は今年(Rj註:昨年?)末までにVoodoo Bansheeカードを出すよていがあると告知しました。

Micro Conversions社はGame WizardというVoodoo2カードを発売しました。こいつには、搭載VRAMが8MBのと12MBのがあります。同社はまた、新年(Rj註:1999年)のいつかにはBansheeカードを出すことも発表しました。最近、Best Data社がArcadeFXというカードでMac市場に参入することを表明しました。Griffin Technoligy社もまた、NE3Dというケーブル及びドライバのキットを製品化しています。これを経由させれば、Macゲーマーはたくさん出ているPC用のVoodooカードをMacで使えるというものです。

最近のMac用ゲームでは、Voodoo2+Glide加速というのが最速です。そして、多くのゲームがRAVEと共にGlideをサポートするようになっています。とは言え、Voodoo/Voodoo2カードを買った人にはいくらか払うべき犠牲もあります。こいつらは、ゲームの加速にしか使えないということです。(Rj註:三次元ゲームの加速だけの為に、PCIスロットが一つ埋まることになります。)Bansheeによって、3Dfx社は(ゲームでの速度を強調しつつ)その他の一般的な用途に使える描画加速カードを探している顧客の市場を得るでしょう。思い切ってVoodoo2を買った人は、「現時点でMacの最高最速描画!」という栄誉を得ますが。

この版の入門書で述べうる「先に見えてきたもの」として、Voodoo3ってのがあります。1998年の暮れも押し詰まって発表されたこいつは、まだいかなるプラットフォーム用にも使われていませんが、最近の3Dfx社の発表によれば、Mac用も出るということです。Voodoo3はVoodoo2よりも鬼のように速くて、なんとSLI(同社の並列処理技術を使った、Voodoo2カード二枚刺し)よりも速いんだそうです。(Rj註:3Dfx社によれば、600万〜800万ポリゴン/秒!?)


OpenGL(オープン・ジーエル)

OpenGLはもともとSGI(Silicon Graphics Inc.:ハイエンドの描画用ワークステーションの製造者)によって開発されました。最近まで、OpenGLは強力なワークステーション用だからなぁ、とか思われていましたが、安価な描画加速回路の登場によって、開発者やら何やらの支持を集めつつあります。

Apple社は一月のサン・フランシスコでのMacWorld Expoに於いて、将来のMacOSではOpenGLを採用していく旨発表しました。Apple社デベロッパ・リレーションズの担当員は、ゲーム開発者に対しても積極的にOpenGLをサポートするよう要請していますので、今後はほぼ間違いなくこのOpenGLがRAVEに取って代わることになるでしょう。

OpenGLはまだ多くのMacのゲームでは使われていませんが、PCの方では一部で「次なる標準」になりつつあります。OpenGLの最大の支持者の一人に、Quakeシリーズの開発責任者である、id Software社のJohn Carmackさんがいます。彼は、次のQuake 3 ArenaでOpenGLを採用することを表明し、Apple社の方針を支持しました。Quake 3は、PC版/Mac版/Linux版を同時リリース予定だそうです。

OpenGLがMacのゲーム加速方式の標準として定着するか否かはまだ分かりませんが、OpenGLの技術はそれ用の描画加速回路を積んだコンピュータで一般に利用可能なスケーラブル・パフォーマンスに間違いなく(他のものよりも)もっと最適化されています。(Rj註:要するに、特殊な環境が無くても有効に描画を加速できる、と言いたいのだと憶測しますが。。。)殆どのMac用描画加速カードで、ドライバさえ対応させればOpenGLが使えるようになるはずです。


用語辞典

ATI Technology社

RAGEシリーズ描画加速回路の作り手。RAGE PROとRAGE 128がMacの現行機種に搭載されている。

Best Data社

Voodooカード「ArcadeFX」の製造者。

Conix Enterprises社

Mac用OpenGLの作り手。

Glide

3dfx Interactive社によって作られたソフトウェア開発キット(SDK)で、同社のVoodoo技術に基づくカードを使って描画を加速する。

Griffin Technology社

ケーブル及びドライバのキット「NE3D」の製造者。

Micro Conversions社

Mac用Voodoo2カード「Game Wizard」の製造者。

OpenGL

UNIXやWindowsで、そして今後MacOSでも使われる、画像取り扱いの為の技術。

QuickDraw 3D

アプリケーションが三次元物体を扱えるようにする、Apple社が開発した技術。

RAGE

ATI社の一連の描画加速回路セットの名前。

RAVE

描画加速仮想機関(Rj註:無意味な強制翻訳です)。QuickDraw 3DやOpenGLなどの高レベル・システムソフトウェアと、Macのハードウェアとの橋渡しをする。

3Dfx Interactive社

Voodooシリーズ描画加速回路セットと、それを使う為のソフトウェア「Glide」を開発した会社の名前。

TechWorks社

Macユーザ向けに最初に出され、今はもう製造されてないVoodooカード「Power3D」の製造者。

VillageTronic社

3Dfx社のVoodoo技術に基づいた描画カードの製造者。

Voodoo

3Dfx Interactive社によって開発された描画加速回路セットの系列の名前。(Rj註:元、ダメオー(現ベナン共和国)土語で「邪神」の意。西インド諸島などの黒人間に行なわれるアフリカ起源の一種の魔教。或いは、その呪い(まじない)/魔術/魔法/もしくはその使い手たる呪術師。因みに、Bansheeというのはスコットランドやアイルランド−つまりケルト?−に伝わる、大声で泣いて家に死人が出ることを知らせるという女の妖精。あなおそろしや。)


ほんやく by Rj