山手線に乗っていたら、いかにもやくざ風の男が乗ってきた。 パンチパーマで上下黒い服。前歯が二本ない。 男は大股開いて僕の隣の隣に座った。 しばらくして携帯電話をかけはじめる。 迷惑なほど大声で話している。 まあ、そのくらいは許してやろう。 隣の席の人が立ち上がり、 ひとつ空いた席をはさんで男の隣になった。 男は隣の席に手を広げて置き、誰も座らせない。 しばらく大声で話していたら、 胸ポケットから煙草を出して吸い始めた。 これに僕はムッとした。 しばらく話して電話を切ったとき「ここ禁煙ですよ」と男に言った。 「えっ、あ、そうだな、ここ電車のなかだな。ゴメンゴメン」 男は煙草を床に落として靴で踏みつけた。 「俺酔ってるんだよ、ごめんな」 「ビール二本飲んだんでしょ」 「えっ? なぜ知ってるの」 「いま電話で話してたじゃないですか」 「あ、そんな大声だった?」 「まあ、そうですねぇ」 その後はしばらく黙ってたが僕の降りる駅についたら 男も降りようと立ち上がった。 僕は男の後ろに立った。 男はこちらを振り返った。 「お気をつけて」 「ああ」と怪訝な返事で男は降りていった。 |
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