杉本氏は、終戦前後沼津のある軍事工場にいたが、私の富士山麓事業所時代にあったきりであった。
彼はその後、Ｓ大学、　Ｈ大学教授となり、定年後、家のある故郷沼津には帰らず、東京にいて、ある本の翻訳中であった。中学時代の友人。

　（沼津余録「芹沢光冶良の宗教」参照）　

筆者から杉本氏に送った手紙
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冠省　突然の便りで驚かせて恐縮、ご免下され度。
貴兄のお元気のこと横山兄から伺い、また、たまたま送られてきた香陵同窓会名簿により、貴兄の住所を知り、旧懐おさえ難く、と言って何から始めたらいいか（当方、脳梗塞の後遺症で言語、歩行、脳の具合ままならず）、とりあえず愚作『記憶のなかの沼津』をお送りします。

　新潟の友人に送ったもので、この間、横山、足立、榊兄にも送りました。今はN省の連中よりも、高校、中学の友人が懐かしい。回帰の法則でも働いているらしい。

　今回はこの辺で。御身お大切に。　　　　　　　 匆々

　　　　９７、９、１０　　　　　　　　　　Ｓ・自由平

　杉本一平大兄　

・杉本一平氏からの返信　
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　　　自由平大兄　　　　　　　　1997､9､16

　九月一〇日付けおはがきとご本『記憶のなかの沼津』をありがとうございます。脳梗塞後遺症にさいなまれておられるとは、いや、そればかりか、一別いらい、その後のすべてを、知りませんでした。

　横山君にも、はじめて東京香陵会に出てみたとき、じつに久々にお会いしたのでした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（注　香陵会：沼津（中学）高校同窓会）

　ご本さっそく拝読し、わたしもまた懐旧の思いをそそられました。相違といえば、わたしはＨ大学の移るまで多年Ｓ大学に勤めるあいだ、沼津に住みつづけ、沼津から通っていたし、その後も引退時に備えて沼津の家を改築し、何時も時折参るようにつとめているので、沼津は回想のなかにのみあるのでなく、現実のものでもあるという点です。しかしかっての沼津が回想の存在でもあることにかわりはありません。

　気づいた一、二の点を申せば、三ページの楠病院は錦町にあった（当時わたしの住まいのすぐそば）と思います。別の病院ではなかったでしょうか。

　三七ページの前田先生の家は、地区名は忘れましたが、香貫は香貫で、二瀬川に入る直前の地区、当時の村山校長宅の隣で、ともに庭の広い大きな家でした。

　芹沢光治良氏は、四八ページにお書きのように我入道に芹沢文学館があって（他地区の井上文学館と同様）記念されています。氏の最晩年になりますが、わたしはすぐ近くに（Ｈ大定年で公務員宿舎を出たのち）住むようになり、床屋が同じだったご縁で、時折お宅におじゃまして懐想の沼津など話をかわしたものでした。ご葬儀にも参列、愛読者の多さにおどろいたものでした。

　といった次第で、その他いろいろの点で大層興をひかれつつ拝読した次第です。

　どうぞお体を大切にしてご長命ください。おてもとに香陵同窓会名簿が届いたそうですが、わたしのとろにはきていないので、川崎にお住まいのことも存じませんでした。くれぐれもお元気で。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　杉本一平

・杉本一平氏がら返信　九、二五
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　本日は、九月二十三日付のお手紙と、『自由半平リハビリ作文集』をありがとうございます。さっそく一部を拝読、一九九七年一月に脳梗塞を発病、その後も後遺症とたたかっておられとは考えられない鮮明な記憶力には、わが身の茫漠たる記憶力とひきくらべて、感服いたしおります。

　「三年連用日記」に出てくる一年後輩、元N省役人のY氏の栄子さんという夫人、わたしをよくご記憶とのこと、わがおぼつかない記憶力では、まことに残念ですが、そしてお恥ずかしいきわみですが、十分に思いおこせません。病気で陸軍（名古屋）を除隊になり、沼津でぶらぶらしていましたが、徴用令にでもひっかかってどこかへとばされてとは、沼津の軍需会社に就職（たしか昭和二十年春）、終戦後もしばらく、大学教員職に転身するまで、つとめていたのでした。

　さきの連休にはご家族旅行で伊豆箱根に行かれたよし、ご記憶どおり、わたしの沼津宅はいまも千本に存在いますが、つい怠けて足が遠のいています。一昨日の彼岸も、墓参を兼ねて参るべきところでしたが、実行せずじまいでした。

　どうぞリハビリをご続行、お元気におすごしください。おついでのとき、Ｙ氏未亡人の栄子様によろしくご伝声くたさい。　ご本、くりかえしお礼申し上げます。

　　　　一九九七年九月二十五日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　杉本一平

　　　　　自由平様　

　　　　・杉本一平氏の返信　12,13　 （注：ほんらい「芹沢光治良の宗教」収めるべきもの）
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　Ｓ・自由平様

　10日付の御手紙とご同封の「芹沢光治良の宗教」をありがたく拝受しました。　リハビリにつとめておられるといわれつつも、芹沢文学館を含む伊豆箱根旅行をなさるほどにお元気なことを知り、ご同慶に思います。

　わたしはH大学で定年を迎え、中野区所在の公務員宿舎を出て，いまの寓居に移ったところ、偶然芹澤氏宅とすぐ近くで、その上床屋が同じであったりしたご縁で、お宅にお邪魔したりして、最晩年の氏と親しくしていただいたりしたのでした。

　そんなこと思い出しつつ、宗教と縁の深かった芹沢文学についてのお文章を興味深く拝読した次第です。

　どうぞお元気でよき年をお迎えください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　杉本一平

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