135坪の記憶


日記のフォトセッションのお立ち台として一番よく登場しているのは、IMONトラックの脇に地面を取り付けたようなヤツ。もともと、IMONトラックのお座敷運転のとき、ストラクチャなどを配するために作ったもので、長さはIMONトラックの直線と互換の288mm、それに対し地面の奥行きは、土地が黄金分割になるような203mmになっています。写真を見れば歴然ですが、IMONトラックの道床部のジョイントを外せば、そのまま接続し組み込めるようになっています。表面は、線路部にはバラストペーバー、地面部には荒地風の地表ペーパーを貼り込んだだけで、そこにフレキシブルトラックをスパイクしてあります。数台作って楽しんでいましたが、これは「ストラクチャーのお立ち台」としてもなかなか使い手があります。ということで、これをベースにした撮影が多くなったという次第です。



まずは、全景の写真。仕掛けとしては、これだけです。288mm×203mmということは、実物にすると、およそ135坪。ローカルな地域では、普通の家一軒分の敷地でしかありません。都会でも、さほど大きくないビルの建坪程度。ただストラクチャを置いただけでは、本当に「家一軒」で終わってしまいます。この限られたスペースをいかに使って景色を作るか、というところも、この「お立ち台」の楽しいところともいえるでしょう。これは模型写真ならではの、ギミック、マジックでもあります。


手始めに、モデルワークス製の「藁葺屋根の農家」を中心にアレンジしてみました。のっけから鉄道車輌が出てきませんねぇ。こういうのも「鉄道模型」なのでしょうか。ぼくは、個人的にはそう思っているのですが。このキットは、バルサ材をムクで使い、表面を荒らして藁葺屋根を表現するという、なかなかのアイディア賞モノなのですが、なかなか感じを出すのが大変です。ポイントは、表面の仕上げより塗装だと思います。障子の桟は、単に「描いただけ」ですが、こうやって見る分には充分という気もします。


ちょうど、その裏側からみたような感じのカット。一応、線路もついているんです、という証ですね。この感じだと、C59よりC60でしょうか。ボイラの前半分だけなら、どちらにも見えますから。「生垣」は、ウッドランドシーニックスの潅木のキットを使い、ランナーについた状態では、枝が平面的に広がっているのを活用して、横に張り合わせた上でフォーリッジをつけて作成したものです。人の背以上あるような生垣だと、けっこう幹が目立ちますが、この方法だとそういうイメージを手軽に再現できます。


このスペースで、普通に走行写真を撮ろうと思っても、線路よりからだと、このぐらいの構図が限度になってしまいます。まあ、もともとの線路の長さが実物換算で25mと、1輌分ちょっとしかありませんから。一方でこれ以上線路際によると、今度は、何もない部分がモロにバックになってしまうので、絵になりません。そういう意味では、地面のほうを手前にして、線路をバックに置くのが正面向きということでしょうか。柵も生垣同様、足をつけてどこにでも立てられるようにしてあります。


今度は、先程の農家と、エムズコレクションの土蔵との競演です。エムズコレクション特有の、下見板を一枚づつ貼ってゆく技法で作るには、ちょっと根気と持久心が足りません。ということで、アメリカ製の下見板の表現のあるバスウッド材を利用して、下半分はオリジナルで自作しました。急がば回れで、ぼくとしてはこの方が余程簡単です。アメリカ製のこの手の素材は、木でもプラでもけっこう充実していますので、アイディア次第で、ウマく利用できますね。


「正面」のほうから列車を捉えると、こんな感じになります。ブッシュ社製の「畑の畝」を利用していますが、線路、道路、畑と、そこそこ広く見えます。木を背景と見立てて、お立ち台の外側に立てたのが、ある種のトリックといえるでしょうか。畑も、道路も、柵も、基本的に置いてあるだけなのですが、1960年代の固定式16番レイアウト(この時代は、けっこう盛んだった)を見慣れた目には、それなりにレイアウトのシーンのように見えるのが面白いところです。


またもや、車輌のない鉄道模型の世界になっていますが、エムズコレクションの土蔵改と食玩のフェアレディーSRの競演です。食玩のミニカーは、トミカ同様、オリジナルが小さいものほど縮尺が粗くなる傾向があり(出来上がりの大きさを一定にするため)、小型のクルマだとほぼHOスケールだったりします。このフェアレディーも小さめに見えますが、もとが小さいので、けっこういいサイズ。プレイザーの人形が、ちゃんと乗れます。さすがにオープンカーは、運転者が乗っていないと走行感がでませんから。


このカットでは、ちょっぴりギミックを使ってあります。バスは16番サイズ、1/80と称して販売されているものですが、ワリと大きめです。これを手前に持ってくることで、実体以上に遠近感を強調しました。この道路の幅は、地方の主要道などに多かった「三間半(6.3m)」の道幅で作ってありますが、それよりは広めに見えます。バス停は、プラ板でのなんちゃって工作ですが、発車予定時刻表のところには、Nのストラクチャについていた「時刻表シール」を切り抜いて使っているので、わりとそれっぽく見えます。


(c)2007 FUJII Yoshihiko


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