チューブアンプ・トーク(その4)

フルテンサウンドとアッテネーター





ヴォリュームをフルアップにした場合、出る音は大きいですが、アンプとしてはいちばんナチュラルな状態です。それはオールドフェンダーやオールドマーシャル(オールドマーシャルは基本回路はオールドフェンダーと同じ)の場合、プリアンプは前後にゲイン調整が入ってるだけで、Vol Toneはパッシブで組んであるからです。だから、最近のハイゲインタイプや、ソリッドステートのアクティブ回路のものとは違い、Vol Toneフルテンにしてはじめて、特性がフラット(完全ではないけれど)になるワケです。 ギターのヴォリュームやトーンと同じですね。さらにこの手のアンプでは、パワー段で音の張りや艶を出すような「いい歪み感」を出すように設計してますから、パワー段のヘッドルームも含めて(音の大きさを除けば)フルテンで使いまくってもなんら問題ないようにできてます。

逆にいって、全開で使うのを前提にしていますから、フルテンで必要な音圧感がでるよう、出力を選ぶといった方がいいかもしれません。パワーが60Wとか100Wとかあると、フルボリュームにするのはちょっと恐いし、スタジオとかでないと環境的にも無理がありますよね。こういう場合は、パワーアッテネーターを使いましょう。パワーアッテネーターにも色々な種類があって、音の特徴や、アンプとの相性、軽いアッテネーションが得意/深いアッテネーションが得意、といった個性がはっきりしていますから、実際に使いたいヘッドとスピーカーの組合せで鳴らしてみて、気に入ったモノを選ぶ必要があるでしょう。

スピーカーシミュレーターとパワーアンプの組合せも、コンポーネントアンプでロックサウンドがほしいギタリストの間ではよく使われています。この場合は、単にアッテネーションというだけでなく、スタジオでミックスダウン時に卓でエフェクトをかけるように、アンプからの出音に、エフェクタ、特に空間系のエフェクタをかけることが可能になります。スティーブ・ルカサーやE. ヴァン・ヘイレンなどは、この目的のために、ステージ上のアンプでも直出しと、エフェクトをかませたスピーカーシミュレーターとパワーアンプからの出力を併用しています。

さて、パワーと実際に出ている音量は、必ずしも比例するわけではありません。60Wのアンプより100Wのアンプが必ずしも音が大きいというわけではないのです。実際の音量には、アンプのパワー以上に、スピーカの能率とか音圧感とかいろんな要素が響きます。たとえば経験的にみて、アンプ回路は同じはずですが、 Twin Ampより Bassmanのほうが音は大きいと思います。これは、12'×2と10'×4というスピーカーの違い、キャビネットの音響効果の違いが重なって引き起こされています。さらにハコ鳴りという要素もあります。スピーカーは同じでも、キャビネットが違うだけでも音は変わります。このあたりをウマく利用したのが、フェンダーアンプのラインナップです。

マーシャル系のキャビネットでは、なるべくハコ鳴りは押さえて、純粋にスピーカーからの出音だけを取り出す設計になってます。その分、スピーカの数を増やして、振動面積を増やすやり方です。これに対してフェンダーアンプでは、よく鳴る木でキャビネットを組むことで、キャビネット自体が振動板となって、全体が鳴り出すように設計されています。これは、密閉型、後面開放型という設計思想の違いともつながっています。

たとえば出力10W以下、スピーカーも8インチが一発という、フェンダーアンプ中最小のChampでも、管楽器の生音同様の音量がでます。だから、クラシック用のホールなら、Champ一台で充分そのサウンドをホール中に鳴り響かせることができます。今はスタジオでもステージでも、アンプでバランスとらずとも、マイクでひろって卓でバランスとれますから、結構小さいアンプ使ってます。きちんと鳴っているアンプなら、どこでどう使うかは音色次第。いかようにも使えると考えていいでしょう。



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