晩秋のジオラマ


某模型店で出物になっていた16番のジオラマを、破損箇所の再生とともに12mmに改軌したものです。元はけっこう急カーブで、地鉄っぽい風情でしたが、内輪差・外輪差を利用してカーブをユルくしたので、亜幹線的な感じになりました。これで、バス車庫のキットの定価並でしたから、かなりお買い得でした。全体のトーンは、かなりクセの強い描写になっていますが、ある種マンガ的で、これはこれで好感が持てましたので、それを損なわないようなカタチで、いろいろと加工してあります。作りからして、個人の作品ではなくプロの手によるもののようですし、もともと使用している製品や素材はすべてヒルマモデルクラフト製でしたから、同社製の特注ジオラマかと思いますが、断定はできません。



まずは全体像から。何かに使えるかな、と思って購入したあった「箱庭用の柿の木」を使ってみたのですが、妙に雰囲気に合っていたりします。C12とトラ90000は、ちょうどこの頃入手したので使ったまでで、編成がジオラマの中に納まる、という以上のことはありません。レールの端は、枕木と平行にカットし、少しハミ出させてありますが、スペース的な問題さえなければ、あとあと、この「出っ張り」分は非常に役に立ちます。


その「柿の木」の下あたりから撮った、C5526号機。Models IMON製のC5534号機からの改造ですが、この写真だけ見て「K-7デフの流改って、製品にあったっけ」って疑問に思う人は一体何人いるのでしょうか。まあ、この部分だけで「流改」ってわかる12mmユーザなら、きっと気付くとは思うのですが。「蒸気がきちゃったから、スナップ的に一枚」てな感じのカットですね。日常的な分、普通の人にもノスタルジアを感じさせるかもしれません。


バス車庫と反対側の線路際からの撮影。鉄道写真の基本の基本、みたいな構図です。路盤から降りるか、腰をかがめるかして構えたような、低い視線を狙ってみました。とはいえ、カメラの光軸が、線路のちょっと上ということは、カメラ自体は線路面よりかなり下にある必要があり、固定式レイアウトでは撮影の難しい、ジオラマならではのアングルということもできます。乗工社のD51一次型ですが、こういう構図でも、ちゃんとD51に見えるのがスゴいです。


上のD51のカットのちょうど反対側、バス車庫の事務室の脇からの撮影です。今度は視線を少しあげて、大人がアイレベルで一眼レフカメラを保持して撮った構図を狙ってみました。この手のカットは、被写界深度を利用して、余計なものをアウトフォーカスしてしまうのがミソのようで、ウマくとばすと、けっこう実感が高まります。実は、ファインスケールは見てくれがリアルな分、車輌を載せて撮影すると、カーブのキツさが目立ってしまう、という問題があります。これ、800〜900Rぐらいだと思うのですが、見てくれ上は、それでもギリギリかなあ。


上と全く同じ状況を、柿の木の上方から俯瞰して撮影したもの。柿の生えている丘が続いていて、その上に登って撮影したような位置関係でしょうか。仲間と一緒に撮影に行き、同じ列車を、それぞれちょっと違う場所で撮影する、ということもよくありましたが、二つ並べると、そういう感じで楽しめます。向こう側で踏切待ちをしている、食玩のシビックですが、実はこうやって写真に撮っても、ちゃんとシビックに見えるというのは、けっこうスゴいことなんですけどね。ミニカーとかでも、ナマではいいけど、写真に撮ると「?」というのはよくありますし。


D51のカットの、線路を挟んだ反対側から撮ったカットが二枚。まず最初は、9600の「三号計画」とよばれていた、門デフ・パイプ煙突のカマ。こちらは、立ってアイレベル。次のは、C57。こちらは、最初のD51と同じように、低く構えた構図。カメラの立ち位置はほぼ同じですが、シャッターチャンスというか、機関車の位置も含め、ちょっとした構図の違いだけで、それなりの雰囲気の違いは出せます。ぼくなんかの感覚からすると、こういう「鉄道模型写真」というジャンルがあってもいいと思うのですけどね。


このジオラマは、A4判をちょっと大きくしたぐらいなので、実物なら150坪程度。ちょっと大き目の家、一軒分の敷地でしかありません。それでも、実物の撮影のロケハンよろしく、いろいろ構図を考えてみると、けっこうバリエーションのあるカットが撮れるものです。ぼくが、ジオラマやレイアウトが好きな理由も、この「いろいろな構図が発見でき、いろいろな構図で楽しめる」というところにあります。見る方向や角度を決めて作りこむ方もいらっしゃるようですが、ぼくは多角的に見れるほうが好きです。それが「風景」のいいところだと思いますし。


(c)2007 FUJII Yoshihiko


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