カミングアウト





学生時代に、学園祭の企画か何かでクラスメイトを対象にアンケート調査をしたことがある。男性相手に、好きな女性のタイプを聞くアンケートだった。やって気がついたのは、同じ人間に同じ質問しても、記名と無記名で返ってくる結果が大きく違うことだ。記名でやると、いかにもという、まさに「八方美人が好き」的な答になる。その一方で無記名だと、答は千差万別。まさにホンネの世界が見えてくる。

この傾向が顕著に現れるのは、神田神保町の芳賀書店のような、アダルト専門書店(ま、ひらたく言えばエロ本屋ですが)の品揃えだ。そもそもこういう書店は、そこに入るだけである種の勇気がいる。街の善良な人達の冷たい視線を浴びながら、「私はエロ本マニアです」とカミングアウトしなければ、そもそも店に入ってこれない。これは敷居が高いともいえるが、その分、一旦中に入ってしまえば、そこにいるのはホンネで語り合え同士ばかりだ。

だから、この中では自分の本当の趣味を素直に語れる。何も隠すことはない。何も恥じることはない。ロリ、熟女、デブ、ニューハーフ、ホモ、少年。そこに売られているビデオや写真集は、ホントに千差万別。一般的な美人、可愛いコもあるにはあるが、決してメジャーではない。それも数ある嗜好の一つでしかない。実は男性の嗜好というのは、こっちがホントなのだ。一般の書店で売ってるビデオや写真集のような、一般的な美人、可愛いコの世界は、あくまでもタテマエ。そういうのが本当に好きなヤツもいるし、比較的そういう嗜好の人が多いのも事実だが。それがすべてではない。

よく考えてみると、ホンネのほうが自然な姿なのだ。自由な競争が行われている市場では、トップブランドのシェアは、いくら高くなっても60%というのが経験的に知られている。DOSの頃のPC-98、絶頂期のキリンビール、紅白歌合戦の視聴率。みんなそんなモノだ。逆に言えば、マジョリティーになびかない人が、30〜40%はいつもいるということ。中庸のバディーをホンネでセクシーと思う人は、いっても60%。それに対し、デブ大好きも20%、少年のようなガリガリ大好きも20%。世の中はこういうモノなのだ。だからホンネのところでは、それなりに世間はウマくまわっているのだろう。


(97/08/22)



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