5ナンバースポーツ






ワゴン、ミニバン、四駆といったRVブームもすっかり定着して、町中でもその手のクルマが相当なシェアを占めるようになった。こういうクルマのユーザでまず目立つのが、自営や個人企業での利用だ。日本では、もともと商用・自家用兼用としての「ライトバン」や「ワンボックス」が相当のシェアを占めていた。知り合いの楽器屋さんとかに聞いてもそうだが、この手のクルマはすっかりRVにとって代わられた。仕事にも、遊びにも使えるからだ。そういえば、RVブーム、特にワゴン・ミニバンがブームになってからは街でワンボックスを見かけるチャンスは確実に減った。ハイパワーのスポーツワゴンが売れている。もともとライトバンというのは最もかっ飛ばすので有名だったが、確かにレガシーワゴンとかみると、そういう感じのあんちゃん、おっちゃんが運転してすっ飛ばしてるのが多い。納得できるところだ。

もう一つの担い手は、とにかくファミリーカーとしてクルマがあればいいという層。居間の延長としてのクルマを買っている層だ。この層は今まで、あまり深く考えずにファミリーセダンを買っていた。家族の人数が多い地方などでは、ワンボックスユーザもそこそこいたが、主として大衆車を買っていた層だ。しかし、居間の延長なら、子供も遊べるしゆったりとした、ワゴンやミニバンなどのほうがずっとくつろげる。というわけで、ファミリーミニバンが大成功である。まあ、もともと+αの「もう一部屋」がほしかったわけだから、部屋らしいスペースになっているほうがニーズにはあっているはずだ。

さて、こういうRVブームは、まあクルマの多様化という意味で考えればいいことだ。だが、ここで困ったことが起きてきた。小さくて、愛らしくて、かつスポーティーなクルマがあおりを喰って極端に減ってしまったのだ。いわゆる5ナンバーサイズのスポーツカー、スポーティーカーは、驚くほど選択の余地が少ない。はっきりいって現行車種では、トヨタのMR2、日産の180sx、マツダのロードスター、本田のインテグラぐらいしかない。スポーツセダンも、三菱・スバルといったマイナーメーカこそWRC仕様車でがんばっているが、大手は全滅に近い。

ぼくのように70年代の半ばに免許を取ったモノにとっては、直感的に見切れて、縦横無尽にコントロールできるクルマのサイズは、5ナンバーサイズ、それも長さが4.5m以下ぐらいに限られる。3ナンバーボディーでは、ぼくの住んでいる世田谷の路地を自在にかっ飛ばすのは大変だ。つまり、乗る車がない、というのが現状なのだ。世の中にはこういうニーズを持つヒトも、多くはないが確実にいるはずだ。実際180sxは、その次世代のシルビアがモデル晩期に入った今でも、シルビアと同じぐらいの台数がでているではないか。クルマは大きければいいというモノではない。

とにかく、小さくて、愛らしいボディーに、パワフルなエンジンを積んだクルマ。こういうのが、ぼくの思うスポーティーなクルマだ。AE86にプレミアムがついているのは、別にFRだからというだけではあるまい。欲しい人は欲しがっている。これを是非、トヨタとか、日産とか、大手から出してほしい。自動車雑誌のスクープによると、さすがにシルビアのダウンサイジングが検討されているらしいが、なんともそういう手ごろなヤツを提供してほしいモノだ。

(97/08/29)



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