情報社会とプライバシー保護





世の中の情報化が進むとともに、個人情報・プライバシーの保護が重要だとかなんとか理屈をつけて、すぐに問題化したがるヤツが多くなってきている。しかし、ぼくに言わせればそんなモノ、しかつめらしい顔して議論する方がどうかしている。プライバシーなんて問題、19世紀ならいざ知らず、21世紀になってしまえば、もはや議論の対象にもならない些末なテーマになってしまうからだ。これからの時代、スタティックな情報など、何ら意味がないことに気付いていないのだろうか。そういう議論に捕われている連中は、いまだに「知識」の量にこだわっている学者先生同様、これからの時代を生きぬいてゆくことはできないだろう。

まずはじめに明確にしておきたいが、少なくとも、ぼくには人に知られて困るような情報は何もない。それだけでなく、自分に関する情報は、全て隠しだてなくオープンに公開している。これがぼくの大原則だ。だからぼくには裏も表もない。あるのは真実だけ。その分、余計な発言が多すぎるという指摘がないでもないが。もちろんコンピュータのパスワードといったセキュリティー情報は秘匿する必要がある。しかしこれはパスワードが情報ではなく、財産権の保護のためのツールだからだ。同じように、個人識別に関する情報も、現状の社会システムを前提とするならば、セキュリティーは必要だろう。だが信用情報や、資産の残高等は、まったく隠す必要はないし、隠す方がおかしい。堂々と胸を張って公開すべきだ。これが大原則ではないか。

差別やいじめだってそうだ。自分を卑下する気持ちがあって、事実を隠そうとしている場合なら、そこをつつくだけで簡単にいじめられるし、差別意識も持てる。しかし、威風堂々とカミングアウトしている相手に対しては、どんな見下した発言をしても精神的に優位に立つことはできない。逆に、そういう邪悪な気持ちをもって、相手をさげすもうとした相手のほうが、返り討ちにあって傷つくのがオチだろう。公明正大でクリーンな正義は、最後には必ず勝つのだ。

情報化社会では、ごまかしはすぐバレる。だから自分が発信する情報については、いかなるウソも、隠し立ても、取り繕いも意味がないのが基本だ。そういう姑息なことをしているだけで、信用を一気になくしてしまうのが情報化社会だともいえる。昔は、たしかに口先でウマいことを言って、人をだまし、モノを売りつけたりできたかもしれない。これからは、そんな騙しは通じない。通じないからこそ、「李下に冠を正さず」ではないが、なんか隠し立てしているようなイメージのある人間は、それだけで信用されなくなる。

プライバシーを公開されたくないというだけで、そのヒトは余程の嘘つきか、ヒトを騙しているか、影で悪いことをしているかとカンぐりたくなる。そういうヤツには、信用できない、ウサンくさい匂いが漂っている。そもそも、信頼できるクリーンな人間なら、公開されて困る情報など一つもないからだ。実力勝負の時代なのだから、やましいことはやる必要がない。逆に、やましいことがあったのではそもそも勝負にとってはマイナスになる。プライバシー云々といった時点で、その人間は裏のある人ということになる。そんなヤツは誰も信じないし、たとえ実力勝負で勝ったとしても、なにか裏でズルをしたんだろうと思われるのがオチだ。どうしてこんな単純なことがわからないのだろうか。

ビジネスとか、信用とかいった無味乾燥なデータの世界だけでなく、人の心の機微に触れる世界でもそうだ。たとえば、ちょっと前にはやった失楽園、浮気だってこれからは変わってゆく。陰でこそこそやる浮気なら、最初からやらなければいい。そんなことでは相手の心は引きつけられなくなる。反対にタイムシェアリングよろしく、どの相手も同時に「これ以上の幸せはない」と満足させることができれば、バレようが知られようが、何ら問題はないはずだ。これができる人は、何人恋の相手をつくってもいい。これができない人は、最初からあきらめろ。これが、これからの競争社会での恋愛の掟だ。

競争原理が働くところでは、フェアプレイが大原則だ。そのためには、公開性、透明性が求められる。ビジネス界ではだいぶこのルールも浸透してきたようだ。しかし、これは個人のレベルも同じ。クリーンでフェアでなくては、その人は信用されない。そして、個人の信用度がなににもまして重要になってきている時代だ。そもそも隠したくなるようなことをやっているヒトに、フェアプレイができるワケはない。変にプライバシー保護だ、個人情報が何だというような人は、最初から、うしろめたい、やましい心を持っているといわれてもしょうがないだろう。これからの時代を生き抜く強さを持った人にとっては、プライバシーはそもそも公開するモノというのが常識だからだ。

(98/01/20)



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