千の言葉に寄せて





今回でこのコーナーも1000回を迎える。この一文が、記念すべき第1000回のエッセイということになる。この個人Web自体、サーバを一般に公開したのが1997年の7月27日なので、この7月には満20年を迎える。毎週欠かさず連載するようになったのは1998年からで、最初の年はアドホックにすでに書いてあった文章をアップロードするコーナーだった。最初にコーナーができたのが1997年の8月。そういう意味では、このコーナー自体も丸20年続いたということができる。

まあ、文章を書くのは仕事にもしているぐらいで、好きだし早いほうだと思うが、我ながらよく続いているものである。テキストベースのWebという表現形式が受け入れられている限り、自分の都合でやめることはないという自負はあったが、始めた時にはこんなにも続くとは思わなかった。というより、文章自体はどんな時代でも生き残るし、書くことは続くと思ったが、html型式がここまでデファクトスタンダードとして定着し、互換性を引き継いで生き続けるとは思わなかったという方が正しいだろう。

ある意味、これも読者の皆様がいらっしゃるからこそなせる技である。時代時代ごとに読んでいただいている方はかなり入れ替わってはいるのだが、それでも続いているというのは非常にありがたい。この場を借りて過去このコーナーの文章を読んで頂いた方々に、あらためて御礼を申し上げたい。そういう方々からは、しばしば「よくあれだけネタが湧いてくるね」という話を頂く。実はこれらの文章は、本当に湧いてきたものをそのまま書き連ねているだけなのだ。

そもそもぼくは「論理的にモノを考える」というのが極めて不得意である。演繹的な思考ができないのだ。とにかく、最初に結論が思い浮かんでくる。理屈や論理は、その結論と現実とを帰納法というかバックキャスティング的に強引に結びつけて構築することしかできない。こういう文章のテーマも、世の中の動きや話題を睨んで考えているのではない。普通に生活しているとき、電車に乗っているとき、テレビを見ているとき等々、突然「言いたい理」がどこからか降ってくる。

絵でも小説でも音楽でも表現物を制作している人ならば、こういう感覚は理解できると思うが、論理的に物事を捉えている人にはにわかに信じられないかもしれない。でも、これはこうとしか言いようがない。言ってみれば「神が憑りついて、作品を作らせたり、文章を書かせたりする」のである。宗教によっては神ではなく阿弥陀様かもしれないが。創作時には、自分の意志で何かを作るのではなく、自分はなるべく空っぽになって神のオートマトンとしてふるまうことで作品が生まれるのである。

多分、いろいろな宗教の開祖となった預言者も、こういう境地で神の言葉を語ったのだと思う。そういう意味では、音楽や演劇は原始的な時代までそのルーツをたどると、神の意志を表現する宗教行為に行きつくし、絵画や彫刻も神の教えをリアルな形で体験させるというところから生まれてきたものであるということもよくわかる。無から有を生じさせる創作という行為自体が、人知を越えた神がかった宗教的行為なのである。

そういうようなプロセスで作っているので、個々の文章の表面的な流れについてはカブりが少ないと思うが、全体を通して言わんとしていることは、かなりシンプルで共通していると思う。アンチ「甘え・無責任」アンチ「知性・秀才」である一方で、自由競争と多様性の担保は極めて重視する。この1000回分の文章をAIで解析すれば、多分こんなような結論が出てくるのではないだろうか。さらには、頻出単語や独自の単語の組合せも分析できるだろう。

余談ではあるが、この「独自の単語の組合せ」というのがクセモノで、2単語のandはさておき、ぼくが3単語のandでサーチエンジンの検索をかけると、かなりの頻度でここに自分が書いたWebページ自体が上位にランキングされてしまう。これは坊主めくりで坊主が出てくるようなものでけっこう癪に触るのだが、それだけ組合せとしてユニークな発想があることを示しているのだろう。

このやり方、この傾向は、今後も変わりようがない。考えてみれば20年というのは、社会に出てからの半分以上、生活の中のある程度の時間をWebコンテンツを作るために費やし続けていることを意味する。ここまでくれば、もうライフワークである。やり方や頻度は変わるかもしれないが、何かが降ってきて憑りつくことが終わらない限り、コンテンツを作り続けていくだろう。読者の皆様には、今後とも一層の御贔屓をお願いつつ、ご挨拶に変えさせていただきたい。これからも、よろしくお願いいたします。


(17/06/02)

(c)2017 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


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