左翼の天敵はAIか





自分の意見を持たない秀才が、権力志向だけ強いと左翼・共産主義者になりがちである。もともと左翼や社会主義政党などでは、理論闘争というか屁理屈合戦が常に繰り広げられ、その中で勝ち残ったものが権力の座に着く傾向が強い。それは自分の正当性を示すには、いかに自分が先人の理論に忠実であるかを、理屈により示す必要があるからだ。かくして卵と鶏のように、左翼と理屈好きとは相乗効果で結びつく。

それは組織内部の問題だけではない。外部に対しても、自分達の正当性を理屈によって主張する。教条主義的な理屈を振りかざせば、自分達だけが正しく相手が間違っていることとにでき、自分達の所業は全て正当化される。まさに「造反有理」である。先人の理論の延長上に理屈さえつけられれば、自分のやりたいことが「正義」となるのだから、こりゃ居心地がいいに違いない。

何度も述べているが、これはまさに一神教原理主義者間での宗教戦争である。左翼同士の間でも、他の勢力との間でも、そもそもの拠り所が先人の理論に対する教条主義なのだから、原理主義的にならざるを得ない。それはどちらがより正統なのかを、理論に基づいて競う以外に手がないからだ。とはいえ、もともとその理論は我田引水でこじつけたものであるがゆえに、その正当性は五十歩百歩。結局屁理屈の上手な方が勝つだけのことだ。

産業革命以降、社会主義的な考え方が生まれて約200年。左翼はこの屁理屈の繰り返しで終始してきた。しかし、ここに強力な天敵が現れた。AIである。AIならどんな人間が一生かかっても学べない情報を瞬時に処理し、そこからの結論を出す。AIにより分析を行えば、その理屈がどれだけ過去の理論と整合性を持つのか、はたまたどれだけ我田引水なロジックなのかを、たちどころに分析し結論付けることができる。

理論が過去に蓄積された知識をベースにする限り、人間がひねり出した理屈はかなり性格に分析できる。左翼においてはゼロからひねり出したクリエイティブなロジックというのが存在し得ない以上、AI分析ににかなうわけがない。同様に、AIにより過去の理論を体系化してゆけば、最も正統的な理論を構築することも可能である。そこには我田引水やこじつけは入る余地がないものとなる。

同様に過去の理論について、その整合性・正当性を分析することも可能である。ヴィジョナリストとしてのマルクスと、アジテーターとしてのエンゲルスの問題も、経済学哲学草稿のような、マルクス自身が書いた原稿と、共産党宣言や資本論のようにエンゲルスが政治的文書として換骨奪胎した書物とをAIにより比較し、その論理的矛盾をきめ細かに分析することも可能である。

当時高校生のぼくでも、邦訳を読んでその両者の主張が全く違うものであることはすぐわかったが、AIをつかってテキストマイニングし、論理の違いを摘出すれば、どこをどうユガめたのかかなり正確にわかるであろう。初期のソヴィエト共産党での権力争いも、その論理という視点から分析し、どちらがどれだけ我田引水なのかを客観的に捉えることもできる。

悪の源泉がエンゲルスだったように、左翼の問題は、我田引水をして論理を挿げ替えてしまうことにある。ある意味左翼200年の歴史は、この屁理屈合戦の歴史でもある。そういう意味では、左翼特有の「自分勝手な理論」の矛盾点を暴き出し、その息の根を止める手段としてAIは非常に有効だということができる。まさにAIが左翼の息の根を止めるのだ。

これは「護憲」「反核」といった「リベラル知識人」に対しても同じ効果がある。彼らは思考を停止させ反論を許さない状況を作りたがる。しかし、コンピュータは、これに対してもクールだ。AIによる分析は、その理論の矛盾点を突き、ロジックの空虚さを白日の下に晒すことになる。そういえば、左翼・リベラルな人達には、反科学・反合理性な人が多い。これも、本能的にそういうものが天敵だと感じ取ってるせいなのかもしれない。


(20/03/06)

(c)2020 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


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