異臭とは何か




マスコミ報道でよく、「異臭が漂う」という表現が使われることがある。異臭と聞いてどういう臭いを思い出すだろうか。ぼくにとっては、異臭といえばなんといっても酸敗臭だ。生物系の腐敗した臭い、スエた臭いは本当に耐えられない。しかし、化学物質の臭いが「異臭」と表現されることが、マスコミ報道では多い。これはぼくにとってはどうにも解せない。シンナーやガソリンといった石油系の臭いは、子供の頃から大好き。嗅ぐとワクワクしてくる。気分も爽快になるというもの。

第一、ぼくの子供の頃は小学生でもシンナーが買えた。マメラッカー、マメシンナーというブランドで、駄菓子屋兼オモチャ屋みたいなところで売っていた。今ある子供用の水溶性プララッカーではなく、正真正銘、トルエンとかキシレンとか、亀の子がくっついている溶剤を使ったヤツだ。それだけではない。レンズ拭きと称して、四塩化炭素も普通に売っていた。あの毒性では人後に落ちない有機ハロゲンだ。ぼくは子供だったけど、持っていたぞ。スゴい時代だよね。

よく考えたら、高度成長期は、排ガスや公害物質は出し放題、川はどぶ、空はスモッグが当たり前。おまけに大気内水爆実験で、雨にはいっぱい死の灰が混じってる。そういう時代に育ったんだから、多少の害毒には動じないぞ。それで大丈夫だし、問題もなかったし。そういうワケで、化学薬品系の臭いには実に親しみがある。逆に生物系のイヤな臭いは、この上なく異臭だ。ホームレス系の臭いとか耐えられない。そういうヒトがいる脇は、息を止めて駆け抜ける。

そういえばこの前、某スーパーに買い物に行ったらホームレス関係の人が買い物に来ていた。それも食品売り場。ホームレス関係とはいっても、レゲエ系ではなくて、失業系の感じだったけど。で、食品売り場で、ものスゴい腐敗臭だぜ。あんなの食品衛生法違反だ。売り物が腐っちゃうよ(笑)。でもお客できてて、買い物しているから、店も文句いえない。こりゃタマらないよね。必死に息を殺してたけど。あとで消毒薬とかまかなくちゃ。赤痢やコレラが発生したときみたいに。

そういえば、今でこそ我慢できるものの、小さい頃は動物園に行くとあの臭いが耐えられなかった。だから、動物園は苦手だった。別に動物が苦手なわけではなく、あの糞の臭いが苦手だった。そういうのって生理的だよね。その線でいくと、くみ取り便所は、生々しい「肥」の臭いは耐えられないが、分解されて出てくるアンモニアの臭いが強くなれば大丈夫。ちょうど防臭剤のようなものだ。アンモニア臭は、鼻にスースーするんで、これはけっこういける。

喰いモノも、そっち系のはもちろんダメ。クサヤの干物もダメ。納豆も臭いが強いのはダメ。その反面、香辛料系はどんなに強烈でもOK。やっぱ揮発系だからかな。体臭もダメだなあ。体育会の高校生とか、汗臭いヤツすえた臭いを振りまいてるヤツがいるけど、あれも公害だぞ。わしゃたえられん。異臭中の異臭だよ。すえた臭いで電車に乗るな。つゆの時期とか。そもそも本人が耐えられないと思うのだが、どんなものだろうか。あ、それから雑巾の腐った臭いもだめだな。ぬれたまま一週間とかおいとくとにおうヤツ。ダメだ。気分悪くなってきたぞ。

石油類とか、揮発性の化学物質にアレルギーなヒトがいるらしい。まあ、化学物質だし、有機物だから、人によってはさもありなん。本人にとってはきっと大変なことだと思う。ご愁傷さまです。ということでアレルギーな人を助けてあげるのは大事なことだが、だからといって石油類が異臭では浮かばれない。そんな毛嫌いしなくたっていいじゃない。慣れればとっても気持ちいいんだし。ま、これも好みの問題だから人に強制はできないんだけど。でも、揮発性の臭いはいい臭いだよ。ほんとに。やっぱりぼくは好きだな。


(99/11/19)



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