99年ベストチャートに思う





さて今回は、昨年同様すっかり新年恒例となった(ほんとかよ)、オリジナルコンフィデンス発表の昨年のアルバムチャートを見ながら、言いたい放題、放言放題、また行ってみたいと思います。去年は、この関係のコメントは多かったので、けっこうなに言うか想像ついてるヒトも多いと思うけど、期待にこたえていきたいと思います。
まずは、トップテンランキングから。けっこう今年は違うんだよね。
1. 宇多田ヒカル 「First Love」
2. ZARD 「ZARD BEST The Single Collection 〜軌跡〜」
3. globe 「CRUISE RECORD 1995-2000」
4. SPEED 「MOMENT」
5. L'arc〜en〜ciel 「ark」
6. Every Little Thing 「Every Best Single +3」
7. L'arc〜en〜ciel 「ray」
8. GLAY 「HEAVEY GAUGE」
9. 鈴木あみ 「SA」
10.Mr.Children 「DISCOVERY」


宇多田ヒカル
なんてったって去年はこのヒト。みんないろいろ言ってるし、ぼくもいろいろコメントしたし。もう語り尽くされた感じもするけど、去年のミュージックシーンを代表するヒト、代表するアルバムという意味では不動の存在感だね。これだけ売れるとフォロワーが雨後の竹の子のごとく出てくるはずなんだけど、本質的なところでそれを許さないところがスゴい。多少歌詞の影響があったぐらいかな。曲やアレンジはどちらかというと無個性というか、二番煎じ的なのでそれ自体をパクりようがない。さらにカギになっているウタそのものは、これが唯一無二のモノでパクりようがないときてはね。プロテクトがかかってる(笑)。しかし、表現力のあるウタは、コンピュータのシーケンスをハミ出すという本当にいい見本。倍音構成も、グルーブも、プログラムされた予定調和をハミ出している。これ聞くと、デジタルビートアレンジにおける小室氏の上手さがわかるよ。絶対予定調和ギリギリに収めてるから。みんないってるけど、次が大変だよね。ぼくとしては、人気のあるうちに、アカペラかピアノだけの伴奏でバラード唄いまくるアルバム出してほしい。そうすれば「一代親方」になれますよ。きっと。

ZARD
他のアーチストに比べると全然そんな印象がなかったけど、結果売れたのね。ZARDおそるべし。まあ、ベストアルバムということもあるんだけど、二位はご立派。それにしても正攻法でこの実績はスゴい。はっきりいって古典的なポップスの王道、それもアイドル、青春の香りがする「ニューミュージック」的な方法論だからね。一時ほど騒がれなくなったけど、こういう底力を見せるところに、ビーイングの強さが感じられるよな。さすが、大幸さん。日本のミュージックシーン百年の計を考えてたもんね。考えていながら、表面的なウケ狙いも強いところが今となってはスゴかった。明治神宮の森だね。あれって70年ぐらいかけて、人工的に野原を森に変えたんだけど、最初にすぐ育つ木。それからよりゆっくりより大きくなる木。最後に本当に生やしたい杉などの巨木。と時間差攻撃で森が育つように植えたんだって。それに近いモノを感じますです。この時期に、この結果はほんとにスゴいと思う。ここに残った遺伝子が、「芸能界」に取り込まれてしまったJ-Pop系統とは違う音楽性を今後に伝えることになるんだろうね。音楽界の縄文杉。スケールが違うぜ。

globe
これまたベストですね。どちらかというと今年はそんなに活躍した感の薄いTK軍団ですが、押さえるところはそれなりに押さえてるのは、マーケティングの勝利というところか。ご本人はもう、気持ちが先に行ってるみたいですからね。去年の力の入れようって。廻りの人達を喰わせなきゃいけない分、力こそ入れないくても、稼げるところは取りこぼさないのは偉いです。ほんと。しかしこれは昔から主張しているのだが、TK軍団ベスト作品をアンプラグドでやったアルバムを出してほしい。これ絶対いいよ。吉田拓郎さんもまたブームになってきてることだし。青春フォークの伝統ここにあり。この青臭い歌詞、このたたみこむようなメロディー。そういうところが、この上なく好きなんだよね。ぼくの場合。世代論になっちゃうな。花の40代前半、昭和30年代生まれ(爆)。その場合はもちろん、ビートはJ-45の力強いカッティングプレイでお願いね。それも深いチェリーサンバースト(笑)。

SPEED
まあ、SPEEDはねえ。もうSPEEDじゃなくなっちゃってるから。ある種、出世魚というか。ブリになったらハマチじゃない。ブリの方がハマチより旨いんだよ。唄ウマくなってるし、ダンスもウマくなってるんだけど、それじゃ違う。SPEEDであり続けることと、本人たちの今いる場所とが開いてきてしまってる。構造的に解散は必然だし、いいことだよ。やはりここは一つ、マニア向けはSPEED2に期待して。とはいっても、今は法律がかわっちゃったからやりにくい。ってなに言ってるんだよ(笑)。なんでも児童ポルノにされちゃうご時世。でもやはり、SPEEDは「特殊ユーザ」のニーズも満たしてこそ、の世界。少女のけなげさには、異常者もゾクゾク(爆)。ご本人たちは、大人になっても、大人向けにがんばってください。やれる実力はあると思いますから。

L'arc en ciel
ラルクは二枚はいってますね。総合パフォーマンスでいえばGLAYだろうが、アルバムではラルク。ひとまず両雄が棲み分けた感じ。でもこういう対比される「ライバル」がいる状態っていいよね。両者が競走しあって、シーンを引っ張っていくようなスタイルで。ソロの場合は「ご三家」が多いけど、バンドはなぜか二枚看板が多いよね。ビートルズ、ストーンズにはじまって。そういう意味では、ラルクは良きにつけ悪しきにつけ、「中年のオジさん、オバさんの若い頃の、ロックやバンドのイメージ」を引きずってるのがポイントですね。ぼくらみたいに、実際に70年代にバンドやってた方からすると、なんか気恥ずかしいんだよね。はっきりいって。カラオケとかで唄うと、過去の封印された恥ずかしい記憶がよみがえるような。でも、そうじゃないヒトにはそこが魅力だと思う。ところで、ヴォーカルが小柄というのは辛いよね。押し出しは強いんだけど、絶対的な大きさは何ともしがたい。これじゃ逆遠近法だ。広いステージで、ヴォーカルが前に出ても、ライブハウスで、横一線に並んでるように見えちゃう。なんか、そこが愛敬でうれしくなっちゃうぼくは、昔のプリンスとかけっこう好きだったりするのでした。

Every Little Thing
いいたいことあるけど、もう何度も言ったから、今回は言わない(笑)。もうわかってるでしょ。皆さん。気持ちはよくわかります。だけど蛇足はいけない、ってやつで。やっぱり言ってるじゃん。曲はいいのよ。ポップスの王道。こういうのが売れてくれると安心します。やっぱりメロがあってのポップス。リズムアレンジ先行はダメ。しかし、メロ先行だからこそモロ、という話もありますね。はい、大反省しております。ヒトの曲のアレンジだとすぐ「やっちゃう」という、ぼくの悪い癖。でも、これまたベストだよね。ベストがトップランキングの主流を占めるのって、象徴的だよね。時代の終わり、って感じだし。それに、今の日本での音楽の消費のされかたにも合ってるんだろうし。

GLAY
GLAYは、ほんとにいろいろ言われやすいけど、それ自体やっぱり大物の証しでしょう。ザコは、なにやっても話題にならないし、大物は、なにやっても妬まれる。歌の線が細いという人もいるが、声量ばっかりあって表現したいモノが空っぽの歌手より、よほど聴き手は感動しますよ。楽器がヘタだとかいうヒトもいるが、それならビートルズとか箸にもひっかっからなくなってしまうじゃないか。ロックじゃないというヒトもいるが、そもそも絵にかいたようなロックじゃ、誰かのものマネでしょう。きちんと自分の世界があるからこそ、既存の価値観をベースにいろいろ批評されやすい。それだけのことだよね。その世界そのものが好きか嫌いかってのはあるだろうけど。ぼくは好きだよ。もう、なにいわれても自分の好きにできるところまできているんだから、この調子で突っ走ってほしいですね。これが21世紀の歌謡曲になるんでしょう。いけいけ。

鈴木あみ
こんなに売れてたの、ってのが正直な感想。音楽面では浜崎あゆみの方がずっと売れてるかと思ったら、あっちは二枚。こっちは一枚。その差でした。これはキャラクタで売れたんだろうね。キャラクタで180万枚。いまお金があるからね、みんな。アルバムなんてブロマイドみたいなモノかもしれないし。彼女を正統派アイドルみたいにいうヒトがいるけど、70年代の元祖アイドルを知ってるモノとしては、毅然としてNoを言おう。確かにA級アイドル的な要素は持っているが、そもそも「A級アイドルは、アイドルじゃない」。ありゃ、アイドルである以前にタレントなの。アイドルはB級でなくっちゃ。マニアックであってこそアイドル。そういう意味では、突如世紀末にB級アイドル的なブレイクを始めちゃった、さとう珠緒には注目。あれ、関係ない話になっちゃった(笑)。

Mr. Children
入ってますね。手難い。90年代半ばとか、圧倒的にこのスタイルがアルバムチャートのメインストリームだったけどね。ある種のバンドブームだったから。でもバンドブームで出てきた人達って、けっきょくメジャーに残ることは難しいんだよね。そもそもバンドの指向するモノがメジャーとは違うワケだし。その壁を越えられるのは、メインになっているヴォーカリストのキャラクターということになる。これを欠くバンドは、バンドとしては成立するけど、スター・アーティストとはなれないってことですね。そういや、「ミスチルのヴォーカル」じゃなくて「桜井さん」って、みんな意識して知ってたもんね。ところで、彼らのステージの立ち位置って変だよね。ベースがドラムの上手に立つのって。アイ・コンタクトどうするんだろう、って昨年末のテレビみてて気になってしまったのでした。

ということで、今年は書きにくい。ある意味で、構造が変わりきっちゃったというか。いいことだとは思うけど。芸能界がアルバム売るようになったんだと思う。それがメガヒットということかな。けっきょく。そういう意味では、ランク外だけど13位のDragon Ash、25位の椎名林檎は大したモノです。まあ、メジャーとオルタナティブみたいなのって、きちんと分かれてた方がパワー生むからね。ぼくはそのほうがいいと思う。みんなメジャー目指すのは変だよ。やりたいもんやって、そこそこ売る。聴く方も、そういうところからの方が、愛聴曲って出てくると思うけど。

(00/01/07)

(c)2000 FUJII Yoshihiko


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