00年アルバムベストチャートに思う






さて今年も、オリジナルコンフィデンス発表の昨年のアルバムチャートを見ながら、言いたい放題、放言放題、行きますよ。毎年やってるから、すっかり新年恒例ですね。でも毎年やってると、段々いうことがなくなってくる。ま、同じようなコメントでも、その辺はご愛敬ということで。大体、ぼやきとか説教とかいうのは、同じ話題を繰り返すのが常ですから。
まずは、トップテンランキングから。これがけっこう今年は特徴的。なんたって、全く面子が違う。連続チャートインがいないんだから。

1. 倉木麻衣 「delicious way」345万
2. 浜崎あゆみ 「Duty」260万
3. 椎名林檎 「勝訴ストリップ」232万
4. Misia 「LOVE IS THE MASSERGE」220万
5. ドリームズ・カム・トゥルー 「DREAMS COME TRUE GREATEST HITS "THE SOUL"」214万
6. JUDY AND MARY 「FRESH」173万
7. スピッツ 「RECYCLE Greatest Hits of SPITZ」166万
8. B'z 「B'z The "Mixture"」150万
9. 福山雅治 「MAGNUM COLLECTION 1999 "Dear"」139万
10.aiko 「桜の木の下」129万

ことしもベスト盤が多いですね。ベストチャートってベスト盤のランキングって意味じゃないんだけどね。ダジャレにもなってない。それが今のCDの売れ方ってコトなんだろうけど。これって、やっぱりCDに曲を詰めすぎるからいけないんじゃないのかな。一般のアルバムだと、どうしてもインフレ気味になって、曲のレベルが下がってくる。昔ならボツみたいな曲も、曲数稼ぎにちゃんと入ってるからね。それこそ、そういう曲はボーナストラックですよ。アルバムとしてのまとまりとか全然考えてないモン。ミニアルバムが増えてるのもうなずけるところだけど。人間、集中して聴けるのは3〜40分が限度でしょう。そのぐらいのまとまりが欲しいよね。そういうコトやっているから、曲のレベルが高いほうに揃ってるベストアルバムに手が伸びるってのもわかるけど。

倉木麻衣
堂々の一位。やったね。これでこそポップスの王道。ここまでやってこそ、美学になるというもの。それにしても、本当の意味でポップスを作り出せる人達って、日本じゃビーイング系しかないのかね。全く。本格中華料理店の麺類とカップヌードル、松坂牛のステーキとハンバーガーは、材料に共通点があっても、全然違うもの。ここがわからないと。ポップスはあくまでも、カップヌードルであり、ハンバーガーでなきゃいけない。これが死ぬほどスキという人はいなくても、誰もがタマに食べたくなる味付け。これは、本格レストランのシェフにはできないことだ。一人に100万出させるのが芸術なら、100万人に一円出させるのがポップス。いやスゴい。プロのお手並みです。感服。

浜崎あゆみ
浜崎あゆみって、唄ウマいよね。絶対値はさておいて、少なくとも今の日本のミュージックシーンじゃハイレベル。ちゃんと心の機微とかわかってるようだし、聴いててそれが伝わるし。まあ、穏当なポジション。実力相応というところでしょう。決して個人的に好きではないんだけど、小柳ゆきの100倍はいい。かかってりゃ聴くもん。なんでこういうタレントをきちんと育てられないのかな。ハヤリものは、一見、大当たりを狙えそうな気がするけど、所詮は長続きしないから、費用対効果が悪いはずなんだけど。援助交際で金出すおっさんより、それで金もうける女子高生の方が、数段醒めて世の中を見ていて、計算高いようなものだうか。

椎名林檎
去年は、枠外大穴でコメントしたけど、今年は堂々のベスト3。大ヒット連発、林檎現象として流行にまでなったのはご同慶の至りですが、この結果が彼女にとって果たしてよかったのか。ここまで来てしまうと、手放しでは喜べないところも。個人的にも期待していただけに、ちょっと悩ましいものがありますね。いかに強力なクリエイターといっても、時代の波に飲まれてしまえば恐いものがありますから。流行、ファッションにされて、ワイドショーや女性週刊誌のネタになると、後がなくなっちゃうし。年の前半は、そのあたりの波のノリかたがつかみきれずに、露出過剰化して危なっかしい感じもありましたが、後半あたりからは、本人もその辺をだいぶ意識してきた感じもします。器は大きい人なのは間違いないので、長い眼で見守りましょうか。

Misia
わはは、Misiaはこの前たっぷりコメントしたからいいや。ま、時代にあってるんでしょうね。でも、彼女の「しっとりとした、切ないバラード」聴いてみたいなあ。そこかしこの曲の唄いまわしで、片鱗は聴けるんだけど。いいと思うんだけどな。もっとも、これはアーティスト〜ミュージシャン系の発想で、「業界人」の発想ではないよね。「大衆」さまさま。お客さまは神様ですから。でもね、それって昔の日産や三菱自動車と同じじゃない。大衆と同レベルの発想しかできない。大衆の側を向いてても、大衆の中からは出てき得ないようなスケールの作品を作れるからこそ、クリエーターなんだと思うけど。「産業ロック」みたいに「産業音楽」ったって、音楽が主体で、産業はその形容句なんだから。大衆と同じレベルで作ったんじゃ、作品にならなくてほんとにただの「産業」だよ。二流のビジネスマンかつ二流のクリエータしかいない「芸能界」っておかしいよ。

ドリームズ・カム・トゥルー
この人達には、もう言いたいことは死ぬほどいったから、あえてもう言いません。ほら、それを期待していたそこのあなた。今回は言わないよん。言わなくてもこれを読む方々なら、ぼくが言いたいコトはわかるでしょうから。って、けっきょく言ってるのと同じか。まあ、これだけ実績があれば、ベスト出せばそれなりに行くでしょうね。しゃんしゃん。で、次はこの余勢をかって、「ネタ曲カバー集」でも出してくださいな。元のソングライターにもお礼を還元するつもりで。それで100万枚とか売れれば、よい前例になるとおもうけどね。著作権の問題は、けっきょくは金で解決するのがグローバル・スタンダード。「人格権」なんて持ち出すのは、日本だけよ。

JUDY AND MARY
今回のチャートで一番コメントしづらいのがこれ。まあ、実績もあるし、ベスト盤だしということで、理解はできるし、それなりに時代のある部分とは共鳴する要素も強いんだけど、それはあくまでも結果の後付けだよね。元来、こういう年間6位とかいうところに出てきちゃいけないというか、出てこないところにいるアーティストであるべきだと思うなあ。銀座山野の年間アルバムチャートだと、30位前後なんだよね。実際。確かに数年前のメガヒット全盛期なら、ベストテンには入ってこないレベルの売上ではあるけど。大潮のときだけ、水面上にに出てくる島みたいなものと考えればいいのでしょうか。難しい時代だとおもうけど、マイペースでやってほしいものです。

スピッツ
渋い。実に渋い。このランクイン。いい味出してるよね。ジャイアンツV9時代の、高田選手のファウルでの粘りみたいな。2000年のCD全体の盛り下がりを見越して、ここに打ち込んできたような感じさえする。もしほんとに作戦勝ちだったとしても、それまで芸風に見えるところがポイントだよね。こういう渋さを小出しにしてゆくと、ほんとに長持ちするんでしょうね。アメリカのロックミュージシャンにはけっこういるよね。そういう「小出し芸」タイプの人が。果たして移り気で一貫性のない日本のミュージックシーンで、その技が通じるのか。今後もがんばっていただきたいところです。

B'z
はい、コレぞプロ。さすがですね。「同じネタで何度も喰って」って言ったって、何度も喰える楽曲資産があってはじめてできること。ここまでやってはじめて、ポジティブな意味での「産業ロック」。いつもいってるけど。産業になってない「産業ロック」が多すぎる。ロックになってない「産業」も多いけど(笑)。TOTOだってグラミーとったから、「産業ロック」なんだし。そう考えれば、Takモデルもダテじゃないよね。でももっとスゴいのは、そのポジションを活かして、必ず新しい試みを入れ込んじゃってるところ。気づいてみると稲葉氏も、ロックヴォーカルの概念自体をかなり押し広げちゃったから。毎回、ちょっとづつ、実験的に「意図的な逸脱」を潜り込ませていて、それが結果として布石になってる感じ。60年代のビートルズや、70年代のゼップ以来、「ロック概念の拡張」は、常にトップミュージシャンに課せられ、またトップミュージシャンのみに許されてきた役割だから。21世紀もがんばってください。「最後のロックスター」になれるかもしれない。

福山雅治
彼も、じわじわと登ってきた感じがあるよね。けっこう「マイナーなところでのメジャー」みたいなイメージが強かったから。でもバンド出身でない、純然たる男性ソロでトップテン入りって、ほんと久々じゃないの。めでたいことです。しかし福山雅治といってやっぱり忘れられないのは、90年代の半ば、日曜の昼だかにBay-FMでDJやっていたラジオ番組。こういう時間で、どちらかというと女性ファン向けの構成だったにもかかわらず、侘しい男の独身下宿生活のネタから、果てはずりネタの話題まで、多少の恥らいを残しつつも、あっけらかんと語ったその印象は鮮烈。それ以来、けっこう好感を持ってます。ステージや深夜放送で、そういう下ネタ的な話題を出すタレントは、石井龍也や古くは谷村新司等、かつていなかったわけじゃないけど、真昼間だもんね。これも、ある種の人徳ではあると思うけど。

aiko
aikoは高く評価してます。このオリジナリティーは相当なものだよ。いいよね。ふつうのアーティストって、特に日本のアーティストは、音楽の系図上で何を父母として位置付けられるかって、スゴく明白じゃないですか。もちろん、「モロ」になっては黒だけど(笑)。ソウル・R&B系に「モロ」が多いのは、「黒いの大好き」って開き直ってるのかね。黒は黒。つまんないこと言ってる場合じゃないよ>自分。全体としてはオリジナリティーが高くても、唱法、曲作り、サウンド等々、要素に分解すればルーツが見えてくる。でも、彼女はそれがない。まさに音楽系図上の特異点。ワン・アンド・オンリーの個性は日本では貴重な存在。タイプは違うけど、そういう特異点と感じたのは、中島みゆき、広瀬香美ぐらいだから。こういうパーソナリティーは、あくまでも天性のもので、努力や修行でどうなるもんじゃないからね。スーパー天然系でしょう。そういう意味では、今後ものびのびやって欲しいと思いますね。



(01/01/05)

(c)2001 FUJII Yoshihiko


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