改革の構造





参議院選挙もいよいよ公示される。相変わらず小泉内閣の支持率も高い。しかし組閣後日数が経つと、支持率が高いといってもそれなりに違いがあり、一筋縄では語れない要素があるコトがわかってくる。確かに支持率は高い。しかし同床異夢というか、いろいろな違う思惑を持っている人達が、単純に「支持しているという」結果の部分で共通しているだけであり、それが積み重なって高い支持率になっているに過ぎない。この構造をきちんと把握できるかどうかが、今の世の中、ひいてはこれからの日本がどちらに向かうのかを見極めるためには重要だろう。そういう視点から、支持者の構造を分析してみよう。

まず、自由主義者、グローバル主義者として、根っからの改革派であり、改革のための突破口としての小泉首相の役割を評価している人が1/3程度を占める。既存の政党では自由党に近いオピニオンを持っていると考えられる。この層は、現状のままの自民党をそのまま支持するとか考えられないが、もともと自民党の中にも自由主義経済の信奉者はいたわけだし、そういう意味では「大きい政府の共産主義的政策」は許さないが、本当に改革する気なら、あるいは党内から、族議員に代表される「甘え・無責任派」を一掃できるなら、自民党を見直してもいいと考えているに違いない。

その反対に、利権とバラ撒きを身上とし、あくまでも「所得の再配分」を目指そうとする「守旧派」が、やはり1/3程度いると考えられる。まさに確信犯である。根本的には小泉首相の改革路線とは相容れない考えかただ。しかし当面の作戦として、ひとまずは勝ち馬である小泉首相にのっかっておき、なしくずし的にその政策を骨抜きにして、自分の都合のいい路線に引き戻せばいいと考えている。改革はさせなければ今のままが続くわけなので、既得権益を擁護することは決して難しくはないと考えているのだろう。支持しないけどのっておく、という、いかにも高度成長期の自民党的な何でもありの態度である。

さて一番問題になるのが、残りの1/3である。この人達は、現状に不満は持っているものの、自分が犠牲になったり、苦労したりするのはイヤだ、というご都合主義的なオピニオンである。だから、根っからの改革主義者は支持しない。しかし、自民党内の改革主義者なら、そんなヒドいことはしないだろうとタカをくくって、支持しているのである。だが、この連中は口先でこそ改革を支持するものの、実際の行動では改革の足を引っ張る可能性が高い。もしかすると、この人達が一番数的には多いかもしれない。そして、支持率が上がれば上がるほど、浮動票的に集まってくるのはこいつらなのだ。

「守旧派」が、選挙のために相乗りしているコトを問題として指摘する人は多い。しかし、彼らは確信犯であり、どうやってもその「思想」を改めることはない。逆にいえば、員数あわせとして使えるときには手を組んでもいいが、所詮は「守旧派」。本質的には殲滅すべき敵なのだから、どこかで決戦をやらなくてはいけないということだ。これはこれで対処しやすい。それよりも、問題点を感じていながら、「甘え・無責任」な他力本願の解決を求めている「ご都合主義派」の方が余程扱いにくい。それは、彼らがいつどこで寝返るのか、それともランディングがあるレベルなら最後までついてくるのか、その態度自体もご都合主義で読めないからだ。

その意味では、この層の改革への支持は結果でしかなく、最終的にどういう態度を取るのか決まってはじめて員数に入れられるということだ。その意味では、「痛みの伴う改革」を最初から強調しておくのは良いことかもしれない。何も自分が貢献せず、ウルトラマンが助けにきてくれるように、改革派の政権が世直しをしてくれる、みたいな期待では、サレればサレるほど困るからだ。逆に、この層がいざというときどこまで耐えられるのか、そのキャパシティーがわかっていたほうが改革は進むだろう。これが、これから本当に改革が進むかどうかのポイントになる。

そのためには、やはり曖昧な態度が許される環境を認めるべきではない。「自立・自己責任」に基づく小さい政府なのか、「甘え・無責任」に基づく大きい政府なのか。冷戦時のイデオロギーに代わる、今後の政策の対立軸の基本スキームはここにしかない。参院選後、この対立はもっと明確にならざるを得ない。来年度の予算編成を考える時期になれば、この対立がストレートに現れてくる。そうなれば、政界自体もこのスキームで再編せざるを得ない流れになる。形の上でどの政党が勝とうが、自民党の中でどの派閥が力を得ようがかまわない。それが意味があるかどうかは、あくまでもそれが政界再編につながるものになるかどうかという視点で評価すべきだ。

(01/07/13)

(c)2001 FUJII Yoshihiko


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