肉食力





このところ、「肉食女子・草食男子」が流行語となっている。確かに、この10年ほどの新入社員を見ても、高校生や大学生の生活を見ても、圧倒的な女性上位社会になっていることが見てとれる。ポイントは、女のコには「肉食」も「草食」もいるのだが、男のコに、多少「雑食」はいるものの、ほぼ「草食」しかいない点だ。

ここに、今の若者の男女関係を考えるカギが潜んでいる。では、「肉食」と「草食」を分けているものは何だろうか。それは、人間関係やコミュニケーションを構築する力の違いである。実は「草食」とは、相手から自分がどう思われるかを気にするが余り、自分らしく積極的・能動的な行動ができなくなったヒトたちなのだ。

逆に「肉食」とは、自分が「こうだ」と思ったら、周りのリアクションを気にせず、自分の信念のまま、思いを成就させられるタイプである。恋愛関係においては、相手や周囲のコトを気にしたら、まとまるものもまとまらなくなる。これは、人類誕生以来の真理である。「肉食女子」が恋愛関係においてイニシアチブを取っているというのは、いわば当然の帰結なのだ。

女性においては、いい意味での「わがままさ」が勝負を決める状況は、1980年代以来顕著になった。80年代を通して、女性は選ばれる側から選ぶ側に変わった。その象徴ともいえるのが、アッシー君、メッシー君、ミツグ君が流行語となった、バブル期の男女関係だろう。女のコに気に入られようと、必死に低姿勢を尽くす男のコ。

その状況は、90年代、そして21世紀になって、より顕著かつ露骨なものとなっていった。特に、雇用平等法の施行以降は、女性にも「結婚しない選択」が可能となり、女性優位傾向が一層強まった。甲斐性のない男を相手にするぐらいだったら、仕事で稼いで自分の好きなことをしたほうがいいい。これは、男のコにとっては、男女関係が一層狭き門になったことを意味する。

さて、今のティーンズや大学生といった世代は、実は「雇用平等法第二世代」と考えたほうがいい。平等法施行前でも、80年代初頭から、日本における女性の雇用環境は徐々に改善されてきた。旧態依然とした重厚長大産業はさておき、当時は最先端だった情報・ハイテク関係企業や、外資系を中心とする金融関係企業などでは、大卒女子をかなり採用するようになっていた。

そういう意味では、今のティーンズや大学生の女のコは、その母親がバブル世代で雇用平等世代と言っていい。したがって母親自体がすでに、女性優位な状況の中で結婚し、子供を生み育てたワケである。当然、その家庭も圧倒的に女性優位である。お父さんは、永久「アッシー君、メッシー君、ミツグ君」なのだ。これを見て育ったのが肉食女子ということができる。

肉食女子は、仕切がいい。学生時代は、勉強の成績もいい。社会人になれば、仕事もできる。男のコには勝ち目がない。これを、小学生のときからイヤというほど味わわされ、叩きのめされてきたのが、今の男子である。こと男女関係においては、最初から軍門に下らざるを得ない。それも恐いという気弱な男子は、オタクとなって、バーチャルな二次元の世界に篭らざるを得ない。

こう考えてゆけば、「草食女子」は、邪念が入りすぎる分、自らチャンスを狭めていることがわかる。女のコなら、ワガママにすれば、ワガママが通ってしまうのが、今の日本社会なのだ。周りを気にせず、ズンズンわが道を進む。草食女子たちも、これが女のコの特権であることに気付けば、男女の恋愛チャンスも、多少は増えるかもしれない。まあ、それでも打席に立てない男子は、けっこういるとは思うが。



(09/07/24)

(c)2009 FUJII Yoshihiko


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