不言実行




SNSなどのUGMを見ていると、実は自分にやる気がないのだが、それを認めたくないし、やらずに済むウマい言い訳を欲しがっている人が余りに多いことに気付く。まあ、リアルな世界でもこういう人が多いのは確かだが、SNSみたいなサービスのユーザーには、特にそういう人が良く見られるというのも確かだ。こういう人は、仕事をしているふりをして、この手のメディアに書き込んで暇をつぶしていることが多いからだ。

真っ当なSNSユーザなら実体験として気付いていると思うが、この手のメディアへのアクセスは、忙しくなるとテキメンに減る。逆にヒマになると、いろいろな言葉を入れて検索したりとか、いくらでも暇潰しができるので、アクセス時間はグングン増える。ある意味、こういうところに常駐して素早く書き込みまくっている人は、極めてヒマなのである。ワザワザ時間を作ってSNSにアクセスするようなおめでたい人は、ほとんどいない。

SNSの書き込みには、そもそもこういうバイアスがかかっていることを忘れてはならない。まあ、最低限の書き込みを読むだけならある程度忙しくてもできるかもしれないし、特に若い人には、他人の書き込みを見落とすと何を言われるかわからないので、その時間だけは確保しているという人も多いかもしれない。だが、書き込むところまではいかない。そう思って書き込みを見てみると、ある特性をもった人達ならではの特徴を読み取ることができる。

要は、こういうところで発言数が多い人ほど、自分が主体となり率先して何かをやるということがない人達が多いのだ。言うのは楽、やるのは大変ということもあるが、それ以上にやらない言い訳を常に考えて言いまくり予防線を張っている。あるいは、同じような言い訳を使っている人を見つけてはその意見に同調しあうことで、数を確保し、あたかもやらない方が正しい選択であるようなムードを作り合っている。

こういう人達は、全体のスキームとしては自力でブレイクスルーを作れる状況でも、自助努力する前に制度やルールを変えて欲しがる傾向が強い。ところが、世の中は先手必勝。自分でやれる人間は、文句をたれる前に自ら動いている。世の中で結果的に成功している人は、大体こういう感じで、先に自分で始めた人である。結局のところ、やる気がない、やれない人間が、ひたすらやらない言い訳で文句を言っているだけてある。

そもそも凡庸な人間は、いかに制度やルールが整備されても、成功しない。制度をどうにかしろという人たちは、自分ができない理由を制度のせいにしたいというだけである。最近のブラック企業についてもそうである。昨今、労働環境についてはブラックだ、定時に帰れない、制度が悪いという連中が多い。確かに、中には昔から「タコ部屋」のような劣悪な労働環境もなかったわけではない。

しかし、圧倒的なパフォーマンスでノルマどころか、ナンバーワンの実績を上げていれば、朝遅刻しようが、会社に顔すら出さないだろうが、文句を言われることはない。そういう人が辞めるといえば、引き留めるだろう。実績があれば、誰も何も言えないのだ。実績を上げずに、権利だけ主張しているから、話が通じない。不言実行なら相手も黙る。有言不実行だから、突っ込まれるのである。

甘えているだけではないか。完全に実績主義で、必要とされる成果を出してしまえば出社さえしなくていい企業もある。実績が出せない人間は、こういう組織ではそもそも給料がもらえない。ブラック・ホワイト以前である。逆にいえば、実績が出なくても、長時間だらだらいるだけで残業代は出なくても給料をもらえるブラックな会社の方が、甘え・無責任な人には優しいのだ。

幸い、最近人工知能が急速に発達している。知識ベースの、こつこつ勉強すればできる作業は、知的労働であってもコンピュータシステムで置換が可能になった。これは昔から主張していることだが、人間であっても、コンピュータシステム以下の能力しか持たない人と、コンピュータシステムを使いこなして創造的な仕事ができる人と、完全に二層分化する。ブラックでも給料がもらえるだけ良かった。そういう時代が間もなく来る。贅沢を言っている時代ではないのだ。


(16/09/02)

(c)2016 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


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