「負け犬」は消え去るのみ





「自立・自己責任」か「甘え・無責任」か。この構造こそが日本社会の最大の問題であるということは、まさにこの個人Webの歴史と共に、この20年来筆者が主張し続けてきていることである。人は百人百様、みんな違っている。だからこそ、人はバラバラに生きるべきである。それを、一緒・横並びにしようというのが、悪の根源なのだ。確かに皆でつるむのは楽である。しかし、楽をするがゆえに失う可能性も大きい。

百人百様。みんな違う。一緒になることはできない。しかし自立するためには、自分を知り自分を主張しなくてはいけない。自分を主張するには勇気がいるし、自信もいる。そもそも、自分を持っていなくてはならない。これがなかなか難しいのである。特に国や社会が「二番手戦法」でずっとやってきた日本では、誰かの真似をウマくやってソツなくこなせばそれで評価されてしまっただけに、敢えて自立しようとしない人が多かった。

その一方で、人は相手との違いを受け入れるのは難しい。目の前に異質なものが存在するのは、誰にとっても鬱陶しいものである。自立は面倒、相手の違いは許せない。こうなると「横並び」が求められるようになる。横並びを主張し出すと、無理に悪平等を求めるようになる。「出る杭は打たれる」社会はこうして生まれる。無言の強制力で、横並びへの「忖度」が求められるのだ。

昨今、世界的に話題になっている排外主義や移民排斥も、一つのコミュニティーの中で、違うものを同じように扱おうとするから起こる。ある種「横並び」圧力の中から生まれている。しかし、元来反EUや移民排斥は、悪平等や無責任と違う軸の問題である。それが経済問題や差別問題にとどまるなら、いくらでも合理的な解決策はある。だが、悪平等や無責任から生まれる「横並び」圧力の問題となると、原因が非合理的なものであるがゆえに、解決が極めて難しくなる。

先住者も移民も、権利を守るためには、無理に融合や同化せず、距離を保ちながら互いの文化や慣習を守るべきである。これができれば、合理的な解決策は取れる。自由な市場を理想とする人々にとっては、これは別に矛盾することではない。大事なのは機会の平等であり、結果の平等ではないからだ。というよりも、自由な市場が担保されている社会においては、「見えざる神の手」により、おのずから最低限の接触で棲み分けができてしまう。

社会としての機会の平等さえ担保されていれば、混住しようが分住しようがそれは関係ない。いずれにしろ独立した「閉じた系」になるからだ。問題なのは、社会に対して甘えている無責任な人々が、棲み分けではなく、排斥を求める場合である。つまり、これは自分達だけでバラ撒きの甘い汁を独占したいという欲求の表れなのだ。先住者の貧困層と移民との間での最下層争いが激しくなると、「蜘蛛の糸」よろしく、こういう既得権争いが激しくなるのである。

日本には「判官贔屓」というものがあるが、これも今では「甘え・無責任」の表れとなっている。勝った者が奢ることなく、敗者に対しても愛の手を差し伸べるのは重要なことである。日本はそもそも一神教ではないので、戦には負けた相手でも皆殺しにするのではなく、逆に自らの配下に組み込んで生かすことも多かった。それはあくまでも「勝った側」がやることである。

現状では「判官贔屓」は、敗者が負け犬に感情移入するものとなっている。「弱者」を自称する「敗者」の側が、強者・勝者から温情をかけられることを期待して、負け犬に感情移入する。昨今の判官贔屓は、こちらの傾向が強くなっている。しかし、これでは全く無意味である。負け犬が勝者におもねってバラ撒きに預かろうとするのは、まだ意地を張っている「負け犬の遠吠え」以下である。

しかし考えてみれば、サヨクや革新、リベラル、労働組合といった人達の発想は全部これである。自分達は生産も社会的貢献も何もしないで、バラ撒きの分け前だけを分捕ろうとする。貧しい社会においては、限られた果実を少しでも多くの人に分配することは、結果的に「エサの取り合い」に費やす無駄なエネルギーを減らし、それを生産的な作業に振り向けることができる分、それなりに意味があったといえる。

しかし経済が発展し、ほとんどの人が最低限の食べるものについては心配をしなくていい社会が到来すると、このような悪平等指向は「もっとよこせ」「もっとバラ撒け」という無い物ねだりになり、他人の足を引っ張ることしか考えず、逆の意味で「エサの取り合い」の元凶となってしまっている。思想信条の自由があるので、まあ勝手にやっている分には構わないが、自分が「甘え・無責任」な人間だって天下に宣言していることなんだけどね。


(17/05/26)

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