Gallery of the Week-Jan.01●

(2001/01/26)



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-輝く細胞- 内倉ひとみ展
プラスマイナスギャラリー 銀座

一月も四週になったけど、今週もなんかこれといったのがない。それどころか、正月企画が終わって、本当に端境期になってしまった。しょうがないので手近なネタ、と思ったけれどもこれもない。しょうがないので、今週も飛び込み。全く予断ナシ。通りがかりのTEPCO銀座館へ。で、内倉ひとみの「光」をつかったオブジェの展覧会である。
鏡やレンズを組み込んだオブジェを得意としている。作品そのもののカタチもさることながら、その鏡が反射したり、レンズが投影したりする光と陰が繰り広げる空間的拡がりを見せる。基本的にシンプルな作品だが、そこがいい印象だ。なんというか、悪気というか、邪念が感じられないのだ。
現代アートのオブジェというと、何がしかメッセージだの、プロテストだの、本来の美や表現とは位相の異なる要素が入っていることが多い。別に作品に何を込めようと自由なのだが、こういう「作品の中に余計な説明が入っている」ような作品は、そのときはいいものの、寿命が短い。
その点彼女の作品は、純粋に「きれい」をカタチにしている。なんか、こういうのってあるようでない。考えているようで、考えてない(邪念という意味で)。そのへんが魅力なんだろう。でもその分、何かコメントしようとしてもしにくい、ということにもなるのだが。「きれい」というのは、コメントにならないしね。



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ハインリッヒ・フォーゲラー展 -忘れられた愛と春の画家-
東京ステーション・ギャラリー 丸の内

正月気分もぬけ、一月も第三週になったが、展覧会関係は相変わらず冬枯れ状態のままである。来週あたりからは、いろいろ新企画も出てくるようだが、何としても今年は曜日の巡りが悪い。そんなときは、思いっきり関心が薄かったり、知識がないジャンルのものに敢えて挑戦するのが面白い。ということで、ステーション・ギャラリーの、ハインリッヒ・フォーゲラー展である。単に無知をさらけ出すだけだが、彼については実は全く知らない。だからこそ、何の予断もない。
ドイツのアール・ヌーボー、ユーゲントシュティールというらしいが、その代表的な作家で、絵画、版画のみならず、書籍の装丁や工芸、インテリア・建築のデザインまで手がけた総合的なデザイナーとして活躍したという。のみならず、のちに作風を全く変え、ソビエト社会主義リアリズムの画家として生涯をおわった波乱にみちた生ききかたには、ある種前世紀末から今世紀はじめの激動期らしさを感じ、興味をひかれる。
ユーゲントシュティール期の作品そのものは、日本のデザイン界ではけっこうおなじみのものだ。実際、雑誌白樺のデザインを手がけたり、リアルタイムで大正期の日本で版画展が開かれたりと、その影響は直接的なものがあったらしい。今でも、メルヘン的なタッチのイラストには、彼の画風の影響が見られるし、大正デモクラシーみたいなイメージのデザインには、彼のデザインモチーフの直接の影響が見られる。
もともとこの手の図案は、ジャポニズムの影響が大きいので、モダニズム建築と並んで、日本に持ち込んでも違和感が少ないのだろう。個人的には、平面作品よりも、食器などの工芸デザインや、インテリアデザインのほうに興味をひかれた。それ以上に印象に残ったのは、彼の経歴を示す年表にあったひとこと。曰く「彼は、構造計算ができないので、専門の技術者を工房に雇い入れた上で、建築デザインの分野でも活躍した」と。これだよね、これ。建築家は、理屈の部分よりデザインよ。妙に納得してしまうのでありました。



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法隆寺展 -聖徳太子1380年御遠忌記念-
日本橋高島屋 日本橋

年末進行、それも変則的な日程だったため、結果二週間飛んでしまったが、今年の展覧会めぐりは、新年第二週からのスタートである。しかし、新年そうそうは、毎年ネタに困る。大型の展覧会は年越しでやっているし、新たにスタートするものは「新年らしい」企画展が多くてピンとこないからだ。というわけで、高島屋の法隆寺展からのスタートである。聖徳太子マニアとしては、規模の大小に関わらず、関連するものはいちおう見ておきたいこともあるし。
そもそも法隆寺の出張開帳は、江戸時代から行われており、それ自体長い歴史がある。日本におけるイベントの元祖、ということもできるだろう。もちろん、百貨店企画なので秘宝が出てくるわけではないが、かえって小粒で面白いものが出てくることもある。江戸時代の作品を中心に、平安、鎌倉、室町がまじるという感じでセレクトされているので、けっこう見たことのないものがでている。
とはいうものの、流石に法隆寺。その財宝のコレクションからすれば氷山の一角のような選定でも、それなりに見て楽しめる。まさに1300年以上の歴史、恐るべしである。特に時代とともに、浄土信仰や密教といった、それぞれの時代にトレンディーな信仰の影響や、江戸時代の到来とともに、庶民の聖徳太子信仰がブームになる影響がうかがえるところは、普段なかなか気付かないだけに、面白い。
しかし、意外といってはなんだが、思わぬ興味をひかれるのが、近代日本の日本画や彫刻等のアーティストの作品のコレクションだ。どれも法隆寺、仏教に縁のある作品になっているのだが、それだけに十八番のテーマや作風と一味違っていておもしろい。名を連ねている作家も、そうそうたるメンバーで、これだけでもけっこうなお宝である。新春企画にはふさわしいかもしれない。こういうところも、やはり聖徳太子の功徳のなせるワザであろうか。なんとも懐の広さかな。



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