Gallery of the Week-Jan.04●

(2004/02/20)



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明治・大正・昭和の色彩展 〜タイムトリップ TOKYO COLOR〜
DIC COLOR SQUARE 日本橋

我々の仕事でもなくてはならない、DICカラーガイドで日本の色彩を仕切る(笑)大日本インキの本社1FにあるDIC COLOR SQUARE。実は行ったことがなかったのだが、そこで行われている、明治・大正・昭和の色彩展である。普段は余り縁がないのだが、先週からなにかと八重洲口周辺に行くことが多く、毒を喰らわば皿まで、とばかりに、このネタも八重洲周辺と相成った次第。会場自体は、ビルの一階の一角を区切ってギャラリーにした、コンパクトな空間である。
今回の企画展は、昨年に行った(ということだが、ぼくは見ていないので詳細はわからない)「大江戸の色彩展」の続編という形で、明治・大正・昭和という、近代以降の日本の生活・文化の中での色彩の変化を、展示・構成したモノ。基本的には、イラスト化した各時代の流行ファッションを中心に、街の景観や、乗り物、インテリア、広告、パッケージ、グラフィックデザイン等の写真や実物で構成している。
パッとみて面白いのが、明治時代が、我々が先入観で思う以上にカラフルなことだろう。写真はモノクロ、当時の実物資料は既に退色、変色し色あせているだけに、元の色というのはイメージしにくい。しかし、それが色彩も明度も幅広いバリエーションを持っていたことがわかり、興味を惹かれる。おまけにその色調が、その後のモノと比べてみると、明らかに違う系列になっている。
多分、20世紀以降の色調が欧米のものをベースにしているのに対し、明治時代においては、江戸時代から続く、伝統的なカラフルさが残っていたということなのだろう。奈良の仏像達も、創建当時は、タイの寺院よろしく、金ピカか極彩色だったという。それと同じで、明治の街は、今からは想像できないような色とりどりのあざやかさがあった、などというのは、考えるだけでも面白いではないか。



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伊藤桂司 谷口広樹 ヒロ杉山
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

今週は、休日こそないものの、出張があったり、なぜか時間を取られる予定が多い。となると、自ずと近場ということになる。銀座の南側にはギャラリーが多く、こういうときには便利になったモンだ。そんな中でも、昔から忙しい時の強い味方だったギンザ・グラフィック・ギャラリーに、昼休みを利用して向かう。
今回の企画展は、イラストレーター、デザイナー、アートディレクターと幅広く活躍する伊藤桂司氏、谷口広樹氏 ヒロ杉山氏の3氏による絵画展。大型キャンバス、油彩と、gggも画廊に変身したかの如く。さながら異種格闘技戦である。それにしても、イマジネーションをそのままヴィジュアライズできるヒトっていいな。つくづく嫉妬しちゃう。
少なくとも、心象の中のイマジネーションの豊富さや緻密さについては、ぼくは人後に落ちない自信があるのだが、いかんせん、それをそのままヴィジュアライズできない。イメージが極めて詳細で具体的なところまであるだけに、これが悔しいんだ。もちろん、たとえば文章で表すとか、ヴィジュアルでも設計図におとす、というコトならできる。でも、折角「見えている」モノをカタチにできないというのは、なかなかツラいモンです。まあ、それはそれで仕方ないんだけどね(笑)。



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映画資料で見る蒲田時代の小津安二郎と清水宏
東京国立近代美術館フィルムセンター 京橋

東京国立近代美術館がリニューアルオープンしてから、フィルムセンターの展示室には久しく行っていなかったのだが、天気の良さにさそわれて、中央通りを散歩したついでにちょっと寄ってみる。フィルムセンター専業になってから、映画に関する常設展のコーナーが作られていてビックリ。
日本映画の一世紀余りの歴史を、五つのコーナーに分けて展示している。コンパクトな展示だが、見せるモノが映像そのものなので、じっくり見ていくとなかなか楽しめる。展示室も限られた面積であり、日本映画が置かれていた社会的状況も考慮すれば、ロンドンの映像博物館の様なモノは望むべくもないのは分かっているが、それなりに充実した展示といえる。
さて企画展のほうは、今年がちょうど生誕100年にあたる往年の名監督、小津安二郎と清水宏が、そのキャリアの初期を過ごした、松竹蒲田撮影所時代の作品を網羅する展覧会である。巨匠といえども、若手の時代はある。その時代の作品を、スチルやパンフレット等により振り返り、紹介する企画である。
当然、B級のブロックブッキングで消費されてゆく娯楽映画が中心になっているワケで、ビッグネームになってからの作品より、妙に敷居が低くて親しみが持てる。また、生涯の監督本数に占める割合からして、圧倒的にこの時期のモノのほうが多い。それにしても、散逸してしまった作品の何とも多いこと。これが、この時代の娯楽映画の実態を図らずも示している。



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亀山法皇700年御忌記念特別展 南禅寺
東京国立博物館 上野

来年2005年が、亀山法皇が亡くなって700年にあたることから開かれた、亀山法皇が創立した南禅寺の宝物展。いわゆる「出開帳」シリーズであり、平成の出開帳のメッカ、東博の平成館で行われた。南禅寺といえば、五山の上に位する、禅宗の寺院の中でも最も格が高い寺院であり、歴史にも事欠かない。それだけに、多くの寺宝をかかえている。
そのワリには、これもその格の高さゆえか、それらの逸品を意外と目にする機会は少ない。今回の展覧会では、多くの国宝、重文を含むそれらの文化財を、一堂に集めて公開している。これはなかなかないチャンスであるとともに、実際に目にしたときの迫力も相当なものがある。
宗教関連の寺宝も充実しているが、水墨画等文化面でもその中心的役割を果たした寺であり、また時の権力者からの信仰を集めた分、寄進された美術品も多く、禅宗、という以上に、南北朝から桃山時代にかけての名品も多く見ることができる。とにかく、いままで余り見たことがないモノが実際に見れるというのが魅力である。
しかし、南禅寺といえば湯豆腐である。特に寒い季節、南禅寺を拝観してから、門前の湯豆腐屋で暖かい湯豆腐をいただくありがたみは、実に深いものがある。さらに暖房の効いた部屋の中で、ビールとかもなかなかオツである。とはいうものの、南禅寺の境内の迫力というか、神妙さというか、敬虔浴してしまったあとだと、なぜかちょっとうしろめたい気もしてしまうのも確かである。



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