Gallery of the Week-Sep.04●

(2004/12/24)



12/5w
どこへ向かうのか? 天人合一
ガーディアン・ガーデン 銀座

韓国・台湾など、近隣アジア諸国の若手写真家の写真展を開催し、その紹介に積極的なガーディアン・ガーデンが、今回は中国の30代の写真家に焦点を合わせて開催する企画展。会期を前後二期に分け、前期は晋永権氏と顔長江氏、後期は王寧徳氏と丘氏の作品を展示する。
中国の写真界というと、開放改革の流れを受け、80年代以降、ドキュメンタリー・リアリズム的な「紀実写真」が主流となっていた。日本の60年代とかも、確かにそういう傾向はあったので、高度成長期には写真の持つそういう面が受ける要素があるのかもしれない。しかし21世紀に入ると、他のアート同様、より表現に重点を置いた作風が流行しだし、今変化の時期にあるといわれている。
今回の4人の作品は、そういう変化の時期を代表する作品という。晋氏、顔氏、王氏の作品は、その被写体自体が中国らしいモチーフであることもあり、写真でも中国的な作風というのがあることを感じさせる。特に6×6判で撮影したものは、70年代に日本製絶滅の後をうけて、中国製の二眼レフが一部でブームになったこともあり、なんとも中国っぽさを感じさせる。
その一方で、丘氏の作品は日本の60年代の一部の写真家にも通じるような、無国籍な雰囲気を漂わせている。アレだけ大きな中国ゆえ、この4人で全てが語れるワケもなく、逆にもっといろいろな作品を見てみたくなる機会となった。



12/4w
辰巳四郎 「音のない叫び-70年代イラストレーション展」
クリエイションギャラリーG8 銀座

一目みればスグにそれとわかる、強烈な個性を持ったイラストレーション。それ以上に強烈な個性を持った、その作者である怪人辰巳四郎氏。昨年おしくも逝去した辰巳氏の個性あふれる生涯を、その代表的な作品からたどる回顧展である。一枚のイラストだけでも、息苦しくなるほどの迫力と存在感があるだけに、それが壁一面にあふれる会場は、まさに「辰巳ワールド」。ギャラリーが、あたかも異界への入口になったかのようである。
氏自身は、そのあふれる才能をもてあますことなく、イラストレーションのみならず、グラフィックデザインやアートディレクションでも活躍した。しかし、世の中的には、「イラストレーター」という存在感が強い。それは、彼の業績というより、めざましく登場し、活躍した60年代から70年代というのが、なによりイラストレーターの時代だったからに他ならない。その証拠に、彼の作品は、けっしてイラストという枠の中にとどまるものではない。
それはなにより、高度成長化と大衆社会化の進展の中で失われてしまった「絵画表現」そのものであることに気づかされる。仕事として引き受けたモノは確かに「イラスト」かも知れないが、使用されるグラフィックデザインから離れ、一つの「作品」として鑑賞するとき、それは「絵画」である。その意味では、辰巳氏は「最後の画家」と呼ぶのがふさわしい巨匠なのだろう。



12/3w
<山名文夫の世界 曲線のモダンガール>展
ハウス オブ シセイドー 銀座
もうひとりの山名文夫 1920-70年代
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

昭和の日本を代表するグラフィックデザイナーであり、イラストレーターである、山名文夫氏。その活躍の跡をたどる回顧展が、マルチ展で企画された。山名氏の活躍というと、なんといっても3度に渡って所属した資生堂での業績が有名だが、ハウス オブ シセイドーの「<山名文夫の世界 曲線のモダンガール>展」が、その資生堂での業績、ギンザ・グラフィック・ギャラリーの「もうひとりの山名文夫 1920-70年代」が、それ以外の場での業績、という複眼的な展示になっている。
「<山名文夫の世界 曲線のモダンガール>展」では、山名氏のライフワークともいえる、資生堂の広告とパッケージデザイン、そして絵画として描かれた「女性像」を軸に展示する。1930年代から1960年代まで、一貫したコンセプトとデザインを持ちつづけた、パッケージや広告を目前にすると、日本の企業には珍しく、欧米高級ブランド的なマーケティングのあり方を、すでにこの時代から持っていたことがよくわかる。それとともに、そういう企業と同様、パッケージデザインや広告がコア・コンピタンスだったことにも、あらためて気付かさせられる。
「もうひとりの山名文夫 1920-70年代」では、イラスト中心だった1920年代、グラフィック・デザインに開眼した日本工房時代、デザイン理論や教育にも活躍の場を拡げた戦時中の報道技術研究会から、戦後の多摩美教授、日宣美の時代、というように、新しいドメインに挑んでは、たちまちにしてそれを自らのものにしていったプロセスを、その作品から見ることができる。どの領域でも、数年にして、オリジナリティーあふれる自分のスタイルを確立してしまう軌跡をまざまざと見せつけてくれる。
最近、ネットワークに接続されたパソコンの未利用リソースを活用して、バーチャルなスーパーコンピュータとして活用する手法がよく利用されている。銀座地区では、リクルートの持っている2つのギャラリーをリンクして、より広い場としてマルチ展開することは多かったが、今回の試みは、それをさらに拡大したようなものであり、なかなか成功していると思う。銀座にはギャラリーは多いので、もっとそれをリンクし、街全体をバーチャルな美術館にしてしまうイベントがあってもいい、と思わせてくれる。



12/2w
life/art '04
資生堂ギャラリー 銀座

2001年の資生堂ギャラリーの再オープンにあわせてスタートした、今村源、金沢健一、須田悦弘、田中信行、中村政人の5人による共同展である、life/art。今回は、5カ年計画の4回目である。年一回という設定だが、前回がイレギュラーなタイミングだったので、今年は2度目の登場となる。今回のテーマは、「私」である。
毎回アートのボーダラインを問う作品が登場しているだけに、今度の攻め口はどこなのか、と期待させる。今回は、今までのようにあるテーマを決め、各メンバーがそれにそった作品を作るというスタイルではなく、今村氏がリーダーとなり、他のメンバーとコラボレートする4つのプロジェクトを通して、作品を作るというスタイルを取っている。
結果としては、今までとは違う「極めてわかりやすい」作品と、今までを凌ぐ「極めてわかりにくい」作品に分化している。まあ、テーマが「私」ということなので、それがパーソナルなモノがそのまま出た姿ということなのだろう。多少脳内での展開に走りすぎたキライがないでもないが。そういえば、バブルの頃に、「ウマいブリを喰いたい」と思い立って、友人と氷見まで食べに行ったっけ。そんなことを思い出してしまった。



12/1w
ザ・ビートルズ その時代と色彩展
DICカラースクエア 八重洲

11月29日のジョージ・ハリスン、12月8日のジョン・レノンと、メンバーの命日の続く11月末から12月始めを中心とした年末は、最近ではすっかり「ビートルズ・ウィーク」と化し、ビートルズ関係の企画が花盛りだ。ビートルズに関るアルバムやヴィデオ等も、年末商戦がらみでこの時期に出ることが多く、今年はキャピトル盤のボックスセットなんてのも登場していた。さて、この企画展も、その流れに乗って登場。ビートルズに代表される「サイケデリックな時代」を、「色」という視点から振り返ってみようというモノ。
限られたスペースなので、そう多くを望めないが、目玉は当時の社会現象とビートルズの活動を、「日」単位で対比させた、年表ならぬ日表と、当時の「サイケデリック」な空間の再現。その間をぬって、いろいろビートルズゆかりの品々が出展されている。よく見ると、国内のコレクターが持っているモノなのか、そこそこ貴重な出展物もあったりする。
しかし、一番受けてしまったのは、ビートルズのアルバムの解説コーナーの中国語の解説。そもそも、アルバムタイトルの中国語タイトルからして、最高にウケてしまった。もちろん、かつてのタモリ氏の芸「四ヶ国語麻雀」じゃなく、マジな中国語なんだが、ある程度中国語がわかるヒトなら、楽しめることうけあい。ネタばらしはしないけど、これ目当てに見に行っても、楽しめるヒトは充分楽しめます。



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