Gallery of the Week-Mar.05●

(2005/05/27)



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万物の肖像 グイド・モカフィコ写真展
男の顔 男性化粧品の軌跡展
HOUSE OF SHISEIDO 銀座

HOUSE OF SHISEIDOでは、一階と二階で、二つの展覧会を同時開催。一階は、資生堂の男性化粧品「SHISEIDO MEN」の広告写真を担当したイタリアの写真家、グイド・モカフィコの写真展。ヨーロッパを中心に、高級ブランドのファッション、コスメ等の広告写真家として知られているが、個展のテーマは「地球の創造物」。
ミクロなプランクトンから、天体写真まで、あらゆる自然物に独特のトーンで迫る。コントラストが強烈な、オプチカル処理をかけたアニメの画面のような鮮烈さを持つ被写体を選び、その輝度を活かした絵づくりは独創的で、プリントという反射光でありながら、ライティングの工夫も加え、あたかも透過光のような強烈な効果を生んでいる。
一方二階では、男性化粧品というつながりか、1967年のMG5誕生以来の資生堂男性化粧品のあゆみを、広告作品に見るコミュニケーションのあり方から見てゆく企画展。40年近い流れになるが、基本的にその全てをリアルタイムで見ているだけに、何とも興味深い。前半の10数年はまさにターゲットユーザーとしての視点だが、それ以降の20数年は、業界の内側からという視点であり、いろいろな思いがつのる。
面白かったのは、まさにぼくにとって、その「外側と内側」という視点の転換が起こった80年前後というのが、丁度男性化粧品そのものにとっても大きな転換期であったということ。それ以前は、特にオシャレとかナルシストとか格好つけるヤツとか、基本的にナローターゲットだったものが、それ以降、一気に大衆商品化しマジョリティーターゲットに変わっている。この辺にも、またもや世代論的な宿命を感じてしまった(笑)。



5/3w
蒸気機関車 -動輪が刻んだ時代-
旧新橋停車場「鉄道歴史展示室」 汐留

今週はなんとも時間がないので、近場でごまかそう。と思っても、こういうときに限って、いいネタがない。連休明けなので、仕方ないといえば仕方ないのだが。ということで、おとなりの「鉄道歴史展示室」でお茶を濁す。それにしても「蒸気機関車」とは、あまりにベタなタイトル。場所が狭いからこそぶち上げられるんであって、交博とかじゃそうはいかない。いったい何をやるのかと昼休みに見に行く。
基本的には、鉄道史を飾る有名蒸気機関車を、模型と資料で振り返るという企画である。それにしても模型は16番で、安達の制式機と珊瑚の古典機が中心。一部、天賞堂とカツミでフォローしている。良くも悪くも、学園祭の鉄研の展示のような感じ(笑)。機関車のイラストが、「陸蒸気からひかりまで」からの引用なのが、また泣かせる。しかし、(c)は片野さんの表示。機芸じゃないってことは、当時も、片野さんは「御三家」の方々とは違って、社員ではなかったのね。
そんな中でのめっけモノは、交通博物館所蔵の、古典蒸気の銘板である。万世橋がオープンたころは、まだ現役で残っていた機種のが多いのだが、それでも900型や8550型のメーカーズプレートとなると、なかなか感じるものがある。そんな中でも恐れ入ったのが、旧鉄道博物館に保存予定で保管中に、関東大震災で焼失した5000型のメーカーズプレート。こんなものが現存していたとは、全く知らなかったし、写真等でも見たことがなかった。これは貴重な逸品であり、これだけを見に行くのでも決して損はない。そもそも入場無料だし(笑)。



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和田誠のグラフィックデザイン
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

絵から文章から映像から、多彩なマルチクリエイターとして活躍する、業界人らしい業界人である和田誠氏。和田氏の原点は、60年代から活動している「イラストレーター」と思われがちだが、実は、その出発点はライトパブリシティーでの、デザイナー・アートディレクターとしての活動にある。この企画展は、和田誠氏の原点ともいえるデザイナーとしての活躍に焦点を当てて、その活躍を振り返るもの。
和田氏といえば、なんといっても一目でそれとわかる、個性あふれるイラストレーションとタイポグラフィーが思い出される。60年代から活躍する大御所が皆そうであるように、このスタイルはワン・アンド・オンリーで、初期からしっかりと輝きをはなっている。もちろん、そういう作品も多数出品されている。
しかし面白いのは、そういう流儀とは全く違う作品も、サラリとコナシて決めている点だろう。他人のイラストや写真を使い、クライアントのニーズに合わせたグラフィックデザインも、全くルックアンドフィールは違うのだが、充分個性を感じさせ作品になっているところを見ると、なるほど原点がグラフィックデザインにあった、ということを実感する。いろいろな意味で、見ていて発見したり、勉強になったりする点が多い。



5/1w
新・シルクロード展
江戸東京博物館 両国

なにかと話題が多いNHKのイベント事業。その一環として、NHK放送開始80周年記念の番組タイアップで開催されてるイベントである。番組自体が、例によって中国との共同製作によるモノなので、イベントのほうもそれに合わせて、中国国内のシルクロードにフォーカスした構成となっている。
より具体的には、新疆ウイグル自治区と陝西省の博物館の協力により、両地域から出土された文物による展示となっている。「西域」ならいざ知らず、これで「シルクロード」といい切ってしまっていいのか、という疑問はどうしてもつきまとう。
そういうイベントそのものの氏素性はさておき、出品された展示物に関しては、国外初公開のモノや、普段あまり目にしないモノも多く、シルクロードマニアならずとも楽しめる。コンパクトではあるが、この地域の文化の多元性を充分感じさせるものがある。
しかし中国の博物館というのは、所蔵品を貸し出していても、そのまま「貸し出し中」として空っぽのショーケースをそのまま見せていることが多かった。実際、あるとき、東京で展示を見てから、まさに陝西省の歴史博物館にいったら、本来それが置かれていたところがそのまま「空き地」になっているのを見たことがある。はたして、今回もそうなっているのだろうか(笑)。気になるところではある。



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