Gallery of the Week-Jan.06●

(2006/02/24)



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life/art '05 Part4
資生堂ギャラリー 銀座

「リレー個展」として開かれている、5年目のlife/art。part2こそ見逃してしまったものの、今まで毎年見ていた以上、あとは一通り押えておきたいところ。今回は第四弾として、中村政人氏の登場だ。中村氏といえば、life/art '02で「ホンモノの家」という掟破りを出してしまっただけに、今回はどんな攻め口でトリを飾るのか、注目されるところ。
今回の作品は、そういう意味では、見事に期待に応えたモノ。なんと、「展示準備のプロセス自体を、パフォーマンス作品として見せる」という、とんでもないインスタレーションである。作品製作のプロセスを、デパ地下の実演販売よろしく、展覧会場で生で見せるというのはよくあるが、創作過程ではなく、まさに会場装飾の過程を作品化しているのだ。
もちろん、作者自身も会場で製作活動を行うのだが、それも含めて「工事中感」が会場中に満ちあふれている。これまた、コロンブスの卵というか、一度目はものすごくインパクトがあるが、一度使ったら二度と使えない「消える魔球」的なワザだ。ある意味、資生堂ギャラリーという空間の特性を知りつくしているヒトなんだなあ、と改めて納得。



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第26回 グラフィックアート「ひとつぼ展」
ガーディアン・ガーデン 銀座

またまたやってきた、楽しみな「ひとつぼ展」。今回はグラフィックの第26回、ということだが、会場に入るなり、なんともビックリ。なんか、会場の雰囲気が違う。「ひとつぼ展」じゃないみたい。とにかく、選ばれている作品の作風が、今までのものとは、かなりトーンが違うのだ。
今までは、どちらかというと、その年その年の流れを反映したような、エッジの利いた作品が目立ったのだが、今年の作品は、基本が極めてオーソドックス。おまけに、技巧やギミックを廃した、ミニマルな感じさえするモノが多い。もちろん、その素材やモチーフ、テーマなどをよく見れば、今を反映していることは間違いない。しかし、どの作品をとっても、どの時代においたとしても、それなりにフィットしてしまうような、美術品としてのジェネリックさを感じさせる。
そういう意味では、紛れもなく「ストロングスタイル」だし、正攻法で行きながら、決して根負け・息切れせずに、ひょうひょうと自分のペースを保てるというのは、なかなかのものだ。一人を除いて、80年前後の世代が揃った感があるが、オタク世代というか、廻りを気にせず自分に没入できる世代というのは、これはこれで新しい何かを生み出す期待感さえある。



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life/art '05 Part3
資生堂ギャラリー 銀座

5年目のlife/artは、最終年ということで、共同展というカタチではなく、「リレー個展」というスタイルで、5人が一人づつ個展を開くスタイルで行われている。今回は、その3段目。金沢健一氏の登場である。実は全部見るつもりでいたのだが、うっかり会期を勘違いして、Part2の田中信幸氏の回は見落としてしまった。ということで、いきなりPart3で申し訳ない。
今回は、原点に戻った感じで、鉄板を切り出したオブジェ楽器、「音のかけら」をインスタレーション的に床一面に拡げるとともに、「音のかけら」を切り出した残りの「音のぬけがら」を展示、溶けた鉄を題材にしたものなど、2つの映像作品を展開する。
今年の各氏の作品に共通しているのだが、今回の作品は、特にミニマルで空間を活かしたインスタレーションであり、なにか石庭のような侘び寂びさえ感じさせるものがある。そう思うと、資生堂ギャラリーの空間も、なにか「巨人の茶室」みたいな感じに見えてくるから面白い。



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モダニズムの先駆者 生誕100年 前川國男建築展
東京ステーションギャラリー 丸の内

ル・コルビジェの下で学び、アントニン・レイモンドの下で建築家としてのキャリアを磨いた、日本の近代建築の巨匠前川國男氏。彼の生涯は、日露戦争で、日本が大国としての存在感を持ち始めてから、バブル経済でそれが極限にまで達する時期とほぼクロスする。その生誕100年を記念して開かれる回顧展である。
モダニズムに至る20世紀アートの流れの中には、その源流としてジャポニズムが深く影響している。浮世絵や陶磁器から始まった日本ブームは、西欧にはなかった「合理的な大衆文化」の本質にまで行き着き、ミニマルで合理性を重んじるモダニズムの表現に結実する。その中でも、前川氏の師たるル・コルビジェは、畳や襖、そしてそれを支える1間×半間の基本構成単位という「日本建築的合理性」をモダニズム建築の基本構成の中に取り入れた。ここまでくれば、日本への「モダニズムの凱旋」はあと一歩である。そしてそれを成し遂げたのが、前川國男氏だったのだ。
自らの建築事務所を旗揚げしたのが日中戦争期ということもあり、当初の作品には小型の木造建築が多い。これが、創発的に「出戻ってきたモダニズム」を、あたかも「ずっと日本で熟成された」ように、極めて自然なカタチで日本に定着させた。そして戦後は、公共建築物を中心に、日本ならではの巨大空間とモダニズムの幸せな融合を実現させる。ここに、天平期、平安期の巨大寺院から、近代の建築まで、日本の建築史が一つの流れになった。まさに、そのミッシング・リンクを、身をもってつないだのが前川氏であることには、深い感銘を受ける。
東京ステーションギャラリーは、もともとの東京駅の駅舎を利用しているため、基本的に外壁には、ステーションホテルなどと同様窓が空いている。通常は、館内の展示環境をキープするため、シャッターが閉っているが、今回は、新丸ビルの工事により、ちょうど窓から前川氏の代表作の一つ「東京海上ビル」が望めるコトを利用し、一ヶ所だけ窓が開いていた。このアイディアもオツだが、窓の開いているステーションギャラリーというのも、なかなか不思議な雰囲気がある。奇しくも、駅舎の復元工事のため、現在のギャラリーでの展覧会は、今回が最後という。これを見れたことも、充分価値があるかも。



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