Gallery of the Week-Apr.07●

(2007/04/27)



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第28回 グラフィックアート「ひとつぼ展」
ガーディアン・ガーデン 銀座

例によって、「ひとつぼ展」。今回は、グラフィックアートのほうである。毎回、集まる作品の傾向もあるのだろうが、審査員の選び方も「今年の傾向」を意識した選出なので、今回はどんなトレンドで来るのかが、なかなか楽しみである。そういう意味では、今回はかなり顕著な傾向が見てとれる。
画風そのものは、ミニマルっぽいものから、パラノイア的なもの、古典的なものまで、けっこう多種多様だが、どれも極めて正攻法のオーソドックスな手法により作成されている。銅版画とか、キャンパスに絵の具とかいったマテリアルが、堂々と登場している。これはグラフィックアート「ひとつぼ展」としては、けっこう特筆できることだろう。
それだけに、各作品とも「絵画作品」という枠組みをはめてとらえても、充分評価できる「粒ぞろい」である。確かに、技法や素材の物珍しさで勝負する戦術も、そろそろ限界がきて、何を出しても刺激がなくなってしまった感があるだけに、ある程度王道への王政復古があるか、と感じてはいたが、こういきなりこられると、やはり驚くものがある。これがホントに「時代の風」なら、けっして悪いことではないのだが。



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椿会展2007 -Trans-Figurative-
資生堂ギャラリー 銀座

現在の資生堂ギャラリーの完成をうけて、2001年から2005年にかけて活動した、第5次椿会。一年のインターバルをおいて、あらたに第6次椿会がスタートする。今次は、伊庭靖子氏、塩田千春氏、祐成政徳氏、袴田京太朗氏、丸山直文氏、やなぎみわ氏の6人の中堅アーティストがメンバーになり、3年間にわたって活動を行う予定である。
毎年メンバー全員そろって発表するのではなく、6名中4名がチームとなり、テーマや形式を含め、企画展を構成するスタイルをとることで、「常に緊張感と新鮮味あふれる、グループショー」を目指すという。3年間を通してのコンセプトとして「Trans-Figurative」というモノがあげられているが、これは、コラボレーションを通して枠を越える、という意味だそうだ。
第一回目の今回は、メンバーとなったのは以下の4人。不思議な浮遊感を持ちつつ、スーパーリアリズムな質感を持つ絵画作品の、伊庭靖子氏。構造物のような大型立体作品と銅版画の、祐成政徳氏。「色層構成」ともいえる、独自の彫刻を組み合わせたインスタレーション作品の、袴田京太朗氏。あり得るようでありえない女性の世界を、写真とコンピュータで描いた作品の、やなぎみわ氏。
ひとまず今回のところは、まず第一回らしく、比較的正統的でオーソドックスな枠組みの中で、それぞれのアーティストの持つオリジナリティーをにじませるという、いわばストロングスタイルのようなマッチメイクになっている。これが今後もガチンコで行くのか。それとも、反則ワザ連発の大乱戦になるのか。スタートとしては、なかなか来たいを持たせる展開ではある。



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日本を祝う サントリー美術館開館記念展I
サントリー美術館 六本木

鳴り物入りでオープンし、折りから地価上昇気運を受けて、バブル再来の象徴的存在となった、東京ミッドタウン。その中の文化施設として、赤坂の自社オフィス内にあったサントリー美術館が、移転・開館した。そのこけら落としとして、館蔵品により構成した展覧会である。
サントリー美術館は、屏風絵等の日本画のみならず、陶磁器、蒔絵、衣装など、中世以降の工芸品も多く収蔵する、博物館的なコレクションに特色がある。今回の展示も大型の屏風を中心に、<祥><花><祭><宴><調>という祝祭にまつわる5つのキーワードに合わせ、150点の作品により構成されている。
元の施設もそうだが、「大き過ぎず、小さ過ぎず」という規模感が、日本の歴史的な美術品・工芸品を展示する舞台として、いい感じである。インテリアも、東京ミッドタウンのショッピングフロアの意匠とよくマッチしている。その一体感は、逆に、今は歴史の中の存在になってしまった、流通企業が持ち、運営していた美術館を思わせるところもある。
これで、かつての六本木の周縁部に、六本木ヒルズの森美術館、国立新美術館、サントリー美術館と、トライアングルが出来上がった。サントリー美術館は、規模こそ最小のものの、この中では、一番「美術館らしい」存在といえるだろう。それを支えているのは、やはりサントリーが非上場企業であることに尽きる。上場することだけが企業のステータスではない、ということだろうか。



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メゾン四畳半 藤森照信展
メゾンエルメス8階フォーラム 銀座

建築史家として知られ、バブル期には「路上観察」で一世を風靡しただけでなく、最近では自然の中に溶け込む建物という、独自のコンセプトで建築家としてもしても活躍する、藤森照信氏。今回の企画は、藤森氏がプロデューサーとなり、エルメスのメンバーが参加して「家」を作る、というインスタレーションである。
メゾンエルメス8階フォーラムには、このコンセプトに基づき、四畳半サイズの家というか、部屋というか、4つの作品が展示されている。観覧者は、靴を脱いで会場を廻り、自由に部屋の中へアクセスしながら、その作品を感じ取れるだけでなく、一部作品づくりへも参加できる仕掛けになっている。
コンセプチュアルな作品でもあるし、常に製作途上の姿を見せているので、なんとも捉えようのない一面を持っているのだが、やはり、これだけ大きい「作品」が複数並ぶのは、それなりにインパクトがあるし、それなりに楽しさを感じさせるものである。
ところで、「メゾンエルメスと部屋」といえば、去年行われた、西野達氏の「天上のシェリー」を思い出さずにはいられない。あれも、四畳半に近い部屋だった。それにしても、エルメスと四畳半という組合せが、妙にしっくりしているというのは、なんというアイロニーなんだろう。まさに、日本における高級ブランド商品の位置付けそのものではないか。



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