Gallery of the Week-Dec.07●

(2008/01/25)



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第2回シセイドウアートエッグ 窪田美樹展 DESHADOWED-かげとり
資生堂ギャラリー 銀座

資生堂らしい文化活動として、新進アーティストを発掘し、資生堂ギャラリーという場を使って発信する公募展、シセイドウ・アートエッグ。第2回となる今年は、357件の応募の中から、窪田美樹氏、槙原泰介氏、彦坂敏昭氏の3氏が選ばれ、1月から3月にかけて、順次個展を開くことになった。
第一弾は、モノの素材感と、加工プロセスの可視化にコダわる窪田美樹氏の、「DESHADOWED-かげとり」と題された展覧会である。作品は、既成の家具を切断、スライスし、それを素材として組み合わせたオブジェと、厚い透明ビニールシートに、透明な接着剤で描いた「絵」という、作者の追求する2つの表現スタイルによるものである。
不思議な存在感と質感を放つ作品になっているが、これ、どう見ても製作プロセスが簡単ではない。出来上がっている家具のような物体を、一定のカタチでスライスするというのは、結構なワザがいる。ビニールシートにしても、接着剤が拡がって、実際に接着力を発揮しているということは、アレだけ大きい絵を、接着剤が乾く前に描き切って、貼り合わせなくてはならない。
プラスティックを含浸させた人体標本のように、見るのは簡単だが、実は作るのが大変、というたぐいのモノである。それを、プロセスの苦労を感じさせず作品としてみせてしまう構成力こそ、実は類い希な才能というべきではないのだろか。



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アーットダ! 戸田正寿ポスターアート展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

サントリーローヤルの「ランボオ」、AERAの表紙、数々のCIディレクションなどで知られるベテラン、戸田正寿氏の世界を、80点の代表作で振り返るとともに、「ポスターデザインにおけるアートとはなにか?」を問いかける展覧会である。1Fでは、世界各都市を巡回中の「HEIAN」シリーズやレントゲンシリーズといった、ポスターの形式をとった現代アート作品を中心に展示し、BFでは、サントリーローヤルシリーズをはじめとする代表的作品を展示している。
戸田氏の作品は、見る者の目に切り込んでくる、独特の緊張感とインパクトが特徴となっている。それは、アート的なインスピレイションであると同時に、ポスターの原点としてのアイキャッチパワーともなっている。通りすぎようとしている人たちを、グイッと振り向かせてこそ、ポスターのアートワークである。
昨今広告業界では、インターネットの普及と共に、マス媒体の持つ告知力・プッシュ力が再評価されている。どんなすばらしいインタラクティブな仕掛けも、お客さんが知らなくてはアクセスしてもらえない。どんなすばらしい検索エンジンでも、キーワードを知らなくては検索できない。そして知らせる機能=告知こそ、マス媒体のもっとも得意とするところである。
この面でいえば、テレビスポットが最強なのはさておいて、二番手はOOHというのが最近では常識だ。そう、広告キャンペーンにおいては、グラフィックデザインの活躍の場は、新聞や雑誌以上にポスターになってきている。そういう時節柄もあり、アイキャッチャーとしてのデザインパワーを確認し直す場としても、貴重な経験となるだろう。



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佐藤卓ディレクション 「water」
21_21 DESIGN SIGHT 六本木

六本木ミッドタウン内に、「デザイン」をキーワードとしたインタラクションの場として作られた、新しいタイプのミュージアムである「21_21 DESIGN SIGHT」。その第2回企画展として開かれた本展は、21_21 DESIGN SIGHTの3人のディレクターの一人でもある、当代人気随一のデザイナー、佐藤卓氏のディレクションによる、「水」をテーマとしたマルチプロジェクトである。
佐藤氏と、スーパーバイザーである竹村真一氏が中心になり、文化人類学者、写真家、照明家、デザイナー、エンジニアなど、いろいろな分野で活躍する人々とチームを結成し、コラボレーションの中から作られた、「デザインによって水を示す」38の作品が展示されている。
この中には、参加型の作品も多く、「水の記憶」「水の魔法」「水の履歴」「水の惑星」「水の都市」という5つのパートに構成されている。個々の作品についていえば、単独でも充分に表現として成り立つモノから、明らかにレベルが異なるモノまでばらつきがあるが、21_21 DESIGN SIGHTの空間と合わせ、全体が一つのインスタレーションとなっていると見るべきモノなので、これは仕方ないところだろう。
佐藤氏はいろいろ縁の深い方でもあるし、21_21 DESIGN SIGHTも話題の空間で早く見ておきたかったし、ぜひ来ようと思っていた。結果的に、見れたのは会期ギリギリになってしまったのだが、実は会期の始めに一度来ているのだ。ところが、その日は休館。なんと、六本木ミッドタウン内のギャラリーは、月曜ではなく、火曜が定休日なのだ。こちら方面に来ようと思う方は、これ、アタマの中に入れておいた方がいいですよ。



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