Gallery of the Week-Jun.09●

(2008/08/28)



8/4w
第一回 写真「1 WALL」展
ガーディアン・ガーデン 銀座

ガーディアン・ガーデンを舞台に、グラフィックと写真の両部門で行われてきた公募展「ひとつぼ展」が、16年・30回を迎えたのを機会にリニューアルされた、「1 WALL」展。今年がその第一回となるが、グラフィック・写真での2部門開催というスタイルは引き継がれた。7月に行われたグラフィック「1 WALL」展に続き、写真部門の展覧会、第一回目の開催である。
今回からは、審査員の前でのポートフォリオ・プレゼンテーションを経て選ばれた、6名の作品が展示されている。グラフィックにおいては、「ひとつぼ」という限られた面上での展開から、「1 WALL」という、壁面によって規定された空間でのインスタレーションというように、表現の拡がりが見られたが、写真ではどういう変化があるのかが興味あるところ。
しかし、結果としては正反対の方向性。展示面積の絶対的な拡がりを、大画面化、あるいは、組写真のカット数の増加という方向で活かした作品によって占められている。その分、写真そのものは、極めて正攻法の表現をとっているモノが多い。それも、画面の中に対して、作者の意図性を極力薄めた作品、言い替えれば、作った表現を撮影するのではなく、そこにあるものをそのまま写し取り、それに何かを語らせるコトで作品とする、古典的ともいえる表現が主流になっている。
作者が1980年前後に生まれた、アラサー世代というコトもあるのかもしれないが、ある意味、これは意外な展開だ。個人的には、いろんな意味で、写真には作為的な意図が入っていて欲しいし、それがあるからこそアート作品ではないかと思うだけに、カッシリとしたいい作品ということは認めるが、なんかパンチが弱い。まあ、それが今の時代らしさということかもしれないが、20年後、30年後にこういうテイストの作品がどう見られるのかについては、何か微妙なものを感じる。



8/2w
ラストショウ:細谷巖アートディレクション展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

20世紀後半の日本を代表するアートディレクターである、細谷巖氏。そのコミュニケーションの世界の全容を、コンパクトにを振り返る展覧会である。1Fでは、1950年代から1990年代にかけての、代表的ポスター作品の現物を展示するとともに、BFでは、今回の展覧会のために、オリジナルのデザインと文章で作られた、氏のデザイン観、コミュニケーション観をプレゼンテーションする、グラフィック・ストーリーとでも言うべき作品が展示されている。
どの分野でも、黎明期からトップランナーだった先駆的な人々には共通しているのだが、「正攻法が芸風」という「強さ」は、何物にも代えがたい。というより、オリジネーターだからこそ、芸風が正攻法になってしまった、といった方が正しいかもしれない。少なくとも、誰もやっていなかったコトをはじめてやってしまった、はじめてやれたというコト自体、桁外れの才能の果実なのである。
後づけなら、誰でも何でもいえるし、当たり前のようにも見える。しかし、それこそ「コロンブスの卵」なのだ。誰も考えなかったし、気付かなかったコトを、カタチにすることができたからこそ、筋が通っているし、ブレないし、ストレートな強さを持っている。情報化が進み、「パクリなら機械でも出来る」ような時代になってしまったからこそ、自分が信じる道を進むことが、難しいが大切になっている。その重要さを、再認識させてくれる展示といえるだろう。



8/1w
特急"燕"とその時代
旧新橋停車場 鉄道歴史展示室 新橋

このところ、一回おきに、鉄道関連の企画展と非関連の美術系展覧会とを交互に行っている「旧新橋停車場・鉄道歴史展示室」であるが、今回は鉄道関連のテーマ。題して、「特急"燕"とその時代」。戦前の超特急「燕」が走っていた1930年代を、社会や生活を交えて、ノスタルジックな視点から振り返る企画展である。
鉄道博物館ができてからは、どういうカタチで棲み分けるのかが問題になるが、いまのところ、鉄道関係のテーマであっても、より広く歴史や社会との関りを視野に入れた展覧会を開催するのが鉄道歴史展示室、という路線になっているようだ。戦後の進駐軍史観の影響で、戦前の文化や生活については否定的な見方が主流となっていたが、実は高度成長が終わるまでは、少なくとも人々の生活というレベルでは、戦前の延長というのが実質であった。
そういう意味では、戦前の経済・文化のピークであった昭和10年代前半というのは、20世紀中盤の日本のあり方を決めた時代ということもできる。昭和30年代レトロがブームだが、まさにその高度成長で消えてしまった原形がこの時代にある。鉄道関係という視点から見ても、それなりにしっかりしているが、戦前・戦後も変わりなく一貫して走り続けていた鉄道を柱として、戦前戦後を貫く「もう一つの昭和レトロ」をあぶり出す企画ということができるだろう。



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