Gallery of the Week-Feb.10●

(2010/02/26)



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第12回亀倉雄策賞受賞記念 デザイン維新だ。浅葉克己展。
クリエイションギャラリーG8 銀座

亀倉雄策氏の業績をたたえ、設立された亀倉雄策賞。第12回である今回は、ベテラン浅葉克己氏制作した、「ミサワ デザイン2009 バウハウス」が受賞した。ミサワホームは、バブル期よりバウハウスに関連した作品をコレクションしており、1996年に1500点におよぶコレクションを収蔵した展示スペース「ミサワ バウハウス コレクション」を開設した。
今回の受賞作は、同スペースのコンセプトをグラフィカルに表現したポスターである。今回の展示は、同受賞作とともに、「卓球王国」誌に連載中の「一人ピンポン外交」シリーズをポスターとして展示し、浅葉氏の最近の作品をシリーズで見せている。
しかし、バウハウスというのは、相手が相手だけに、デザインで表現するのはなんとも難しい。バウハウスでなくてはバウハウスにならないが、バウハウスになってしまっては、デザイナーの個性が活かせない。音楽でいうと、ビートルズナンバーをカバーするようなモノだろうか。
しかし、そのあたりは自分のスタイルを持つベテラン。自分の世界の中に、バウハウスを引き込んでしまうような作風は、流石のものである。それにしても、クリエイションギャラリーG8は、前回の○△□展といい、なんかベテランの梁山泊みたいになっているなあ。まあ、「原点」が求められている時代ということだろうか。



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現代絵画の展望 12人の地平線「この頃」
旧新橋停車場 鉄道歴史展示室 新橋

1月の第2週にとりあげた、現代絵画の展望 12人の地平線「あの頃」に続き、その後期として旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で開かれてるのが、現代絵画の展望 12人の地平線「この頃」である。過去のそのアーチストが脚光を浴びはじめた時期の作品を集めた「あの頃」に対し、この2年間ぐらいの新作を集めたのが「この頃」である。
ということで、宮崎進氏、堂本尚郎氏、中村宏氏、郭徳俊氏、吉村芳生氏、イケムラレイコ氏、中村一美氏、小林正人氏、藤波理恵子氏、夏目麻麦氏、元田久治氏、山田純嗣氏の12人の近作が集められているが、各アーティストの変わらぬ世界観、時代ごとの風と、個性と時代が縦糸・横糸になり、いままでにない、立体的な楽しみ方ができる。
生活者の調査では、時系列で同じ質問を重ねたデータがあれば、バブル、金融危機など、同じ時代ならどういう年齢層にも同様に現れる「時代効果」、時代に関らず、ティーンズなど同じ年齢層に必ず現れる「年代効果」、生まれ育った時期の摺り込みが、三つ子の魂百までつきまとう「世代効果」を分離することができる。
それではないが、一人のアーティストの回顧展では見えてこない、その作品が作られた時代の影響や、その作品が作者のいくつの頃の作品かという年代の影響も、相互の比較によりくっきり見えてくるところが、実に興味深い。キュレーションの手法としては、とても可能性を感じる。欲をいえば、「あの頃」と「この頃」を同時に見比べながら見たかった(「あの頃」の作品を収めた、手持ちのパンフレットは会場で貸してくれるが)。今後に期待したい。



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shiseido art egg vol.4 曽谷朝絵展
資生堂ギャラリー 銀座

それにしても、今年に入ってから、平日はもちろん、土日に時間が取れないのがつらい。ということで、今週も地元のお手軽ネタである。ちょっと、この企画も抜本的にリニューアルする時期がきたのかも知れない。とはいえ、今週は第4回目の、shiseido art egg。2月はその第二弾として、岡本純一氏の登場である。
今回のart eggは、ギャラリー全体を作品とする、大胆なインスタレーション作品を集めているが、今回も大ネタである。作者のコンセプトは、資生堂ギャラリーの空間を「彫刻」すること。V字型の壁で、資生堂ギャラリーの大小二つの展示室を分断。対照的な二つの空間を演出し、お客さんが、その世界の中に入って行き来することで出来上がる作品としている。て体感できる仕組みをつくります。
コンセプトとしてはすばらしいし、「コロンブスの卵」的な驚きと愉快さも併せ持っている発想だ。が、1/5サイズぐらいの模型ならいざしらず、実際に中でヒトが動く大きさにするとなると、もうヒト工夫が必要という気もする。せめて、小展示室のほうには屋根というか天井というか、「フタ」をして欲しかった気がする。この大きさだと、壁ではなく、塀になってしまい、床は分断できても、空間が分断された気分にはなりにくいではないか。



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The Second Stage at GG #28 永沼敦子展「目くばせ」
ガーディアン・ガーデン 銀座

1992年から始まり、昨年30回で終了した公募展『ひとつぼ展』。「The Second Stage at GG」は、これまでの『ひとつぼ展』入選者計566名の中からは、各界で活躍をするクリエイターを、ふたたびガーディアン・ガーデンの場に招いて紹介する展覧会である。今回は、2002年第19回写真『ひとつぼ展』に「ハエの狙い目」で入選した、永沼敦子氏の個展である。
この数年は、自然界をテーマにした作品を発表しており、特に、009年2月に活動の拠点を郷里の鹿児島に移してからは、南九州の自然をテーマとした作品を発表している。向き合っています。この「目くばせ」は、そんな鹿児島・宮崎の自然を写した作品40点で構成されている。
一口に写真といっても、それはメディアの名称であり、作品のあり方は多種多様である。それ以上に、デジタル化以降、この数年は、写真の社会的存在自体が大きく変わってきた。特に、「デジカメ・ネット・女子」三点セット(「カメラ付きケータイ・女子」でもいいが)は、それまでの「銀塩フィルムと高級アナログカメラ」という男性的な写真とは、全く違う世界観をつくり出した。
ある意味、彼女の写真作品は、そういう「今までの写真」とは違うスキームの上から出てきた表現である。筆・紙・墨を使っても、書道と墨絵は全く違う表現である。同様に、手段として使う道具は一緒でも、アートの表現としては別の世界ということはいくらでもあり得る。21世紀とともに、「写真」はジャンルではなく、「筆」のような手段の名前になった、ということであろうか。あるいは、彼女の作品のような表現に対して、新しい名前が必要なのかもしれない。



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