Gallery of the Week-Apr.13●

(2013/04/26)



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情景作家 -昭和のミニチュア
旧新橋停車場 鉄道歴史展示室 新橋

東京ステーションギャラリーの再開により、本来の役割を取り戻した「鉄道歴史展示室」が、元の路線に戻るためのつなぎとしては絶好の企画とも言える、模型ジオラマの展覧会。巣鴨にある日本でも珍しい「ジオラマ用品専門店 さかつうギャラリー」のオーナー、坂本憲二氏がコーディネーターとなり、プラモ系ジオラマの山田卓司氏、ドールハウスの戸塚恵子氏、立体イラストレーターの諸星昭弘氏、情景鉄道模型の草分けの坂本衛氏の作品を展示する。
ぼく自身ジオラマ屋さんでいろいろ作品をつくって発表しているし、ここに作品を出展している方々も、個人的に親しく存じていたりするので、なかなか客観的に評価するのは難しいし、このコーナーで取り上げるべきなのかもよくわからない。とはいえ、ジオラマというか模型情景が、こういうスタイルで作品として評価され、世の中から鑑賞してもらえる時代になったというのは、素直に喜んでいいだろう。
確かに、いい歳して鉄道模型の車輌を走らせて喜んでいる姿というのは、当人はさておき、端から見るとなかなか微妙なものがある。個人的には、ジオラマも作るし、車輌の模型も作るが、それほど走らせることにはコダわらない。それよりは、じっくり眺めたり、写真を撮ったりする方が好きなのだ。
だが世の中のリアクションを見ると、どうやらそういう楽しみ方のほうが、より一般的であり普遍性があるようだ。模型界の底辺拡大のためには、そういう楽しみ方が広がった方が、老若男女を問わず楽しみ味わってもらえる分、余程貢献度が大きいだろう。これが、世の中の模型に対する見方が変わるきっかけとなってくれれば幸いである。



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椿会展 2013 -初心-
資生堂ギャラリー 銀座

資生堂ギャラリー伝統のグループ展である、「椿会」展。1947年にスタートして以来、2010年に終了した第六次椿会まで、合計80名の作家が参加し、70年近くにわたって続いてきた。今年からは、赤瀬川原平氏、畠山直哉氏、内藤礼氏、伊藤存氏、青木陵子氏の5名からなる第七次椿会がスタートし、5年間継続してグループ展を開催する。
70代から40代という幅広い年齢層と、写真、造形、前衛などさまざまなバックグラウンドを持った、ある意味異色とも言えるアーティストの組合せは、3.11以降、社会環境が原点から問い直すことを求めている中、アートとしてどういう答えが出せるかを考えて選ばれたものという。5年間を通したテーマである「初心」もそれを示している。
さて、これだけルーツも手法も違うアーティストの競演となれば、どうしても異種格闘技戦にならざるを得ない。それを既知のものとしつつ、あえて一切キャプションなしという展示で攻めてきた。もちろん、これだけ個性の立った人たちなので、見ればどれが誰の作品かはすぐわかるし、解説メモは渡してもらえる。
今回は初回ということなので、ひとまずは名乗り合いという面もある。手の内をちょっと見せつつ探り合い、という感じだろうか。これが何かということはなかなか言いにくい面もあるが、これから起こることを期待させるツカミとしては、なかなか興味が沸くところである、今後の起承転結に期待したい。



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生誕120年 木村荘八展
東京ステーションギャラリー 丸の内

20世紀の前半は、日本に洋画が導入されるとともに、ハイカラなものとして大衆レベルの人気を集め、美術=洋画となるに至るまでポピュラリティーを得た時代である。その時代をリアルタイムで駆け抜け日本の大衆洋画の基礎を作ると共に、舞台美術から文芸著述まで幅広い分野で文化人としても活躍した、木村荘八氏。今年は、その生誕から120周年になることにちなみ、彼の生涯にわたる活躍を振り返る回顧展である。
20世紀初頭の美術シーンは、印象派など19世紀から続く手法が残る一方、現代美術に連なる新しい表現手法への挑戦が積極的に行なわれた。当時の日本へは、本来地層のように重なり合っているこれらの方法論が一気に伝えられ、当時のアーティストはそれらの手法の可能性を怒濤のような勢いでトライしマスターして行った。この点は、木村氏も例外ではない。
彼のオリジナリティーは、その後である。数々の手法を自らのものとした上で、大正デモクラシーから昭和政党政治という、当時の日本で沸き起こりつつあった日本型大衆社会の求める表現を作り出していった。西洋に通じる洋画の手法で、日本の都市大衆を泥臭い生活も含めて描く。これには、まさに下町のど真ん中で生まれ育ったという経験がベースになったモノと思われる。
ところで、彼の作品は、3D的というか空間的な広がりと動きを秘めている。まさに3Dのジオラマを作って、それを写真に撮ったような構成である。有名な「新宿駅」や「牛肉店帳場」をはじめ濹東綺談の挿絵などは、ジオラマ作家という立場からみると、容易にジオラマ化できるし、また作ってみたくなる世界観を醸し出している。このあたりは、子供の頃から演劇ファンで、自ら舞台美術も行なうだけに、舞台構成の要素が入っているからではないかと思うのだが、いかがだろうか。



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第8回 写真「1_WALL」展
ガーディアン・ガーデン 銀座

例によって、先月のグラフィックに続いて、今月はこちらも第8回となる写真「1_WALL」展。写真の方も、回を重ねるごとに、このコンテストらしい世界観が浮かび上がってきた。ある意味、旧来の写真観を打ち破る急先鋒の一つのようになっている。それだけに、毎回どういう作品を選んでくるかが楽しみである。
今回も、全体としてのインスタレーションに重きを置いた、大型表現の作品が目に付く。もはや個々の写真は、ムービーやコミックスの1コマ1コマのように、インスタレーション全体を構成する部分品でしかない。もちろん、個々の写真も鑑賞には堪えるのだが、それをどうこういう対象ではない。
旧来の組写真ですらない。組写真はまだ、一つ一つのカットが語るコンテクストと、組写真全体が語るコンテクストがあり、その両者が複合的に語りかける要素がある。今回の作品でも、そういう構成を持っているものもあるが、全体としてのバランスからすると、圧倒的に全体が語るものに片寄っているのだ。
一つ一つの写真に神経を集中させないというのは、ある意味インスタレーションにパフォーマンスとしての時間軸を導入することに繋がる。見るの視線が動く速さが、作品に時間的変化を生じさせる。これもまた、写真がデジタルになり、画面上で見られることが日常化したことにより引き起こされた現象なのだろう。




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