おたくの煩悩

はじめに


煩悩 その1
「これだけたくさん書いているんだから、まさかぼくの番はないだろう」と、このリレーエッセイの存在は知っていたのだが、他人ごとのように傍観していた。しかし、どうした風のふきまわしか、なんと書いてくれという依頼がきてしまった。
そもそも、この季節決してヒマなわけではない。というより、ぼくとしては忙しい。おまけに、そもそもタダ原稿なんて、できるだけ書きたくはないものだ。
しかし、これがこの企画の最後であって、最後にふさわしい人に書いてほしいとオダてられ、そのうえそれが、仕事の上でもいろいろお世話になっている宮田さんからのモノとなりゃ断るに断れない。
ということで、なんのことはない、引き受けることにした。というより、一方的に「やるぞ」といわれたのだから、こちらとしては、うけるか、ボイコットかしかなかったのだが。でも、書くからには、半端にしたくないのも、これまた世の常。おまけに有終の美を飾らなくてはならないとなったら、それはそれで大変だ。
さて、何を書こうか。
まずはここから悩むことになる。

煩悩 その2
というわけで、テーマだ。有終の美といわれてしまえば、生半可なもので書きなぐるわけにもいかない。それに、社内のパソコン通信会員の多くのヒトは、昔、ぼくがとてもヒマで、ここの実験システムで、通信負荷の実験や、輻輳処理の実験のために、無用な文字列をたくさん生成するお手伝いをしていたころに書き込んだモノも見ているだろう。
うっかりむかし書いたことをまた書いて、揚げ足をとられてもかなわない。
そうならないテーマにはなにがあるか、と思ったが、いいことを思い出した。昔、連載しようとして、けっきょくやらなかった、「をた道一代記」これだ。
昔書いたことがあるが、ぼくは、男の子が染まる世の中のをたくな趣味は、およそ程度の違いこそあれ、どれも一通り手を染めたことがある。そして、ある程度はマニアックな極意に触れている。
この30ン年の人生の中で、いまも心に残るマニアックな型番の数々。これを一つ一つたどり、人生を振り返ってみる。
しばし、おつき合いいただきたい。

煩悩 その3
さて、まずここでお断りしておかなくてはならないことがある。それは、「をた道一代記」とはいっても、内容は、このごろよくあるような「をたい」趣味ばかりではない。すこしそこからはズレている部分もあることだ。
それは、なんせ時代が時代だからだ。主として語られるのは、昭和30年代の末から40年代いっぱい、あの、巨人軍が栄光のV9を達成したころのコトだ。日本があの奇跡の高度成長期から、先頃なくなった田中元首相の列島改造ブームを経て、安定成長期に移行して行く、まさにその時期だ。
そもそも「をたく」というコトバさえ、その時代にはなかった。そして、そんな時代に「趣味」として扱えたアイテムは、今に比べればはるかに限られたものだったからだ。しかし、その限られた中でも、いかにこだわりをみせ、深くのめり込むか。これは、情報化された現代では味わえない楽しみだ。
30代以上のヒトは、昔のノスタルジアを、20代以下のヒトは、昔の「をたく」の世界の実態を、それぞれ味わっていただければ筆者としては無上の幸せだ。

煩悩 その4
さて、こういうエッセイ的なものを書く場合には、「つれづれなるままに」思いつくまま書いてゆくヒトと、最初に全体の構想をまとめてから書くヒトとがいる。が、ぼくは断じて後者だ。とにかくビジョンや信念がまずないと、恐くて動けない性格だ。ということで、全体の章建てを考えたみた。
まず、をた道といえば、いまならまずはコンピュータ/ゲーム関係なのだが、これはそもそも最初の設定の昭和40年代中心という条件から外れてしまう。それに、昔、初期のパソコン事情(というかマイコンだな、まだ)については、別稿があるから、これは大胆にカットすることにしよう。
つぎにみなさんが思い浮かべるもの、これは「アニメ・特撮関係」だ。
個人的な知合いの中には、この暮れの「冬コミ」に参加する知合いがけっこういたりするもの確かだが(余談だが、今度の冬コミは、スペースが狭くなったのと、参加者が爆発的に増えたので、ブースの抽選がけっこう厳しかったそうだ)、今のように「をたく」の必修科目になったのは、昭和50年代からであって、昭和40年代の「アニメ・特撮」事情は、もっと一般民間人もたしなむものであった。
これは「アイドル」についても同様で、この両者は、扱おうとすると「テレビ探偵団」とか、泉麻人の世界になってしまい、ちょっと違うので、これまた大胆にカットするものとする。

煩悩 その5
いろいろテーマは考えられるが、、いっそ、男の子らしくて、をたくの子らしい題材に限ったほうが、限られた時間の中では面白いのではないか思う。そこで、「のりもの」を中心に、その周辺に話題を広げていこうと思う。
となると、まずは鉄道だ。これは、かなり範囲が広くなる。
第一章はなんといっても、鉄道車両。これからいこう。次は、乗り歩きとか、ダイヤとか鉄道一般の話題だ。これを第二章にしよう。しかし、鉄道といえば忘れられないのが鉄道模型。これを第三章にもっていこう。
ここまでくると、次は鉄道写真となるところだが、写真は中学、高校のころは写真部だったこともあり、ちょっとこだわりがある。のりものと直接はつながらないのが、番外として、これはこれで押えておきたい。
ということで、次は飛行機だ。飛行機は、当時は他ののりものほど日常的ではなかったので、実物、模型とか分けるまでもない。第四章は、旅客機、民間機でまとめよう。で、第五章が、当然軍用機だ。
しかし軍用機となると、こんどは戦車のハナシもしたくなる。そうだ。第二次世界大戦の傷跡からやっと復興をとげた高度成長期には、ミリタリー関連の趣味はかかせない。戦車関連が第六章、小火器を含むその他兵器を第七章としよう。

煩悩 その6
さあ、ここまでくると、あとは決まったようなものだ。当然第八章が自動車だ。日本のモータリゼーションが起こりはじめたこの時代のこと。自動車はいろいろ書くことがある。それと、昭和40年代のクルマのはなしとなると、どうしてもスロットレーサーをかかすことはできない。これが第九章だ。
で、第十章にさっき別格においといた写真を入れよう。
うん、あまり幅広くはないが、なかなか収まりがよくまとまっている気がする。うまく、男の子っぽい「をたさ」がでてるぞ。
では、これで書きはじめることにしよう。
面倒くさいので、一切資料考証はしないで、記憶だけで書くので、間違いもあるかも知れないが、そこはそこ、大目にみていただきたい。
なお、この一連の書き込みについては、この文章をどこかで再利用する可能性がなき西もあらずなので、転載や複製はご遠慮していただきたい。
よろしくお願いしたい。


(93/12)



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