話題の新楽器試奏記





RAT Distortion 試奏記


新機種試奏レポート。まずは今話題の、PROCOSOUND Inc.の「RAT DISTORTION」からいってみたいと思います。外観の特徴は、いまどきめずらしい、ダイレクト式のフットスイッチ。鉄板をコの字型に曲げたのを、二つ組み合わせただけの、いかにもガレージメーカーっていうケース(これが、メタメタ重い)。むかしの、ブリキ製の、ロボットのおもちゃのような、電池ケースのふた。と、とにかく無骨そのもの。

ま、いかにもアメリカ製という感じです。黒塗りなのが、せめてもの幸い。でも、デザイン上のコメントはさけましょう。外部電源inputはありますが、やはりアメリカ式のミニジャックです。

つぎに、かんじんの音色。ありそうでない音。マーシャルねらいじゃないし、かといって、ツインとも全然違うし、しいていうなら、ブギーかな。それも違うんだけどね。とにかく、豊かな倍音が特徴の上品なサウンドです。いままでのエフェクターじゃ、ちょっとない感じ。

500から4kあたりは、すごく倍音が多くて、BossのHM-2みたいな音だけど、その上にいくとだんだん減ってきて、10kから上だと、OD-1みたいな感じになる。スペクトラムを調べた訳じゃないので、正確じゃないけど、フィーリングだと、こんな感じ。

ここが、じつに使いでのある秘密じゃないかな。音やせがぜんぜんない。かといって、いかにも矩形波みたいなボーっとした音にもならない。太くて鋭い、頼りになる音です。まだ、ライブで使っていないんでなんとも言えませんが、かなりよく通る音だ
と思います。

この倍音構成が、ラインでも使いやすい秘密ですね。またローノイズというのも現代的で、この手のエフェクターとしては、うれしい。音楽の種類によっては、アンプでひずませるより、絶対フィットする音。いい話ばかりですが、ほんと、究極のディストーションにまた一歩近ずいた、そんな感じです。

(86/07/17)

Ibanez MIDI ギター IMG-2010 試奏記


試奏記シリーズ、今回はIbanezのMIDIギターIMG2010です。結論から言ってしまうと、「ギターシンセサイザーって、一体なんなんだ」という疑問が、ますます強くなってしまった、ということです。

ギターと言う楽器、およそこんな完成度の低い楽器は少ない。自分がひいてていうんだから、本当ですよ。まあ、そこのワイルドさが魅力なんだけど。ピアノみたいなものと比べようもない、中途半端な存在でしかない。まだまだ改良すべき点が、くさるほどある。おまけに、とっつきやすいけれど、上達するのはめためたむずかしいという、やっかいもの。

なぜ、そんなギターという楽器でシンセをコントロールするために、インターフェースを作らなくちゃいけないのか。確かに、シンセをコントロールするのに、今あるような平均率キーボードが一番いいとは思っていないけど、だからってギターなんだろうか。わからない。

ま、ギターとシンセがMIDIでインターフェースされている。むかしのP-CVコンバータなんかにくらべれば、立ち上がりもかなり速くなってきたし(でもまだあきらかに遅れる)、トラッキングもいい。改良のあとは、目にみえてはっきりしている。だけど、ぼくなら、シンセをひくときには、キーボードのほうを選ぶ。ギターシンセには、プレイヤーのイマジネイションをかきたてる何かがありそうでいて、実は欠けているから。

技術屋が、ハードウェアのテクノロジーの理屈だけで作ったような、楽器として一番大事なものがぬけおちた、割り切れなさを感じます。性能がよくなってきてるだけに、その矛盾が、ますますくっきり見えてきてしまった、そんな気がしました。Ibanezさん、ごめんなさい。技術的には、すごいとおもうんですが。

於 銀座十字屋     使用シンセ:DX-7 Matrix6
(86/07/21)

DeanMarkley K20 試奏記


今回の試奏記は巷でひそかな人気を呼んでいるミニアンプの中から、DeanMarkleyのK20をいってみます。ほんと、最近アメリカ製の安いミニアンプが人気上々ですが、このK20も、その一つ。出力20W、20センチスピーカー搭載で、2万円ちょっと。エフェクター感覚の、お手ごろ値段です。

で、スイッチonしてまずおどろくのが、その音のでかさ。とても、この図体から出てるなんて思えないくらいでかい。まあ、スピーカーがちっちゃいんで低音はちょっともの足りないけど、その分よく通る。並の練習スタジオで、ボーカル中心のポップバンドなら、これ一丁でいけるかもしれない。

音色は、いかにもトランジスタです、というトーン。クリアで、まあまあ納得できる音です。でも、ディストーションは、ちょっとつらいかな。たとえて言えば、むかし出てた、ローランドのCUBEっていうアンプ、覚えてるかな。あれが近い。多分、カーオーディオに使う、ワンパッケージになっているパワーアンプでも、つかってるんじゃないでしょうか 。その分クセはないから、使いかた次第ということですね。

CUBEといえば、EAGLESが来日したときに、Joe WalshがCUBE4台をディメンションかなんかでふって奏いてたけど、そういう感じで使うにも、これはいいです。なんたって、2万だもん。ステレオで使ってもたいしたことない。

於 TAKAGI'S HOME (なお同店では\19,800-でした)

(86/07/28)

RDX-7ボイスROM「坂本龍一」試奏記


好評かどうかはさておいて、すくなくとも書いているぼくはのっている、という試奏記シリーズ。今回は、ちょっとおもむきをかえて、リットーミュージックから新発売された、DX-7ボイスROM「坂本龍一」、をいってみたいとおもいます。

ひとことで言って、これは使える。こんなに、役立つ音ばっかいっぱい入ってるROM、今までなかった。音色を選んだのが、ぼくと同じ名字の藤井丈司氏だからって言うんじゃないけど、ぼく好みの音ですね。いままでに、自分で作ってストックしていた音色に、よく似た音も入っていたりして。思わず、ニタリとしてしまう。

大体、ぼくのDXのマニピュレーションの座右の銘は、
・モジュレータのOLは、「うん、この辺、この辺」というより、「ちょっともの足りない」方が、あとあと役に立つ。
・ベロシティーのきかせすぎは、音色非行化の源凶。百害あって、一益なし。
・モジュレーションとタバスコのかけすぎは、犬も喰わない。
というものなんですが、ほんと、こんな感じの音なんです。

生の楽器のシミュレーションという音でもなく、派手でかっこいい音という訳でもないが、シンセの合成音としての美学をきわめた感じの、「気持ちのいい」音が、64音。FM音源の難点を、プログラミングテクニックでカバーした(それでいてFM音源らしい)音。だから、アンサンブルにも、もってこい。解説書の中で、藤井氏も、「つつみこむような音」という表現を、さかんに使っているけど、コーヒーにクリープ。よく溶けて、サウンドをまろやかにする音色です。シンセマニアではなく、ミュージシャン向きの音色ROMです。

(86/07/30)

コルグ SG-1D試奏記


ちょっと間があいてしまいましたが、またまた試奏記でもいってみたいと思います。
今回は、コルグのサンプリング・グランドSG-1Dです。わざわざ試奏記を書きたくなるのは、期待にたがわずすごく良かったときか、期待を大きく裏切られてしまったというときか、どっちかなんですが、これは残念ながら後者です。

まず、音色に問題あり。こぎれいにまとまりすぎちゃってて、1台だけで聞くとけっこうかっこいい音に感じるけど、あれはアンサンブルにはとけこまない音。やっぱり、デジタルピアノは、ライブ指向の強い楽器だけに、この音色じゃやばいと思う。家庭用の電子ピアノとしてみるなら、いい音といえるけど。ヤマハの傘下に入ったコルグだけど、そういえばこの音の派手さはヤマハっぽいなあ。そんな音です。あと、サンプリング時に音をいじりすぎちゃってるのも、気にくわない。使い手の悪い音です。

次に、タッチセンスのかかりかたが唐突すぎるのも、いやだ。マイルドな音から、一気にびんびんした音になっちゃう。鍵盤のつくりが非常に良く、タッチがいい感じなだけに、これは惜しい。欲をいうときりがないけど、満を持して出した、というより、他社がみんな出しているので、お家の事情として出さざるを得なかった、てな感じの、中途半端さが鼻についてしまうのでした。とにかく、ハードはいいのだけど、ソフト部分の練りがたりない感じが伝わってくる。

あの音色が好きな人には、おすすめしますが、現状ならR社のやつのほうが、はっきりいって使えると思う。今後のバージョンアップに期待というところでしょうか。





(86/08/17)



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