パクり・モロ出し列伝





そんなわけで、さっそくパクリ・モロ出しをネタに、一発ぶちかましてみましょう。まず、のっけは、この曲。去年の代表的なヒット曲。忘年会でも、さかんに歌われました。そう、小林明子の「恋におちて」です。意外と、これいわれなかったんだよねぇ。
ネタは、カナダのグループOriginalCastの1970年のヒット曲、"One Tin Soldier"(天使の兵隊)ですね。コード進行が、モロいっしょです。(そういえば、OriginalCastも、一発屋でしたね)。

しかし、パクリといえば、なんたってこの人をぬきにしては語れません。そうMr.モロ出し。林哲司氏。彼には、不朽の名パクリ松原ミキの「Stay With Me」(もちろんネタはCarol Bayer Sagerの"It's the fall in love"、あまりにそのままなので、パクリを通り越した、モロ出しというコンセプトが生まれた)というのがあります。

ここんとこ、ちょっと不作でしたが、ひさびさに放ったヒットパクリが、杏里の「悲しみがとまらない」でした。あれを聞いて、往年の第一期ディスコ黄金時代を思い出したヒトも多いんじゃないでしょうか。もちろん、Stilisticsの"Love is the Answer"、日本でのデビュー曲でした。

誰が聞いても、そのままだったのは、レベッカの「Love Is Cash」。これなんか、作者があっけらかんと「参考にしまして」なんて言ってるくらいで、こりゃつまらない。
しかし、マドンナといえば、"Into the Groove"が、明菜のBitter&Sweetの中の「Babiron」で、しっかりパクられてましたね。

それから、最近目立つのが、部分パクリ。イントロとかだけ、パクるやつ。本田美奈子の「1986年のマリリン」は、あまりにストレートで、評判悪かったけど、KYON^2の「なんてったってアイドル」のイントロのネタが、Patti Austinの"Golden Oldies”にあったのまで気付いたひとは、すくないんじゃないでしょうか。

さてパクりというと、だいたい、あちらのモノをこちらの方がパクる、というのが相場だけど、これはどうも逆パクりじゃないのかな、つーのがひとつある。Blondieの"Call Me"。知ってる人は、みんな知ってる。しのづかまゆみの、「パパはもうれつ」。こっちの方が、2年ぐらい、早いんだよね。しのづかまゆみといえば、今は作詞家ですよね。

古いネタを出したついでに、もう一丁。ふつう、パクりというと、ポップス系、ニューミュージック系、アイドル系、というのが御三家だけど、演歌にもパクりはあった。細川たかしのデビュー曲「心のこり」。このサビのとこはモロ。なつかしのオールディーズナンバー、Neil Sedakaの大ヒット、"The Diary"(恋の日記)ですね。こりゃ、みんな知ってたか。

でも、一番パクられた曲って、なんだろうね。キメだったら、Emotionsの"Best of my love"の、「タタツンツン、タタツンツン、タタツン」かな。77・8年頃のニューミュージックのアルバムなら、LPに一曲は、このキメがはいってたからなぁ。
曲だと、ビートルズという気もする。

"Let it be"なんて、フォーク系の人なら、一度はパクってるんじゃないかな。堀内孝雄の、「遠くで汽笛を聞きながら」なんて完全にそうだし。「なごり雪」もそうですね。それ以外にもスカな曲ならいっぱいある。大体やつら、洋楽ってビートルズくらいっきゃ聞いてないじゃん。

おしむらくは、ぼくがその辺のLPをあんまり聞いたことがないこと。くわしい人がいたら、そこんとこよろしく。ビートルズは多いけど、ストーンズはやっぱ少ないなぁ。
でも、最近あったね。中村あゆみの「ちょっとやそっとじゃCan't Get Love」。"Let's Spend the Night Together"(夜をぶっとばせ)ですね。これも、誰でも知ってるか。

で、ちょっと視点をかえて、パクられて儲けた人の話もしてみましょう。だいたい、世にいう盗作騒ぎは、ヒットしてはじめておきる。要は、印税がいっぱい入ってくると、オリジナル作者としても、分けまえを欲しくなる、というわけです。この点多くのパクりは、B級の曲で見られるものだけに、アハハで済んでしまう。

この違いが重要なのだが、パクり道入門をやろう、というつもりではないので、これについては、後日じっくり語りましょう。従って、盗作の訴訟は、クロとなると、作曲者を連名にして、どちらにも印税が入るようにして、一件落着となることが多いようです。

BEACH BOYS の "Surfin USA" がもめて、作者が(Brian Wilson)から(Brian Wilson/Chuck Berry)となったのは、この手のごく初期の事件として有名ですね。(もと唄が "Back in USA" だもん、しゃれにもなんねぇよ)。これは、Chuck Berry が、儲けたわけです。

ところで、わが日本でも海をこえてもうけたやつがいる。まだ記憶に新しい、八神純子の「パープルタウン」。いつのまにか、テレビでみる作曲者のクレジットが、八神純子/David Fosterにかわってたでしょ。ちょうど、David Foster全盛の頃で、右を向いても、左を向いても、Airplay サウンドばっかりだっただけに、日本の歌謡番組の画面にも、彼の名前を発見できるなんて感無量でした。ひょっとすると、オリジナルである、Ray Kenedy の "You ought to know by now" より、印税がおおかったりして。うむむ、あぶない。

でも、ぜんぜんそうならないことも多い。あの浜田省吾がむかし作ってた、「愛奴」というグループがあります。もう、十年以上前かな。当時、ぼくは、日本のグループの中じゃ非常に気に入っていた。そのデビュー曲「二人の夏」。この曲の間奏、まんま、Beach Boys のインストゥルメンタル曲 "Summer Means Love" なんだよね。でも、なんも、おとがめなし。これぞ、パクりの醍醐味。ここまであっけらかんとやれば、キセルといっしょで、胸を張ってパクれるんでしょうかねぇ。


(1986年8月1日)



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