岩場のジオラマ


これまた、日記にはよく登場している岩場のジオラマ。これは、HOn3-1/2 12mmゲージに参入した直後、まだあまり車輌も持っていない頃に、最初に作ったジオラマです。見るヒトが見ればすぐわかると思いますが、これはウッドランドシーニックス社の「お試しセット」を元に組み立てたものです。もちろん、そのまま作ればアメリカ風の景色になりますが、日本風の景色に仕立て、12mmの線路を敷設しました。復帰直後ということで、技法については、説明書に載っていた「作り方」と、1970年代に16番をやっていた頃の記憶だけでカバーしています。それにしても、昔のレイアウト作りの常識からすると、ビックリするほど簡単に、「らしい景色」が作れてしまうのにはオドロきました。もちろん、70年代も後半になると、ウッドランドシーニックス社製の素材は出回ってはいましたが、高嶺の花でとても手が出ず、どんなものかさえ知る由もありませんでした。シーナリー関係の製品の充実と、モーター関係の進歩が、出戻ってきて一番ビックリしたポイントでもありました。



このジオラマ、作った時期が古いだけに、日記にはかなり初期から登場しています。初出は、下から2番目の俯瞰撮影の9600のカットですが、登場したのは、その日記にも書いてあるように、ファーラーのトンネルポータルを使って、コンバーチブルのトンネルを作ってみたら、けっこういい感じになったのがきっかけでした。岩場は日本にもありますし、日本風でもおかしくないような使いかたで仕上げてはありますが、トンネルを設置することで、一段と「切り通し」っぽい感じが高まってきます。ところで、こういう石積みのポータルは、けっこう九州には多いのです。日豊本線の宮崎以南とか、肥薩線とか、みんなそうです。ということで、門デフのC55。これは、改造して直後ぐらいの撮影です。


毎年春には恒例の、「どこでも花見」を利用した「花見カット」での登場。花見カットは、色気を増やすということでディーゼル機か気動車が出てくることが多く、このカットではトンネルは使っていませんが、日豊本線の連想で牽引機はDF50です。実は、この「お試しセット」、某模型店の閉店記念セールで、なんと1500円で入手したものです。購入当時は、まだ12mmに手を出していませんでしたし、N中心でやっていたのですが、1500円だったので、何かに使えるかな、と買ってしまったというほうが正解でしょう。あまり使わない色のターフなど、今でも残っていますし、考えてみれば実にお買い得でした。スポンジ関係は、昔ながらの技法で、ファーラー製など、別途購入したモノを使っています。


上の2カットと下の「初出」カットについては、キヤノンのIXY digitalで撮りましたが、このカットからはパナソニックのLUMIXになりました。その分、ちょっと画質が上がっています。IXYの時代は480×360で使っていたのが、LUMIXになった2005年の夏から、640×480で使うようになりました。今回、古いものも、640×480で再録しました。このジオラマは、45cm×30cmぐらいなのですが、線路を中心に、上下にかなりの高低差がついています。そのおかげもあって、工夫すると、いろいろな構図で撮影ができます。これは、切り通しに寄るようにして上手側から撮った「王道構図」のカット。これだと、ごくごく普通の風景になってしまいますが、こういうシーンも楽しめます。地形そのものは、型板が切り出してあるので、メーカーの設計通りなのですが、なかなか見る角度によるバリエーションをよく考えたデザインだと思います。


上のカットとほぼ同位置で、切り通しの上から俯瞰すると、こんな感じになります。トンネルモードでは、ちょうどこのあたりにトンネルポータルがきます。車輌は、続けてC5526。イメージ的には、日豊線なんでしょうかね。プレイザーの写真撮影人形で、SLの撮影旅行の雰囲気を出してみました。人形をよくみると、ブローニーの一眼レフ(ハッセルか)と、35mmの一眼レフ(ペンタックスか)と、ちゃんとカメラもポジションも、それらしく作られていて、ほほえましいです。S30のフェアレディー240ZGは、70年代初頭には登場していますので、時期的にも悪くありません。ぼくも通常のZですが、SL最晩年の2年間ぐらいは、乗っていましたし(もっとも、オイルショック後でガソリンが高かったので、直接撮影には乗っていけませんでしたが)。実はこのZ、キーホルダーになっていたもので、およそ縮尺は1/75ぐらい。それを逆手にとって、遠近法を強調した構図にしてあります。正直に撮ると、ここまでの距離感はありません。


さて、石積みのトンネルポータルというと、田川線をはじめとする筑豊地区のイメージも浮かびます。というより、南九州のパシフィック、筑豊の9600というのは、ぼくにとっては、実際に蒸気機関車の撮影旅行にいっていた時代から、よく言えば「ライフワーク」、悪くいえば「バカの一つ覚え」。16番でも、Nでも、12mmでも、性懲りもなく同じコトを繰り返している感があります。どちらにしろ、どうせ理由は後付けなので、後半は9600です。まずは、デフなしの「2号計画」。空車を牽いて、絶気で下ってくる感じでしょうか。9600が絶気で、下り坂で精一杯の速度を出すと、カシャカシャカシャカシャと、独特のメカニカルな走行音がしますが、なんか、そのサウンドを思い出しそうな雰囲気です。後藤寺に通じる各線なら、どこでも見られたような風景ともいえます。


これが、この「岩場のジオラマ」の初出のカット。機関車は、門デフつきの「1号計画」。雰囲気としては、油須原-崎山間の今川の渓谷沿いのあたりという感じでしょうか。あのへんは、けっこう岩場もあったりしますし。まあカルバートは余計ですが、川側と思えば、理にかなってはいます。そういえば、同区間には短いトンネルが二つ続くところがあり、そこでは、トンネルが穿たれた山裾が大きく川のほうへ出っ張っています。数少ない、川側から見返すようにして列車を撮影できるポイントだったと思います。ただし、そこで撮影できるのは、後藤寺方面行きの列車になってしまいますので、ここは絶気でやってきます。まあ、「なんちゃって」としては、こんな感じでよろしいのではないでしょうか。


最後は、上のカットとほぼ同じ場所から、川側を見おろしたカット。これは、D50にAiマイクロニッコール55mmf3.5の組合せで撮影したものです。都合、三種類のカメラが登場していますが、640×480に粗くひきなおしても、レンズの差だけでなく、けっこうトータルでの描写の差は出てくるものです。カマは再び「2号計画」。「2号計画」は、イメージとして後藤寺機関区ですし、田川線の補機は後藤寺区の担当だったので、これはこれで、雰囲気としてはいいのでしょうが、欲を言えば、ここでは力行していてほしいですね。まあ、これは模型では難しいところなのですが。


(c)2007 FUJII Yoshihiko


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