最後の列車が去った時が「脳死」だとするなら、 送電が断たれ信号機が光を失った時は、 「心臓死」にあたるのだろうか。 横軽が、死んで行く。私がそれを、見取ってやろう。 やがて施設は取り壊され、朽ちて行き、 つまり壊死が始まり、土に返って行くのだろうか。 横軽が、ゆっくりと死んで行く。愛すべき鉄道が、想い出に変わって行く。 あの無骨な山男の、ブロワーの熱気が、 重量感溢れる足音が、 ぐいぐい押し上げる力強さが、 列車の矢面に立って降りる優しさが、 私の中には残っている。 ただこれを外へ取り出す術を、私は知らない。 私の密かなるロクサンが、今私の中にいる。 |