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1868 sun3965 CUB     93/11/04 20:28 いまさらの209系のこと              97



 ところでGマークの付いた(グッドデザインの、授賞?選定?どっちでしたっけ?)
209(901)系ですが、あれ、GKデザインの作だったんですね(今頃気付く
な?)。GKというと、成田エクスプレス253系などもやっています。他にヤマ
ハの一連のバイクや、キッコーマンの醤油さし、焼酎トライアングルの瓶なども有
名です(あまり知らなかったりする・・・)。
 
 209系を観察してみると、まあ、熱遮蔽ガラスの好き嫌いだとかは別として、
色々考えられている部分に気がつきます。
 
 まず、通勤型の宿命として、立っている乗客へ、或は座っている乗客との間の配
慮が欠かせないのですが、特に目を引くのが、ドア付近の、シートの端の処理。
 
 立っている人が、出来ることならどこかに寄り掛かりたいと考えるのは人情とい
うものでして、その恰好の場所として、ドア付近等に立つことになるのですが、し
かしそこで、シートの端の人との間の問題が生じてくるのです。
 
 シートの端の「横棒」、あれは肘掛けなのか? 腰掛けなのか?・・・・座る人
は当然肘掛けとして使うでしょうし、方や立っている人は、そこに寄り掛かりたい
・・・・しかし座っている人の顔のすぐそばにお尻が来るのは・・・・これまでそ
の問題に対する試みは、色々されてきました。シート端に「立て板」を付ける、
「横棒」を高くして、立っている人がお尻を乗せられないようにする、などなど。
 
 209系の場合、「立て板」に立体的な凹凸をつけることで、座る人の肘のスペ
ース確保と、立つ人の寄り掛かり場所の提供、そして両者の間には明確な「仕切り」
を設ける、といった「一石三鳥」に成功しています。
 
 やるじゃん。
 
 GKの人の話でも、やはりそこにはこだわったのだそうです。なるほど。
 
 そういえば、209の内装全体に、プラスチックの一体成形部品が多用されてい
ますね。この「シート端仕切り」も、そのメリットを活かしています。それまでの
車両の内装では、パイプの他に、場所々々に合わせて切られた平板の端を金具で固
定してねじ止めする、といったものが多かったことを考えると、これはコストダウ
ン、省力化を含んだ、大きな可能性を秘めているようです。尤も、自動車や航空機
ではとうに一般化されていますけどね(そいや209系の内装って、航空機的)。
一体成形シートなんてのも、ようやく鉄道車両にも取り入れられてきた、といった
感じです。
 
 プラスチック一体成形ですと、エアコンのダクトからなにから、殆どの形を一体
化して製造出来るので、量産効果を伴えば、かなりのコストダウンが見込めます。
 
 それから、壁面から「生えている」シート。これにより、シート下に荷物スペー
スが生まれ、混んだ車内で大きな荷物を網棚に持ち上げる、といった面倒や、その
際の危険を、ある程度回避出来ます。また床の清掃などのメインテナンスもやり易
くなっています。
 
 やるじゃん。
 
 シートといえば、7人掛ロング・シートにきちんと7人座ってもらう、という命
題が古くからあるのですが、これまた、これまでに様々な試みがなされてきました。
 
 私の知るところでの最も古いであろう試みは、国鉄201系に始まった、中央の
み色違い、というもの。これは「6人掛」になってしまうのを防ぐためには、中央
の人がそこに留まっていれば良い訳だ、という考え方によるアプローチです。「真
ん中はここですよ」と色で示す、という、どちらかというと消極的なものです。他
に、背もたれに一人分ずつの模様を付ける、ランダムに色違いにする、などといっ
たものがありました。
 
 これがもう少し積極的になると、7人掛を物理的に4+3のように分ける方法な
どとなっていきます。人は、端に座ろうとする傾向があります。そして、他の人と
は間合いをとろうとします。他が空いているのに、赤の他人同士がぴったり寄り添
うことようなことは、まずありません。で、物理的に区切ることで、そこで着座位
置のズレの補正をさせ、結果7人掛シートに7人座ってもらうのです。また、間に
何かが挟まっていると、精神的な「間合い」も確保されます。
 
 209系の場合、2+3+2と分けられています。これだけ細かいと、自ずと着
座位置は決まってきますね。さらに、ただの仕切板にせず手すりにしたあたり、こ
れまた立つ人への配慮が伺えます。
 
 やるじゃん。
 
 あ、それから、固定窓としたことで強度面での余裕が出来たのでしょうか? 大
きい窓は、立っていても外が良く見えます。
 
 やるじゃん。
 
 そもそも、209系電車はロー・コスト化、ロー・メインテナンス化を念頭に置
いて計画された車両な訳ですが、ここでの様々な試みは、より広い範囲にフィード・
バックされていくことでしょう(試作編成の「テレビカー」が好きなんだけど)。
 
 工業デザインとは「設計思想の具現化」であると私は考えます。思想無き「デザ
イン」は成り立たず、仮にモノを作ったとしてもすぐに陳腐化してしまうでしょう。
そもそも「デザイン」と「スタイリング」とは、別の角度の話と考えるべきだと思
うんです。そうやって見てみると、デザインって、奥が深くて面白いです。
 
 うーん、209系ネタ(もう古いかな? どこかで同じ事言われていそうだし)
でこんなに長くなってしまいました。他にも書きたい事は山ほどあるんですけど、
まあ、今度という事にしましょう。
 
 
  「鉄道ルネッサンス」なんて本がありますよね、高いんでまだ買っていないで
  すけど。そいや新千歳空港駅がブルネル賞授賞でしたっけ。
 
                            CUB