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2470 sun3965 CUB     94/03/22 20:31 シロクニのビデオ                      50



 書グラでもう一つ見掛けたのが、C62のビデオ。丁度デモをやっていました。
 
 なんでもNHK所蔵の、現役当時の映像記録だそうで、「決定版」をうたってお
ります。確かに、映像のプロの撮ったものだけに、その完成度は高いといえましょ
う。失礼ながら、アマチュアの方の8ミリ映像をソースにしているものとは、ちょ
っと違います。
 
 現役当時の「ニセコ」(?)の、C62−2を先頭とする重連運転を、追いかけ
るように記録しています。
 
 踏切の真横からのカットでの、静かな田園風景にシロクニが「わっ」とフレーム・
インして来、その機関車のスピード感とは対照的に残された煙がゆっくり漂う様は、
鳥肌ものです。こういった1つ1つのカットは、いかにも映像の「ツボ」を押さえ
たプロならでは。そして蒸気機関車の魅力をよく心得ているのが見て取れ、それが
観る者を引き込みます。
 
 そして圧巻は、空撮! これはもう、アマチュアには無理な芸当ですよね。
 
 列車と平行して飛びながら、俯瞰でシロクニの先頭部に寄って行きます。ロッド
は力強くその駆動力を動輪に伝えるべく激しく動き、沿線の木々や吐き出される煙、
蒸気が後ろへ後ろへと飛び去って行きます。デフレクターに輝く「つばめ」マーク。
「特急牽引機」というかつての栄光と誇りを胸に、全力で疾走する・・・・・。
 
 やがてカメラは上昇し、列車の周りを旋回します。大陸的な北の大地を駆けるシ
ロクニ。どこまでも、どこまでも。
 
 店内だというのに、不覚にも目が潤んできてしまって、ちょっと迂闊に瞬きも出
来なくなってしまったので、そそくさとその場を立ち去ってしまったのですが、こ
れは買うしかありませんね。LDでも出ていたら、これを機会にプレーヤーを買っ
てもいいぞ、と思わせるほどの作品でした。
 
 強く感じたのが、「記録する」ということの意義の大きさ。この「ニセコ」は、
当然現役時代のそれでして、言わばこれは、その時代の「日常」の記録映像です。
沿線に三脚が犇めいている訳でもなく、駅の停車風景も、どうってことない日常的
なものなのですが、それがかえって「日常の中にSLがいた時代」を感じさせてく
れるのです。彼らが「機関車」、つまり列車運行上欠かすことの出来ない「動力」
として活躍していた時代が、かつてあった(私はそれより後の人間ですが)ことを
実感させる映像です。そして私は、自分の知らないそんな時代に、思いを馳せるの
でした。
 
 恐らく当時最高の機材と人材と資金とで、このような、時代をも記録する映像を
残しておいてくれたNHKの方々に、感謝と称賛の気持ちを込めて、1本買ってし
まうことにしましょう。
 
 
       その昔、NHKスペシャル「よみがえれ貴婦人」でうるうるした
 
                             CUB