***** 2835 sun3965 CUB 94/08/20 00:51 「やこうれっしゃ」 75 絵本、などというものを買ってしまったのでした。 ダイヤ情報を立ち読みしていたら、巻末で「やこうれっしゃ」という絵本が紹介 されていて、気になったので絵本コーナーへ。 ありました、「やこうれっしゃ」。 内容は1編成がずうっと描かれていて、上野駅に停車中の最後尾車から始まり、 ページを捲っていきながら編成を前へ前へと辿って行くといった具合。先頭は終着 駅に到着したEF58(金沢行きの列車なんだけどゴハチ・・・・長岡までの話な のかな?)、です。 最初のページは、上野駅の中央改札口の俯瞰です。荷物運搬車が走り回る行き止 まり式ホームには、なんと「ひばり」の姿も見えます。改札口の上には行先別の発 車案内の札が掛かり、広場には帰省客やスキー客(設定は冬)が溢れ返っています。 次のページから、いよいよこの「やこうれっしゃ」の始まり。最後尾のスニ44(?) に、荷物カートを積み込む作業が描かれ、その傍らを目的の車両へ向かう乗客らが 通り過ぎて行きます。 さらに捲っていくと、編成を前へ辿る格好で車内の様子が描かれていて、さなが ら広田尚敬氏の「動止フォトグラフ」のよう。寝台車、グリーン車、普通車、それ ぞれの車両で、それぞれの人が、それぞれのスタイルで眠り、或はお喋りをし、或 はトランプなどをしています。泣き出す赤ん坊をあやす母親、デッキに立つカップ ル・・・・・列車が、単に人や物を運ぶだけでなく、それらをすべて内包した「空 間」をまるまる運んでいることをあらためて認識させられます。 さて、そのバックも変わっていき、恐らく鴬谷あたりのネオンを過ぎ、夜は更け ていき、途中の駅で小休止、駅弁やお茶を買う人、やがてトンネルに入り、そこを 抜けると銀世界、車体には段々雪が着いてきて、夜も明け、除雪作業員に見守られ つつ、いよいよ終着駅。車内ではネクタイを結ぶ人、荷作りをする人・・・・・あ の独特の、慌ただしい空気が窺われます。 そしてホームでは、どっと降りた乗客達が、それぞれの荷物を抱えて改札へ向か う・・・・・・朝の終着駅の光景です。 ほのぼのタッチに包まれながらも、その実結構リアルに描かれていて、それが見 る者を違和感無く引き込む臨場感につながるようです。敢えてマニアックな視点で 見るならば、最後尾のスニ44から始まって、スロ54或は60、オロネ10やオ ハネフ12といった10系客車群、ボックス・シートの普通車と、それぞれの形式 が特定出来てしまうほど。台車までTR47だとかTR50だとか・・・・・。 牽引機EF58は、110号機。長岡区配置の、いわゆる上越仕様です。電暖表 示灯が灯っているのも嬉しいところ。因みに私、この110号機は上野で撮ったこ とあります。ぉ しかし本質はそんなところではなくて、そこに描かれている、かつての「汽車旅」 の姿、古き良き懐かしき情景ではないでしょうか。私自身、幼き日にオロネ10の 下段で母親と添い寝した経験がある(因みにEF58牽引の「西海」)のですが、 そんなノスタルジーに浸れる一冊です。 ところで気になる「対象年齢」ですが、「4才〜おとなまで」だそうです。う〜 ん、分かる気がする・・・・・・。「過ぎ去りし日」を思う(ちょい後ろ向きか)、 いわば「大人の絵本」としても通用する内容ではないかと。ああ、しみじみ。 そういえば話飛ぶけど、宮崎駿の「おもひでぽろぽろ」でも、鉄道が魅力的に描 かれていますね。ほんの些細な描写が「しみじみ」もので。さすがは宮崎アニメ、 しっかりツボが押さえられています。 まあそんなわけで、しみじみ。なんだか勢いがついちゃって、お次は昔読んだ 「ふたごのでんしゃ」が欲しかったりして・・・・・。ところでネクタイなどをし ていると、結構買い易い気分のような?・・・・・・所帯持ちっぽく見られるのに は若干の抵抗があるんですけど。(^^; CUB