***** 1998年5月26日 2:31:59 *****
[T:19071] Re: Book guide/亜細亜新幹線



 こんにちは、深町です。


(略:「亜細亜新幹線」という本の話)


 さて、これの前に読んでいた本がありました。

    「汽笛一声」志茂田景樹著
    KIBA BOOK ¥1905(本体)

#書グラ6階で買いました。(^^;;;


 明治維新、文明開化、そしてあの陸蒸気が走るまでの物語です。佐賀藩の
精煉方であった宏蔵(のちに佐川宏蔵)を軸に、維新の行方と開国、そして
鉄道施設までが描かれます。宏蔵は大隈重信と旧知の仲。佐賀時代には、プ
チャーチンが持込んだ蒸気車の模型をもとにその雛形(原理模型?)を造る
ことに成功している程の職人だったそうで、後に大隈を訪ねて江戸へ上ると
ころから、物語は本格的に始まります。

 保守派と開明派の政争に晒されながらも、イギリス人の技術者の指導の下、
とうとう鉄道建設が始まります。いくつかの歴史的事件を横目に、新橋から
横浜までの鉄道が、着々と建設されていきます。

 大隈重信が鉄道に無知だったために、イギリス人との話の中で1067mm
ゲージに決めてしまったところ、とか・・・・・・。

 そうそう皆が皆、諸手を挙げて鉄道建設に賛成だったわけではないのが、
意外でした。むしろ反対派が多かったような・・・。

 伝記小説ですから多少の脚色もあるわけですが、その先人のそのまた先人
の情熱・・・・・病める身体を圧して、とうとう完成を見ずに20代で逝っ
てしまったイギリス人技術者モレル、名も無き現場の土木工事従事者達、そ
してやはり肝臓を悪くしながらも現場で指揮を執り続けた、宏蔵・・・・・・
彼らの苦難の延長上に、あの新幹線をはじめ、現代の日本のあらゆる鉄道が
あるわけです。

 ことに新橋〜品川の遠浅の海の築堤(海だったのぉ!?)と、八つ山(品
川の南側)の切り通しは難工事だったそうで、本開業の前に品川〜横浜の仮
開業にしていたとか(これも初耳)。現代ではこの区間も拡幅されて新幹線
まで通り、どこがオリジナルの部分だったか見極めることこそ出来ませんが、
日本の鉄道土木技術の出発点がそこにあると思うと、都心へ出るのに通るい
つもの道も、ちょっと違って見えました・・・。

 日本の鉄道の夜明け・・・・・・・一読の価値アリ、かなと。



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     深町 忠利 > ふかまちただとし
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