***** 1999年3月17日 15:50:53 *****
[T:26773] Yume no...( Re: SHINKANSEN )



 こんにちは、深町です。


(略:700系には夢が無い、みたいな話があったりして)


 そもそも、0系の時代からして、新幹線電車は「輸送」を担うために
存在しているわけで、あの航空機のような先頭形状(今となっては随分
とずんぐりしているように見えますが)を始めとする車体のスタイリン
グも、高速で「走る」ことの必然から生まれたもの、ですよね。

 どうだカッコイイだろ、というつもりの形ではない・・・・・そして
見る者は、必然の形に魅力を見出し、それぞれに夢を抱く・・・。

 勿論、新幹線に限ったことじゃなくて、あらゆる「道具」に、そういっ
た部分はありますよね。


(略)


 いえいえいえいえ、例えば、消防車やパワーショベルが、果たして子
供向けの演出がなされているのかというと、そういうものではなくて、
それらは本来の目的の為に存在しているだけなわけですよね。けれども
子供たちは、消防車やパワーショベルに羨望の目を向けてしまうわけで
すよ・・・。

 ではそれらの魅力というのは、一体何なのかというと、つまりは

       「演出無しのあるがままに働く姿」

では無かろうかと。勿論メカ的な魅力なんかもあるでしょうけど、「は
たらくくるま」に惹かれる「何か」ってのはある種本質的なもので、大
人達が小賢しい演出をしたところで、それは所詮紛い物でしかないのか
なぁと。

 鉄道の話もまさにそうで、通勤電車であろうと新幹線であろうと、そ
の働く姿に素朴な憧れを抱くんじゃないでしょか。

#となると、保存鉄道の類というのは虚実のギリギリの線にいることに
#なっちゃいますね・・・・・うーん。まぁこれはあらためて。

 これが大人になるにつれ、やれロングシートは不可だの国鉄色じゃな
きゃ駄目だのと、小煩くなってきたりして、ひょっとしたらそれってば、
自分自身でどんどん鉄道を「つまらなく」して行っているんじゃないか
しら? とか思ってみたり・・・・・まぁ人間、長く生きてりゃその分
垢にまみれたりも、するものなのでしょうけど。

 本来的に、鉄道は子供の興味などとは全く別の次元で勝手に存在して
いるわけで、我々鉄道マニアだって、そのくらいの事は重々承知の筈。
しかしその勝手にやってる鉄道の営みに、どうにも惹かれてしまう・・・
・・・・連結シーンなんて、それがブルトレだろうとロクサンだろうと
「こまち」だろうと、素朴にわくわくしてしまうのは、やはり鉄道の普
遍的な魅力を「見出してしまっている」からではないでしょうか。



(略)


 このMLで何度か書いた話ですけど、工業デザインは思想の具現化で
ある、という観点からすると、出来上がったものを通じて、どういう目
的があるのか、どういう事情があるのか、何を目指してきたのか、と考
えることはまさに、その「思想」を汲み取ることでありデザイナー(設
計者)との対話を持つことですよね。

 成長するにつれ、工業製品と対峙しながら、理想と現実との鬩ぎ合い
の中でひとつひとつクリアして行く過程や、人間の知恵、その連綿たる
営みを洞察する目を持てたのなら、それは人間への洞察にも通じてくる
んじゃないかなぁ、と。

#洞察を忘れた人間は、対人的なリスクの少ないインターネットにでも
#閉じ篭ったりしちゃうのかしら?(おおこわ・・・)

 で、一方上っ面だけの娯楽作品には、本質的な思想など無い・・・・・
ヘタするとコマーシャリズムという思想(?)にうんざりすることにも
なりかねづ。(^^;;;(--;;;;

#勿論娯楽そのものは否定されるべきでありませんよ。

 宣伝文句に惑わされない見識、というのは、結局自分で養うしか無い
ですよね・・・・・商品の宣伝にも、作られた流行にも、政治的プロパ
ガンダにも惑わされないような見識を。


(略)


 ちょっと前にも700系の位置付けについてなんだか熱かった覚えが
あるのですが、あらためて私見おば。

 700系、「ゆとり」と言ってるのは、それが居住性についてなのな
らそれは500系に対してなのであって、300系に比べては、どうの
というほどでも無いんですよね? スピードは勿論、300系よりもよ
り安定して高速を出す事が出来る・・・・・。

 よく混同されるのが、車両の性能としての最高速度と、実際のサービ
スにあたる上での運転速度。つまり700系が285km/hで走るか
らといって、300系が270km/hで500系が300km/hだ
からといって、それぞれそれが限界というわけではなく、輸送サービス
の上でのバランス点として設定されているわけですよね。乗り心地や騒
音、それに軌道への影響などなど・・・・・。

 100系の270km/hと300系の270km/hとでは、軸重
の違いから軌道への影響も違うでしょうし、基本的に車体断面の大きな
100系では空力的作用、ことにトンネル通過のそれが問題にもなるで
しょうし、先頭形状からして、すれ違う列車への影響も大きいでしょう。

 100系は、0系を近代化したものでした。0系100番台、と呼べ
そうな車両です。たしかに「ゆとり」に振った設計だったかと、思いま
す。しかし一方で、より高速化することまでは、考えていなかったので
はないでしょうか?

 300系は、0系、100系から大きく前進して、徹底した軽量化と
車体断面の小型化、それと空力的改良を行いましたよね。これで、同じ
軌道での高速化を計りました。実質東海道山陽新幹線の車両は、ここか
ら「次世代」になったのではないでしょうか?

 500系は、さらに高速走行に特化したもので、居住性よりも高速走
行性能寄りにバランスを置いた車両。

 そして700系。これは500系の成果をフィードバックしながら、
300系を発展させたもの・・・・・・かなと。ある意味、500系の
存在が無ければ正当に評価された筈の(笑)車両でしょう。

#300系が Pentium だったら、さしずめ500系が Pentium Pro で
#700系は PentiumII かなと。III までは知りません。(^^;;;;



 ところで、先日のダイヤ改正の中吊り広告を見てはたと思ったのです
が、その広告、700系電車を至近から見上げ気味に捉えた写真だった
んですけど、このアングルで初めて気付いたことに、屋根から運転室窓
回りへ至るラインが、E2系とそっくりなんですね!

 つまり、E2系の鼻っ面にスリッパを履かせると(笑)、700系に
なる・・・。

 何が言いたいかと言いますと、箱型からくさび状に前へ落ちて行く基
本形状から、運転室を盛り上らせるという造形、これはもう新幹線電車
の基本形になりつつあるのかなと。E4系も基本的にはこれです。

 正面からぶつかってくる空気を横へ逃がすと、それがすれ違う列車へ
ぶつかって乗り心地に影響してしまうので、上へはね上げるようにする
・・・・・この考え方は300系から実践されていますが、E2系では
より明確に、そして今回の700系でさらに進んでますね。走る会社は
違えども、同じ流れの上にいるように思えます。



 横道ばかり長くなりましたが、このへんで。(_ _)



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     深町 忠利 > ふかまちただとし with T
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