***** 2001年7月29日 *****
(独り言)



 梅小路で蒸機のライトアップを行うという。何年か前にそういう催しがあっ
たけれど、その時は知らなかったか、他の用事があったか、ともかく行ってな
かった。写真的には、生意気にも「普通の客の普段の目」なんてものに拘って
たりで、「作られた」ものに対しては少し冷めた部分があったりするのだけど、
そんなに突っ張ってもしょうがないな、と近頃ミーハー度の高い頭は考えたり
するのである。ともかく、観に行こうか、気になる犬山橋も寄るとして。

 前日の晩に臨時大垣夜行で出ればいいな、とそういえば今回神領の113系
も投入されるんだっけか、と思い調べてみると、自分の乗る日が、まーさーに
それではないか。実のところ近郊型の、ボックス席よりも戸袋のところの横向
きのシートが好きだったりする私。これはボックスの背に寄りかかりつつ、目
の前に立ち客さえいなければ浅く腰掛けられるからなのだが、春先に傷めて以
来左膝を長いこと折り曲げるのが辛い今において、これは好都合。うむ、空い
てさえいれば、意外や165系一族より良いカモ。

 松本夜行を思い出す・・・。

 駄目なら翌朝の電車で行けばいいや、と余裕かましつつ入線1時間くらい前
に品川臨時ホームへ降りると、結構空いているではないか。土曜日の晩という
のが、中途半端で良かったのか。或いは近郊型を避けた鉄もいるかもしれない。
逆に面白がって選んだ鉄も、いるかもしれないけれど。早速TDR帰りの客な
んぞも乗ってる。

 結局、入線直後はよゆーで全員着席、横になる人さえいた。さすがに発車ま
でには多少埋まってきたが、金曜の夜のように通勤客が混ざってくるようなこ
とも殆ど無く、お蔭で脚も伸ばせるというものである。川崎、横浜と過ぎ、も
うこの先で増えることは無かろう、と眠りにつく。思えば、113系での1列
車連続乗車は、これが最長になるかもしれない。



 岐阜着。臨時大垣夜行は少し足が速くなったので、今までなら名古屋にいる
頃、既に高山線に乗り継いで鵜沼に着いてしまうのであった。夏だから良いよ
うなものの、これが冬の訪問であれば、暗い中足をバタバタしながら日の出待
ち、というトホホな状況カモしれぬ。ともかく今は夏、駅前のコンビニが準備
中ということもあり、早速行動開始である。

 駅の外から回って新鵜沼へ向かう途中、早速元祖パノラマカーを見る。結局
これと、あと1度しか見なかった。あんなに引っ切り無しに来てたのが、遠い
昔のようである。

 さて犬山橋である。橋の袂の道路の方は、すっかり整備が済んだ様子。工事
の柵だらけでどこを歩いていいのやら、といった風情だった岐阜側も、今は縁
石やガードレールで綺麗に区切られ、歩道もちゃんと整備されている。歩道の
柵には実験機「飛鳥」のレリーフが。なるほど各務原市である。

 前回来たのは正月始めだったから、およそ半年の間の動きを見ることになる。
上流側(上り線?)が剥ぎ取られ下流側(下り線?)の単線だった橋は、今度
は新しく敷き直した上流側の単線に変わっている。剥がされた下流側は、丁度
新しい線路を敷く準備にかかっているところか。アスファルトは完全に剥がさ
れて、いよいよもって「たーだの鉄橋」である。上下線の間隔を広げるか?、
という一部の観測は結局外れてしまったようで、従来通りの間隔で敷かれるよ
うである。傍目にはアスファルトが剥がされて判ったことだが、橋の縦方向の
梁、これが元々の設計上列車を中央に寄せ両側に道路を残すように出来ている
のだから、そう易々とずらすわけにはいかないのだろう。

 ゴト、ゴト、と列車がゆっくりと来る。線路が良くなっているので、かつて
のような、ゆーらゆーらといった趣は無い。いずれもっとスムーズに走るよう
になるのだろう。複線に戻される日も近いと思われる。

 端を俯瞰できる山の展望台へ登る。始めてここへ来た時から、すぐ前の松の
枝も随分延びたように思える。もう避けるに避け切れない。天気は生憎の曇り
だけど、橋まではそこそこすっきり見通せる。もうここへ来ることも無いカモ、
と降りる仕度を始めると、元祖パノラマカーがやって来た。このアングルから
の見納めが元祖パノラマカー、良い終わり方であったな、と独りしみじみ。

 2時間近くウロウロしたところで、犬山遊園から新岐阜行の電車に乗る。橋
の上での乗り心地は、至ってフツー、たーだの鉄橋・・・・・あのクルマとの
バトルの日々が、遠い昔のように、感じられた。



 メインディッシュ、梅小路である。ここまでが長い。

 途中色々ウロウロしつつ、こっちの友人と合流したりして、いよいよ京都入
り。西日を避けながら梅小路公園をうだうだ横切ったのは、もう夕方、普段な
ら閉館する頃合である。始め、昼間にスナップをしよかとも考えていたのだが、
以前訪れた際に、あまりの暑さにみんなクーラーの効い場所へ逃げてしまい、
スナップも芳しくなかったのを、思い出したのである(笑)。夏の京都は暑い。
今日は比較的マシとはいっても、それは比較論であって、暑いものは暑い。

 それに、今日は客層も普段と違うハズなのである。三脚持ってるお客さんと
いうのはどうも、絵的にアレなのだ(苦笑)。今日は特別な日だから、そこい
らへん割り切った方が良さそうである。

 さて、中に入る。冷房が効いているので、しばし二条駅舎の展示室から出ら
れなくなってしまった。それでもどうにか勇気を振り絞り、扇形庫へ。ベンチ
や機関車の前で談笑する人達、見るからに「日没待ち」というのがアリアリで
ある(笑)。ナルホド、今宵は濃そうである。中にはカノジョを宥める鉄、妻
子を引きとめるパパ鉄もいることだろう。

 ターンテーブルの側へ出ると、西日に輝く三脚。既にターンテーブルを三脚
林が取り囲んでいた。これは大変である。ただ、機関車を正面がちに撮ろうと
すればターンテーブルとの干渉があり、どこでも良いというわけではない。主
役は予告通りC62 1と、2。それぞれHMが「あさかぜ」と「つばめ」であっ
たか。ターンテーブルを挟んで、庫の反対側に並ぶ。チャンスは夕暮れのグラ
デーション、そう踏んだ私は、構図的に破綻しない範囲で、なるべく東側に陣
取る。丁度三脚林の外れまで回り込んだ。

 日没狙いというと、真冬ならば閉館時刻ギリギリに日没を迎えるので、毎年
それを撮りに出かけている。だから冬の勝手は少々心得ているつもりなのだが、
今回真夏である。日没の方角が大分違う。しかも蒸機とからめ難い方角へ回り
込む。さて、どうか・・・・・カメラをセッティングして、ゆっくりその時を
待つ。

 日没間際、いよいよライトのスイッチが入れられた。空と、蒸機の輝きとが、
ゆっくり、ゆっくりオーバーラップして行く・・・・・いや、写真をせっせか
撮り続ける人間には、それでも早過ぎる気がした。ともあれ夕焼けは色も乏し
かったけど、徐々に浮かび上がってくる金色の蒸機、それは眺めているだけで、
鳥肌モノである。眺めているだけで済ませられないのは、撮り鉄の悲しい性・・・。

 広角で切り出したグラデーション、うまく収まったろうか・・・?

 来年、似たようなバルブ写真の年賀状が沢山飛び交うのだろーか?(笑)

 空が真っ暗になったところで、やや気が抜けてしまった。輝く蒸機を眺める
余裕が出た。2号機だけは有火状態だったのだが、他にもスモークを用意して
演出を試みていたらしい。私は直接見ていないのだけど、背後へ回って来た友
人が、教えてくれた。今回の企画がどのような推移で実現されたのか知らない
のだけど、その熱意に、ただただ感謝。

 そのうち、バックライトが赤に変わった。赤く輝くスモークが、シロクニの
背後に湧き立つ・・・・・異様である(笑)。後に青い光に変わり、なんとも
形容の難しい世界が醸し出されていた・・・・・。光の演出というのは、なか
なか難しいようである。今宵は2晩目、前夜からフィードバックなどはあった
だろうか? 明晩はどうか・・・?

 そうこうするうち、閉館の21時が迫る。空が闇に沈んでからおよそ2時間
弱、あっという間であった。切りの良いところで三脚を畳み、庫の灯りの下で、
荷物をガサゴソ突っ込む。退出を促す声に追われるようにして、そそくさと退
散。ふう、いつもこれだ。

 あれもこれもとはなかなか撮れなかったけれど、良い時間を過ごさせてもらっ
た。この宵の催し、時間外とあって関係者の皆さんには色々ご負担もあるのだ
ろうけど、良き前例として、これからも時々、いやたまーにでいいから、開い
てもらえないものだろうか。手応え次第では、鉄道の日月間の10月あたり、
早けりゃ早速ありそうな気もするけれど・・・・・。



 友人と夕食を共にして、ちょっと飲んで、私は上り「銀河」で帰途につく。
最終「のぞみ」でも帰れそうだったが、ここ2、3年、どうも「ゴロ寝鉄」に
ハマってしまっていることもあり、ここはやはりブルトレなのである。実質日
帰りのような行程で、バタバタと忙しなかったけれど、あっちでしみじみ、こっ
ちでしみじみ、暑い中それなりに、有意義な一日であった。B寝台の上段に転
がり込み、寝床と整えて仰向けになる。ゴトゴトと揺られるにまかせながら、
本日最後の、しみじみ・・・・・夢へ持ち込めそうもないのが、残念である。



(終)