***** 2008年9月21日 *****
(独り言)


 昨夕東京を発った1列車「はやぶさ・富士」は、西を目指す。

 眠っている間というのは記憶に残らないので、なんだか勿体無い気もする
のがこれまた哀しい性なのだが、しかし目覚めの独特な爽快感が、この列車
に身を委ねている間にもたらされたものであったと実感する時、それはまた
睡眠の記憶と言えなくもなく。

 セノハチを下ろうかというあたりで、目が覚めた。辺りはまだ暗いが、す
れ違う貨物列車の、最後尾のEF67に見入ったりしつつ、暫くまた、ぼん
やりと。行程はもう、半分を過ぎてしまった・・・。

 朝の放送は6:00頃からという。岩国到着前から生録を始め、カメラを
持って最後尾へ。朝日と瀬戸内を狙えればという目論見もあったのだが、生
憎の空模様で、情景は青いまま明るくなっていく。せめてもと、しっとりな
風情をぱちり。岩国を発車後、朝の放送。

 徳山から車内販売が始まるというので、徳山に到着するなりホームの前後
をササっと見渡すと、1号車に乗り込む人影が。限定モノの弁当があるらし
く、3号車まで回って来るまで待ってられないので、速攻で前へ・・・・・
と、1号車では既に、デッキから通路まで人が溢れており。先に済ませて後
ろへ向かう人の手には「さよなら0系新幹線幕の内弁当」なるものが。あ!
今日の朝食はコレだコレ。

 でその「さよなら0系新幹線幕の内弁当」を無事手に入れ、自室でまた引
き籠りモードで頂く。あと1時間余りでいよいよ、九州入り。また忙しくな
る前にまた、ぼーっ・・・・・と言いながら、下関と門司でのイメージ・ト
レーニングが始まっていたり(苦笑)。



 下関。夜通し1100kmの長駆を務めたEF66 53が、労う間もなく
離れていく。代わって入って来たのがEF81 410。400番台って何
なんだっけな(ぉぃ・・・・・個人的には銀ガマでなくてはならんのだが・・・
・・・はともかく、この連結をまずは生録。前に録った時は「ガキコン!」
と、ナックルが当たりそれが閉じ、錠が落ちるまで判りそうな良〜い音がし
たのだったが、今日のは「ダン!」と荒っぽく突く感じ・・・・・とかなん
とかいううちに、係の人が拡声器で、列車が遅れているので車内へ戻るよう
にと促す。そういえば閑散としていたホームはいつの間にか人だかりになっ
ていて、毎日々々、こんな光景が繰り返されているであろうことが、窺える。

 急いで個室に戻って、ここでまた関門トンネルの生録開始。このまま置き
去りにして、先頭へ行ってEF81の姿をぱちり。右手に車両基地を望みな
がら彦島へ渡り、いよいよトンネルへ突入。さらば、本州。

 門司に着いて、それっと前へ駆けだすも、なんと機関車はホームの柵の向
こうへはみ出しており。これでEF81の顔はもう拝めない・・・・・HM
付けてんだっけかどうだっけか。そしてED76 66に交代。こちらも顔が
見えづ。HMは前後に付いていたりして(前は見てないが後だけというコト
はなかろう?)、今日は「はやぶさ」運用だけのお役目なのか。

 門司では長駆共にしてきた「富士」ともお別れとなる。その分割される6
号車と7号車の間の貫通扉は閉ざされ、ホームにはこの切り離しを撮ろうと
いうギャラリーで人だかり。「はやぶさ」の乗客はそれを撮ることが出来な
い・・・。貫通扉の窓を覗き込むと、向こうの「富士」のテールマークの上
に、こちらの「はやぶさ」のそれが映り込んでいる。向こう側からはその逆
に見えて、互いに相手を映し合っている。

 共にかつては東京〜西鹿児島を結んでいて、「富士」はその24時間を超
す運転時間と共に、最長距離を走る列車として知られていた。しかしあれは
いつのことだったか、宮崎で「足切り」となり、最長距離の座を「はやぶさ」
へ明け渡すことになる。現在ではどちらもその座にないが、なんとなくライ
バルのように見えていた両者が、今こうやって手を携えて、最後の活躍を見
せている・・・。



 41列車と列番の変わった「はやぶさ」が、門司を発つ。窓越しに離れて
行く「富士」。熊本まできっちり走れよ、大分までもう一息だ、今夜またこ
こで会おう・・・・・互いにエールを送り合ってるような気もしてくる。

 いっそ小倉まで生録を続けるかと、自分の個室に入らずウロウロしてると、
廊下で大声で喋ってるヤカラが。なんでもそのお仲間がさっき、門司で乗り
損ねたらしいが、どうでもいいが他所行ってくんねえかな。

 その小倉を過ぎて、枕抱えて凭れながらぼーっとしていると、列車は博多
の手前で止まり、博多でも少々長く止まり。遅れが遅れを呼んでいるのだろ
うか。中国地方から九州地方にかけての雨のためと説明されていたが、考え
ようによっては定刻11:49以降はロスタイム突入というわけで、むしろ
歓迎(笑)。あ、勿論熊本まで完走はして頂かないと。

 玉名で退避、「リレーつばめ41号」を先に行かせる。本来熊本で接続の
この列車、乗り継ぐには今日は大牟田で降りねばならなかった。

 列車は田原坂を過ぎ、いよいよ城下へ差し掛かる。時々チラホラ見えてい
た、建設中の新幹線の高架も寄り添ってきて、いつの開業だったか忘れたが、
それも近くなってる気配。

 ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!

 汽笛長声。

 ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!

 まただ。入り込んでる鉄でもいるのか?

 やがてゆっくり、ゴトゴトと構内へ入る音が続き、音も無く停止。ああ、
とうとう終りか・・・・・結局、ロスタイムは18分程。到着を告げる放送
が入らないので聊かモヤモヤしたまま暫く待ってみたが、通路側になるホー
ムの音からしてもういとっくにドアが開いている様子で、こりゃ無いのかと
諦めて、荷物をまとめて部屋を出た。ホームへ降り、機関車を見ようと前へ
進んでいると・・・、

 花束?

 機関士氏が花束を受け取っている。定年、というには若そうに見えたけれ
ど、この人にとって今日の乗務は、何かの節目になっていたのだろう。する
とさっきの汽笛長声、親しい人が沿線で出迎えていて、それに応えていたの
だろうか?



 回送を見送り、余韻に浸りつつ改札を抜け、さて、と早速土産物を覗いて
みたり。ばってん荒川の「およね万十」、さすがにもう無いか・・・合掌。

 荷物をロッカーに放り込み、まずは市電から。一日乗車券を買って、一度
田崎橋へ、そのまま折り返して一気に健軍町まで。生録を試みてみたが、クー
ラーが派手過ぎて、ツリカケ音もその向こうに掠れてしまう。まあ、それは
それで。

 水前寺公園、熊本城と駆け足観光モードの後、上熊本行の電車に乗る。な
んでも今日は、藤崎八旛宮秋季例大祭、というのらしく、車窓から見る街は
法被姿が溢れ馬も出てたりと、至る所で大騒ぎ。プァープァー、ドンドン、
と関東から見れば殆ど異国の趣。こんな日とは知らずに来てしまった、巡り
合わせの妙。



 車窓越しに熱気を貰いながら、上熊本着。早速熊本電鉄の方へ行くと・・・
・・・おっ、いるいる、青ガエル!

 デハ5101A。上熊本側がオリジナル2枚窓の方で、つまり今そちらが
見えているのだが・・・・・懐かしさに浸るのも束の間、そのガサガサに老
け込んだ顔に、ぎょっとする。

 再会するのは4年ぶり。あれは丁度緑に戻った直後のことだったが、それ
以来、塗り直してもらえなんだか・・・・・4年前には別件のついでで2度
訪ねた。4月の時にはまだ、水色基調の熊電塗装。その剥げた部分に東急オ
リジナルの(?)緑色が露わになったりしてて、そこから田園都市線あたり
の遠い記憶に遊んだものだったが、9月にもう一度訪れた時が、ATS導入
と共に緑色に戻ったばかりなのだった。

 4年、か・・・。

 すぐに発車するところだったので、まずは乗り込んで、池田へ。

 ここの駅の北熊本側は、すぐトンネル。ありきたりだがまずはこれを、ぱ
ちり。ホームの外れにはコスモスが咲いていて、これを今度は、トンネルの
上の道路から、からめてぱちり。そんなことを繰り返す。

 汽笛が聞こえた。上り「はやぶさ」か。

 前に来た時、お馴染み国土地理院の地形図でアタリを付けつつ、車窓から
も軽くロケハンしてたのだが、次はいつ来るかなど考えてもいなかった。4
年後にこんな形で再訪するとも・・・・・さて、山を越えて、打越側へ。降
る降ると言われた雨はとうとう降らず、結局ただのお荷物になった傘を鬱陶
しく思っているうち、西日がしっかり差してきた。山の東側でも、もう陰っ
ていたが俯瞰。そして打越駅前後の直線で、真正面から西日順光狙い。30
分ヘッドで往復するダイヤがなんとも、こうやって歩きながらには丁度良い
感じで。

 何故かJR九州仕様みたいなしかも手作り風味満点な駅名票の打越からま
た乗って、北熊本。ハスキーやらバケペンやらのド鉄軍団(!)がホームで
待ち構えてて、気圧される(笑)・・・・・そういえば今朝の「はやぶさ」
に乗ってた人達ではなかったか? 市電でもソレと思しき人を見かけたが、
熊本着いたらとりあえず、このへんになりますか確かに。これから半年、こ
のセットでのツアーが流行るかもしれませんな。「富士」だとホバークラフ
トを勧めたい個人的には。

 さて構内の庫には、青ガエルの相方5102Aと思しき、白い車体が見え
ていて。一足先にお色直しか・・・・・するとお次は5101Aも、綺麗に
塗り直してもらえるのだろう。そしてこの状況からすれば、明日も5101A
決定。しかし極めて手前勝手なことを言えば、走ってるのが5101Aの方
で良かった。これと逆向きの5102Aだったら、さっき撮ったアレやコレ
も、みんな平面ガエルになっていたもの。



 夕暮撮影にはまだ早かったのでとりあえず1往復見送り。その間に窓口で、
何か記念になるものはないか訊いてみる。一日乗車券が無いのが辛いのだが
・・・・・で、こんなのだったらあるけど、と出てきたのが「電子閉そく装
置導入 記念乗車券」なるもの。タブレットを模した丸い紙が3枚、それぞ
れ丸三角四角の穴の部分が乗車券になっていて、そこを切り抜いて使うとい
う・・・・・面白かー!(笑) 他には期限切れの昔の切符、それと現行の
回数券。回数券はバスと共通の金額だけ書いてあるタイプで、最も安いとい
う¥100の11枚綴りを。これは実用に供して、残った分だけ記念にすれ
ばよろしい。

 あるんだったら窓口に掲げとけばいいのに・・・・・とうに期限の切れた
記念切符ばーっかりズラズラと、あくまで記念品としてシレっと売ってる会
社だってありますぜい。暫くは「はやぶさ」がらみで来る客もそこそこある
だろうに、隠してちゃ在庫も捌けんでしょうに。

 青ガエルが戻ってきたところで、あらためて長時間露光。ええいもう1往
復・・・・・んー、どうか。これだけの為に三脚持って来たんだけど・・・。

 ホームは光線があまり回らず真っ暗になってしまい、ヘッドライトもテー
ルライトも消えた時間が長くアクセントに乏しいので、撮影は切り上げて、
少し前倒しで上熊本まで生録往復することにする。日曜の夜だから誰も乗っ
てないのではという予測は今日のお祭であっさり外れ、祭帰りの家族連れが
乗ってたりして。子供の声というのはよく耳で拾いやすいのだけれど、天井
では扇風機が回っているので、程々に混じり合って、むしろ「無人」ではな
い生々しさのようなものが得られたか。車体を揺すって吊革がガチンガチン
当たる音も、しっかり入った(笑)。



 一往復録って、藤崎宮へ出て、通町筋の宿へ向かって歩く。初めて来た時、
通町筋で空港バスを降りてこの逆を歩いて、あの時は重装備でえらく遠くに
感じられた記憶しかないが、へえ、こんなもんだっけかと、祭の余韻の今尚
冷めやらぬ風の中をてくてくと、歩く。

 チェックインを済ませ、一日乗車券にモノ言わせ駅の荷物を取りに行き、
ダイエーで値引シール付きまくりな食糧を買い求め、遅めの夕食。そういえ
ば朝の0系弁当以来、昼間ロクに食べてなかったわい・・・。



(続く)