***** 1999年5月4日 *****
(独り言)



 5/3の夜、家に帰るとふくしま氏から知らせが入っていた。

 なんでも明日、ロクニを磨くという。

 今日、通称「MADシェルパ」を磨いていたそうだ。ざんげ岩からは
見えなかったが、私が降りた頃から始めたらしい。たまたま手伝ってて、
明日のことを聞かされたというのだ。

 行くしかなかろう・・・・・知ってたらツーデーパスにしたのにな。



 翌朝早起きして、「文化むら」前に集合する。隊長のMAD.W氏以
下、今日は5人の布陣、磨くのは庫の中にいる54号。あの、「こいつ
が来たら半段絞れ」と言われた、白っちゃけた54号である(笑)。こ
れは磨き甲斐があるというもの。その方法は・・・・・要は垢すり、コ
ンパウンドで表面を少し研磨することで、きれいな地肌を出すわけだ。

 韓国エステとかって、こういうのだったよな。

 ついでだから茶ガマを磨き込んで青ガマに戻す?(笑)

 早速庫に乗り込んで、ボロ布とコンパウンドが渡される。既に少し済
んでいて、「使用前」「使用後」がよく判る。そうかあそこまでやるん
だな・・・。分担場所を決めて、いざ車体磨き開始。

 最初は調子が良いのだけど、やや爪先立ちに手を伸ばしてようやく、
フィルターの下の縁といった具合なので、そういう所になると力が入ら
ず、これが結構しんどい。

#四十肩だったらきっとそんなものではなかろう・・・。

 そのうち腕もアガってきて、もっとラクな方法は無いものかと思いつ
つ、根性無しがバレるのも恥ずかしいので我慢してゴシゴシ磨く。一方
MAD.W氏は手馴れたもので、これがどんどん進む進む。

 流石です。(_ _)



 「文化むら」は営業日だから、一般のお客さんに見られながらの作業
だった。中には飛び入り参加を申し出る人もいて、手伝ってもらった。
きっと、機会あれば磨きたいという人は沢山いるんだと思う。少しでも
深く関わっていたい、触れていたいと、私も思う。

 ロクニが徐々にキレイになっていくのは、やはり嬉しい。しかし一方
で、このカマが確かに現役で働いていた記憶を消し去ってしまうようで
もあって、どこか躊躇してしまう部分も、ある・・・・・なんだか複雑
な気分だ。そして自問する。果たしてこの作業は正しいことなのだろう
か?

 しかし最早このロクニは「かつての」それではない。鉄道車両として
は既に生涯を終えているといえる。そして今いるこの庫は、線路諸共外
界から孤立した、「展示場」なのだ。

 今磨いているのは、そんな「峠の語りべ」となったロクニなのである。
彼にはこれからの彼のあり方がある。私達は、こうしてその再出発に立
会っている・・・。

 もう、いいんだよ・・・・・磨く手に力がこもった。



−終−


補:どうも、何かと面白くなく思う方々がいらしたらしく、その後因縁
  付けられる羽目に。当のロクニは、かなりくたびれた姿で「文化む
  ら」へやって来ていたのだが、その塗装や表記の傷みまで我々の仕
  業と言い出す始末・・・・・事実確認には関心の無い方々のようだっ
  たが、ご厚意の「文化むら」サイドも困惑されたようで、申し訳な
  い思いをした。ともあれ、「文化むら」を取り巻くモロモロや気苦
  労を知る出来事では、あった・・・。その後公式ファンクラブの活
  動が始まり、そちらで手入れが行われることに。