***** 2013年7月20日 *****
(独り言)


 「風立ちぬ」を観た。特にジブリ好きというわけでもなく劇場で見るの
は多分初めてで、題材が題材なので的な。

 堀越二郎と堀辰雄という、傍目にやや強引な合体でもって、しかしフィ
クションならではの奔放さを伴いつつ、物語は綴られて・・・・・方々に、
暗黙の了解のような気配が恐らく結構あって、観る側の知識や教養といっ
たものを試されるようなところが、あるようなないような、そして多分に
それを見過ごしたに、違いなく・・・。

 そんな中、あれがどうだここがどうだと、ケッテンクラート症候群丸出
しでディテールに見入ってしまうのは悲しい性といえたが、飛行機に対し
て鉄道の考証が甘いように思われたのは、気のせいだろうか・・・・・い
つまでも自連化してないような、どうしたのかな的な。

 そして話の流れ的に出ました碓氷峠。陽炎越しにグレーの10000形
が登って来・・・・・ああ駄目だ、野暮な重箱つつきが脳内を占める。

 この時代であれば形式称号改正後でEC40だったハズ。

 色もその前にブドウ色になってたろう。

 ちょっとまて第三軌条はいずこ・・・。

 というかこんな縦曲線は一体どこなの。

 あれれ眼鏡橋のアーチいくつあるんだこれ。

 屋根上にパンタグラフもポールも認められないような・・・。

 ・・・などと野暮も野暮ながら、ED42が入ったかどうかのこの時期、
ここでルーバーだらけのED40が、ぬぅっと登って来た日にゃ身悶えす
るところだが、そこまでは流石にアレか・・・・・「ラピュタ」ではスチー
ムトラムがなかなかだったのに。

 軽井沢の保存機のまんま描きました・・・・・ええ分かってます。



 さて堀辰雄といえば、軽井沢・・・・・文学から程遠いところにいるか
ら、むしろその程度の認識しかないのだけど。(ぉぃ

 横軽廃止の半年ほど前だったろうか、NHKで「消えた鉄道を歩く」と
いう番組があって。当時は「棄景」や「トワイライトゾーン」といった流
れで、廃墟や廃線跡がちょっとしたブームにあって、それに乗った形での
番組だったように思う。4回シリーズで、夕張・・・・・あと思い出せな
いが、それぞれ趣の違う作りの中、もうすぐ仲間入りということでか、碓
氷峠の回があった。こちらは思いっきりブームだったから、そういう側面
も、多分にあったハズ。

 タイトルは「碓氷峠と美しい村」。他の3回とはガラリと趣を変え、堀
辰雄の「美しい村」に描かれる軽井沢の情景を軸足に、そこへ誘う鉄道と
いう位置付けで描かれていたように思う。とはいえ番組の主旨的にはあく
まで鉄道であるから、全線軽井沢にあるかのような趣で、遠山景織子嬢が
沿線に佇んでみたりして・・・・・ただ堀辰雄の生きた時代は当然ながら
アプト旧線だから、煉瓦の遺構の方が相応しかろうにと思わぬではなかっ
たが、雨だったか霧だったかしっとりとした画の中で、たしか丸山変電所
の窓だったろうか、遠山景織子嬢のいるの向うを、さっとロクサンが過ぎ
る一瞬のカットに、この鉄道の儚さを見るように思われて、グッと来た記
憶がある。

 たしかこのロケの時に休憩に寄ったであろう、遠山景織子嬢のサイン色
紙が、玉屋にあったハズ(笑)。

 そこで多少感化されるところあって、堀辰雄の文庫本を買ってみたのだっ
た。今や中を読んだかどうかすら記憶に無い程のアレなのだが、「K村」
の北東のはずれに峠があって云々、力餅がどうのこうの、といった程度し
か、峠には触れられていなかったような気もする。

 その「美しい村」と共に収録されていたのが、「風立ちぬ」だった。こ
りゃあらためて読まねばなるまい・・・・・むしろ今回先立って読んでお
くべきだったか。



(終)