2001.7.2 とうとう丘珠(1/2)
 超割である。我ながら空恐ろしいモノを感じつつ、大島帰りから1日空けて、早速北海道なのである。 目指すは丘珠、今後しばらく熱くなりそうな場所である。

 今回は超割ついでに、往路は函館へ寄って、YSで丘珠入りする算段。千歳から鉄道で行くより早く着くというメリットも、一応ある。 それにしても羽田6:45発、なかなか厳しいものがあり・・・・・ドタバタとどうにか777の機内に駆け込み、セーフ。 本当は屋上からYSを拝んでおきたかったのだが、それも叶わづ。一昨日(6/30)見た2機のその後が、気になる・・・・・。

 座席は窓側と言ったつもりが、何故か中州の通路席。それでも一応、外が見える。プッシュバックが始まり、さてどっちへ進むんだー、 と外を覗っていると、機首を北へ向けた。16Lか16Rか、ともかくこれならタキシングの途中で、YSのいる辺りを通り過ぎる筈である。 進行方向右の窓を注視する。ターミナルビルが終わり・・・・・見えた。どうやら2機とも、一昨日見たのと同じポジションにいるようである。 1機が場所を空けたそこには、勿論ダッシュエイトが。そういや北海道で飛ぶにもツバキ柄なのだろうか?・・・・・という疑問はさておき、 動かした方が我らがJA8772、動いてない方が29、と見えた気がする。また月末から、大島へ飛んでくれる。

 16Lから離陸した機は、これといってイベントも無いまま、函館着。早速荷物(今回は5kgの三脚に脚立にと気合が入る)を再編成し、 最低限のカメラ類だけを持って、手荷物検査に臨む。丘珠から来る便を撮ろうと思ったのだが、送迎デッキはまだ開いていなかった。 そこで待合室からと作戦を変えるも、折悪く手荷物検査が混んでしまってて、並んでいる最中に「ぶーん」と音が聞こえた・・・・・終了。(--;;

 搭乗案内が出るや否や、ゲートを通って進んで行く。途中窓越しにYSが正面から見える。早い人はもう既にタラップを登っている。 思わず写真なんぞ撮っていると、いつの間にか通路に人がいなくなった・・・・・まずい。ビリでわないか。急いで通路を進み、階段を降り、 エプロンへ出る。エアーニッポン351便、JA8744、これが今日相手をしてくれるYSである。進みながらパチパチ、 係の人達がこっちに注目している。あまりウハウハ出来る雰囲気では無い。考えてみれば今日は平日であった(汗)。

 ともあれ機内に入り、自分の座席へ向かう・・・・・カウンターで「後ろの方の窓側」と希望したら、15Aの席を発券してくれた。 後ろから2列目である。エンジンの音が遠くなるとどうかなと思ってそうしたのだが、果たしてエンジンが始動してみると、 これがまたプロペラの空気を切り刻むぶーという振動も少なく、真っ当な神経なら「快適」なのである。故・木村秀政氏であったか、 「実は後ろの方が快適なんですヨ」とどこかでおっしゃってたような気がするが、なるほどここまで下がると、離陸前からして、 プロペラの振動が遠退いているのが判る。随分静かなものである。機内放送もよく聞こえる(笑)。ところで前のポケットに、団扇が入っている。 一昨日乗った大島線では見かけなかったのだけど・・・・・北海道仕様? 北海道〜な風景写真の厚紙で、 持つ部分のプラスチック部品が飛行機の形をしていて・・・・・残念ながら737かそこいらへんのようだけど・・・・・ニコニコ顔してて可愛らしい。 さてそうこうするうち、機は滑走路へ。いよいよ離陸。

 機は東へ向かって滑走し、地面を切った。函館市街上空の旋回を期待していたので、西向きの滑走ならと願っていたのだが、 どうやらこのまま左へ旋回して札幌を目指しそうである・・・・・と、機は右に旋回。おおお? 大きく回って、翼下に函館山が現れた。 ををを! すかさずシャッターを切る。天気は上々、これは幸先が良い。アクリル板(?)のヨレヨレの向こうで、下の方の函館駅付近、 摩周丸も滲んで見えた。そうこうするうち駒ケ岳を後に、もう内浦湾。遊覧飛行みたいだなー、とご満悦モードしてるうちに、お次は室蘭の大きな橋。 さて乗り心地、そのつもりでいないとプロペラの気配を忘れてしまいそうなくらい、静か。風切り音なのか空調の音なのか、ジェットの排気なのか、 ゴォーっという音が大半。ナルホドこれは快適である。と同時に好きで乗る向きには物足りないカモ。これでは殆どジェット機と変わらんのだから!

 丘を越え、山を越え、川を越え・・・・・やがてダム湖の水の如く、谷間まで奥深くびっしりと建物が広がる風景へ出た。札幌郊外か。 平和駅あたりか、貨物ヤードが見えた。これを直交して左旋回、いよいよ最終アプローチのようである。主翼の後ろにいるから、フラップの出る様子がよく見える。 機は減速しつつ高度を下げ・・・・・こんな畑や家のある所に構わず降りて行く。おいおい不時着か? と不安になったところで突然滑走路が現れた。 着陸。小さな小さな丘珠空港。そんな、最初の出会いである。自衛隊だろうか、ヘリがバタバタ煩いエプロンを抜け、ターミナルビルへ。 荷物を受け取り、タグを毟られたところ、これ貰えますかと訊いてみたら、くれた(笑)。なーんだ。 送迎デッキから、今しがた乗ってきたJA8744をパチパチ。やがて再び飛び立ち、また別のYSがやってきて・・・・・ うわこりゃたいへん。丘珠空港、こんなに熱かったとわ! これからの2日間、これは濃くなりそうである。既に消化不良の予感。

 デッキからのスナップも捨て難かったが、荷物を持って表へ出て、32手前ギリギリの場所へ歩く。やはり、「ぐおーん」と仰ぐような写真が、 撮りたいではないか。道すがら、穴を掘っている人達が。遺跡の発掘のようである。へえ、そんな場所なのか。通り過ぎながら、場違いな感じで照れる。 お次は畑、作物は無いようだったがその縁をちょこちょこと・・・・・さて、来た。ギリギリ真正面。滑走路など石を投げれば届きそうなほどの、 本当に「すぐそこ」である。本当にこんな所に立ってて良いのだろーか・・・?、それくらい近い。とにかく撮影の準備をしなくてはならない。 見れば滑走路上には陽炎が立っている。これを撮らないテは無かろう、早速三脚を据え、500mmとT90を出して、据えた。 風を巻上げ地上へ舞い降りる様を、後追いで狙う。

 やがて遠く着陸灯が見えた。真っ直ぐ、こちらへ向かってくる。正面は広角で狙おうか、仁王立ちでカメラを構える。 プロペラの音とジェット金属音の混じった独特の、びーん、という音が高まってくる。その姿はもうはっきりと見えている。びーん、距離がつまる。 ファインダーを覗きながら、来た来た、よしよし・・・・・・ん、ちょっとまて? ここに立ってて良いのか? おいおい大丈夫か? あわわわっ、伏せるかっ!?

 びぃぃぃぃぃぃぃぃぃぉぉぅぅぅぅんんんん・・・・・

 こ、これが丘珠なのか・・・。YSの起こす風に吹かれながら、しばし真っ白になってしまった。近い。これは近過ぎる。 前輪で蹴飛ばされるかと思った。あの、こっちへ向かってくる時の、真っ直ぐ見据えられるような感覚。まるで蛇の前の蛙・・・・・ おおっとこうしてはいられない。三脚にとっつき、着陸シーンを刻む。舞い上がっててピンが合わない。あわわわ。こりゃ参った。 早くも陽炎の向こうでタキシングに移るYS。ゆらゆら、ゆらゆら・・・・・ファインダーの中で、展開される長閑な情景。 或いは遠く「ぶーん」と飛ぶ姿と、今のこの、オラオラ退かんかい!、な緊張感。この妙な落差というか、メリハリというか、巧い表現が浮かばぬが、 なんだかこう、その存在の厚みを見たというか。

 今度は魚眼を持って来よう。(ぉ

 その後、離発着をいくらか撮って、ターミナルの逆サイへ出る。離着陸を横からというのも、羽田より短いレンズで済むといった程度に思えたので、 滑走路の反対側の先っぽを目指す・・・・・正面から着陸灯ギラギラを狙おうか・・・・・と、途中気になる木立。狙いの離陸の時間が近かったが、 なーんとなくステレオタイプな北海道っぽいのが撮れそうな気がしたので(笑)、ここで撮ることにする。曇ってしまって、ちょっと暗い。 同志なのか「そこじゃもう大分高く上がってるよ」と忠告してくれた人がいたけれど、思い浮かべてる構図が違うのかもしれないし、 撮りたいものは仕方が無い。木立の傍のクルマが邪魔で、構図をまとめるのに手間取る。ぶーん・・・あ、やっぱちっちゃいか。

 滑走路の先っぽ。幸い葦(?)はきれいに刈られていて、好都合。離陸は遠くで上がってしまうので、専ら超望遠で正面狙い。 むしろ着陸直後が近くて良いか。露出を切って着陸灯ギラギラ。さてどうか。撮影の合間でぼーっと立ってると、陸自の人なのか、 何人も敷地内をジョギングしてて、すぐそのへんまでやってくる。なんとなく照れ臭い。

 またまた反対側の先っぽへ移動。ターミナルへ寄ってトイレだけ借りる。ずんずんずんずん・・・・・最終便の進入を、 夕闇迫るグラデーションをバックに超広角で下からどーん、というのが今回の狙いの1つであった。ダイヤ的に到着予定時刻は18:55、 予め調べた日没は19:18、夕焼けグラデーションを狙うには、北の地の夏至直後の日は長過ぎた。だが幸か不幸か曇ってしまい、 ギラリ狙いに切り替えることも出来なかったが、夕闇迫る青っぽい沈んだ情景で行けそうではある。それと、昼間はヘリや小型機の音が煩かったのだが、 その活動も終わったようで、これは生録もチャンスである。なんといっても、道路や人家など他の音源から遠く離れているのが有り難い。

 1便前ので、まずはビデオと生録を。マイク置く場所を探してセットしているうちに、降りてくるYSが見えてしまった。 慌ててセットをし、ビデオを構える場所へ向けて走る、走る。ここでいいだろう、と構えるも、息が上がってるわ、手が動機でピクピクするわで、 フレームが定まらない。手ブレ補正も追い付かず、着陸灯に眩んだかAFもスースー往復する始末。ボロボロである。 それでも録音だけはと戻ってみると、まあまあ撮れてる様子。しかしタキシングで物陰になってしまうので、そっちまで考えるとちょっと厳しい。

 次の最終便はマイクの場所を変える事にした。自分のカメラの音を避け、タキシングも捉えるのにエプロンが見える場所に据えようとすると、 折悪く畑でラジコンを転がす人が現れた。止めろと言うわけにもいかず、どうにか間合いを取ろうと歩く。そのうち、進入の向き、タキシングの向き、 エプロンの場所の互いの位置関係まで欲が出て、丁度ターミナルの逆サイの辺りに据えることに。土の場所を選んで、草が風で擦れる音を避けた。 マイクはこれで良し、MDレコーダーを回しっぱなしにして、撮影場所へ戻る。曇り空には良い塩梅に斑があって、表情を作っている。 ここをYSのシルエットがよぎる・・・・・そんな画をイメージしながら、待つ。欲張りでちょっと離れたところにビデオも据えた。 やがて南東の空に輝く着陸灯。今日最後の着陸。まっすぐこちらへ向かってくる。背後に迫り来る、ただならぬ気配を感じながら、 西の空へ向けてカメラを構え、フレームインを待つ・・・・・びぃぃぃん・・・ぶおんっ、風を受けながら連写。広角のフレームの中、 YSのシルエットは舞い降り、闇へ沈んで行った。ちょっとは、手応えあったか。

 出来は判らないけど良いもの見たナ、とビデオも片付け、さて音はと、意気揚揚とMDレコーダーを回収に行く。やがてマイクが見えて・・・・・ あやややマイクは?、盗られた!?、駆け寄ると、1mほどすっ飛ばされていた。風で飛んだ?、いやまさかそんな風など吹いてない。 それより何より、コードが千切れている! あん!? マイクの根元、そしてMDレコーダー本体にさし込まれたプラグの根元。 MDレコーダー本体は、僅かに傷があったが無事。一番金目の物が無事で、まだ録音が続いていた。・・・さて、と考えた。足跡もあり、 これは人間の仕業ではない。足元には、ぐちゃぐちゃに噛み砕かれたコードが散乱していた。下手人は、コードだけを狙ったようである。 虫か蛇とでも思ったのだろうか。そばの草むらでガサゴソ音がしたので、そこいらの石を拾ってビシビシ投げ込んだ。オマエだろう、判ってるぞ!  一応、聴いてみる。録音開始後1分50秒頃、たたたた、と足音、マイクを弄ぶゴトゴト音も無ければ、唸るでもなくハアハアいうでもなく、 いきなしブチブチいって切れた。その後微かに、びー、びー、という虫の息のような電気ノイズがしばらく聞こえ、そして事切れた。 延々と録音される沈黙・・・・・YSの気配どころか、こいつをセットし撮影場所へ移動している最中に、既に勝負は着いていたのであった。 夕闇に包まれる北の大地に、呆然と立ち尽くす己の姿が思い浮かんだ。勿論ロングショットである。

 エプロンへ目をやると、今日の仕事を終えた3機のYSが、並んで翼を休めていた。3機並び・・・・・丘珠名物と聞いていたのだが、 結局この時まで見ることはなかった。昼間、2機並んでもうすぐもう1機降りてくる、と期待させられた場面があったのだが、 1機がハンガーへ引っ張られて幻に終わった。後から思えば、4機あるうちの、今日のフライトを最初に終えた1機だったのカモ。 ともあれ、今向こうで空港ターミナルを背景に、3機が並んでいる。金網を避けるべく三脚を高々と伸ばし、脚立に乗ってぱちり。 長い一日であった。こういう形での撮影なんてのは一方的でしかないのだが、一日中「戯れる」ような気分であった。 明日もこんな一日を過ごせるなんて! もう既に「また来るぞぉ」と呟いている自分がいる。

 脚立から、滑走路脇の草むらで跳ね回っているモノが見えた。犬か。さてはアイツか? 暗くてよく見えなかったが、犬・・・・・ にしては・・・・・まさかキツネではあるまいな!? キツネなんかいるのだろうか。キツネにマイクを食い千切られました、 と言った方が、まあ話としては面白いんだけど・・・・・さて、札幌のヨドバシで代わりのマイク探すかな。