2001.7.3 とうとう丘珠(2/2)
 目覚めると、札幌は雨だった。出発前の予報から、梅雨から逃れて来たつもりだったのだが、陰険な梅雨前線に後をつけられたらしい。 まあいい、羽田では梅雨だというのに週末は尽く晴れや中途半端な薄曇だったから、叶わなかった雨のタキシングをここで狙うとするか。

 といったところで一気に気が抜け、朝一から狙う筈だった話は、ヨドバシ開店待ちに化けた。ワイドショーなどウダウダ見て、 いざヨドバシ。マイクの売り場を覗くも、イマイチ。生録なんて流行らないのか? 隣のベスト電器に至っては話にならづ。 他にこのへんの有力店判らないし、ビデオ用でもとも考えたが、もういいか、と地下鉄に乗る。降りた栄町にヤマダがあったなと入ってみればやはり、 以下同文。生録は諦めるか・・・・・急に身軽になった気も。今日はスチル一本で行こう。

 空港ターミナルへ入り、早速送迎デッキへ上がる。雨は降り続ける。ガラス張りの屋内に荷物を置いて、カメラを持って出たり入ったり。 ラフな感じのおじさんが暇そうにずっと屋内から外を見ている。その横を行ったり来たりな私。濡れたゴム底とリノリウムの間で、 キュッキュッと鳴る音がやけに響く。今日は昨日と風が逆向きで、離発着は14。するとタキシングの向きも変わり、駐機の向きまで違う。 YSは右舷をこちらに見せて止まり、乗客は鼻先を回り込むようにして乗り降りする。ANKの用意する傘がYSの鼻先をぐるりと連なる。 絵的に面白かったのだが、レンズを取り替えモタモタしてたら、列は既に短くなっていた・・・・・悔やまれる。 その後雨は止む方向へ行ってしまったから、もうチャンスは無かった。そうそう雨狙いで来られるものではないし・・・・・ ひょっとしたら、ゆくゆく一期一会を噛み締めることになるのカモ。マイクなんか放っておけば良かった。

 さて。その355便函館行が予定を少し遅れて出発、滑走路の北西へタキシングして行く。滑走路の手前で止まり、 しかしそのままなかなか入ろうとしない。あ、函館発の354便の着陸待ちか。12:30頃、そんな頃合である。これは2機を一緒に撮れるか、 とカメラを構えて待つ・・・・・随分待った気がしたところへ、354便が現れた・・・・・いや、ちょっと高くないか?・・・・・ ぶーん・・・・・着陸復行。ありゃりゃ。354便は、たちまち低い雲の中へと消えて行く。その間に355便は離陸してしまうのかと思いきや、 これがまた随分待たされて、354便が一周してくるまで釘付けとなっていた。ますます遅れる355便。ようやく354便が戻って来て、2機からみでぱちり。

 降りてくればタキシング。幾度か狙ってみるも、着陸灯を点し濡れた路面でそれが反射する様なんてのが良かったのだが、 着陸後すぐ消してしまうことが多く、点いてても3灯だったり1灯だったり、なかなかどうも。これもまたの機会に持ち越しか・・・・・。 それでも、駐機の向きが違うことから、昨日とは違うアングルで撮れることは撮れる。乗客が降り終わった時のCAの親指立てサインや、 機長のエンジン始動のサインなどが向こう側なのは残念ながら、少し勝手が判って来て、パチパチやって過ごす。誘導員なんかも追ってみたり。 リズムを覚えて、次へと繋ごう・・・・・力抜けるとそれはそれで色々見えるし。昨日がそこそこ良い気分になったから、そんな余裕もあるのか。

 雨が止んでしまった。舗装も乾いてきてしまった。ただの曇りでは面白くないので、荷物を再編成、いくらかロッカーへ預け、 外へ出て14進入の滑走路突端へと歩く。ずんずんずんずん・・・・・せいぜい20分くらいなのが丘珠のあり難いところ。 また陸自のジョギングの人を意識しながら、着陸2本、離陸を1本。着陸灯を霞みに滲ませながら向かってくるのを撮りつつ、 力抜けてるついでで、フィルムを換えレンズを換えカメラを換え、パチパチと。離陸では一旦こっちへ向いてタキシングしてきて、 くるりと180°ターンをして出て行く・・・・・ファッションショーのような流れを、カメラで追う。

 全てのYSが帰ってきての3機並びをどうしようか・・・・・送迎デッキで画角的に収まるのか?、そもそも何時までいられるのか? ・・・・・とりあえず戻ることに。ところでロビーのテレカの自販機に、丘珠空港の記念柄があるのを昨日見付けてたのでこれを求めたのだが、 絵柄的にはターミナルビルと、空にはおーいどっちへ飛んでんだー?、なYSの合成。よくある感じではある。2枚ばかり買って、なんとはなしに裏を見ると、 片方にNTTの文字が見当たらづ。しかも沖縄支社とある。はて? まさか電電公社時代に作ったものでは・・・・・印刷の具合の妙なテカテカと、 この裏のバラバラ具合、するとアレか? 元々別の絵柄のものだったかフリーデザインの古い在庫に、刷ってるのだろうかこれは。細かいことではあるが。

 エプロンには今日の仕事を終えた1機が佇んでいて、既に寝支度を済ませている。そこへもう1機、乗客を降ろし、クルーも降りて、 入れ代りに整備員達がYSに取っ付く。エンジンのカバーを開けて何やら覗き込んでいる。輪止めをかける。 舵に固定具を取り付ける・・・・・そういえばこんな作業を目の当たりにするのは初めて。寝泊りする施設というのは限られるけれど、 その中にあって羽田ははるか遠くで見えないし、伊丹ではなんとか見られそうだけどタイミング的にか見た覚えがない。ひょっとして、 こんな風に作業を「見学」出来てしまうのは、この丘珠と、他にそうそう無いのではないか・・・? 情景が青味を増して行く中、 すっかり支度は整い、整備員達は引き上げ、YSは眠りについた。エプロンを風が通り過ぎて行く・・・。

 あと1機、帰ってくる・・・・・まだ時間があると思っていたら、やけに早く降りて来たYS。時刻表にも無い。都合4機いるから、 もう1機最後のが降りて来て、それまでに1機ハンガーに入れるのだろうか? とりあえずカメラで出迎えていると、案内放送・・・・・ 「只今を持ちまして、函館行きは欠航となりました。ご搭乗予定だったお客様は・・・」 ・・・・・んん? さっき滑走路の端で見たのが最後の離陸だったハズ。どうも、函館方面でダイヤが乱れていたようである。 そういえば昼に来た時、函館行が遅れていたではないか。そして今の便が今日最後の到着となり、本来より30分ほど繰り上がってしまった。 今目の前に、YSが3機並ぶ。さすがに、3機を一堂に撮るのは、ここからでは無理のようだ。20mmでも、一方は尻尾だけにするか、 鼻だけにするしかない。最後に着いた機に整備員が取っ付き、寝支度をはじめる。毎日毎日繰り返されたであろう営み、 こうしてまた一日が、終わる。

 誰も追い出しに来ないのでかえって不安を覚えつつ、階下へ。人気の無いロビーを抜け、既に片方の出入口に鍵がかかっていたのでもう一方へ回り込んで、 外へ。市内への直通バスは、とうに行ってしまった。それでも持ち時間はまだある。まだ行ってみてなかったが、 外から回り込んでエプロンのすぐ横に出られるらしいことを思い出し、それらしき道へ。3機並びの見納めである。ここかと歩いて行くと、 果たして、金網越しにそれが見える場所へ出た。3機がやや斜にこっちを向いて縦に並んでいる。考えてみると昨日の向きでは皆お尻を向けていたわけだから、 やはり、なんだかんだ言いながら、縁に恵まれていたのかも、しれない。ますます青味を深く、夜へと沈み行く丘珠空港。 そこに白い機体を浮かび上がらせる3機のYS達。脚立に乗って金網を抜いて撮ったりしながら独り、彼らを密かにねぎらう・・・・・ なかなか濃いぃ2日間であった。この先ブームも高まるだろうしなー、何かと難しくなるかもしれないなー、 自分のことを棚に上げてそんな不安もありつつ、暇乞いをしながら再訪への誓いを新たにするのであった。