2002.3.5 丘珠再訪
 超割予約した時点でこの日程の空模様など知りようも無く、雪像の溶け出した「雪まつり」のニュースなんぞ見ながら、ちょっと残雪でも残ってたらお慰みかな、 くらいに考えていた。知人に現地の事情など聞いたりしても、そもそも寒さへの感覚など違うのだろうから(笑)、なかなか実感としては難しいものがある。 で、丘珠再訪。8ヶ月ぶり。前回での諸々を踏まえて、今度はああしよう、こうしよう、などと思案の挙句、今回ハンディカムは無しでスチルに絞りつつ、結局荷物は膨らむ謎。 いや碓氷峠あたりでやってたコトからすれば大した量でも無いのだけど、まあそのようなわけで、空港でこの重いリュックを預ける際など、 係員がうら若き女性だったりすると少しばかり恐縮。尤も一瞥するなり「自分で運んでください」みたいなコト言われれば、その瞬間チャラなのだけど。 ともかく予報では、雪がらみの場面がありそうな無さそうなという微妙なトコロであった。ま、雪と縁が無かったとしても、帰れなくなるよりはマシなのだが・・・。 まず予定通り帰れること、これが最重要事項。とほほ。

 頑張って早起きして、京急に乗り、鉄的に蒲田の工事を気にしつつ、羽田へ。今日の装備に東京は些か暑過ぎた。独り汗かくおまぬー。搭乗ゲートへダッシュした前回とは違い、 今回よゆーのよっちゃん。よゆーついでに屋上からYSチェックでもと思いたいところなれど、例の事件以来、これが送迎デッキに8:00まで入れない・・・。 ともかく機内持ち込みアイテムを分けて、早いとこチェックインせねば。窓側席からタキシング中にYSチェックする算段・・・・・これを無事に確保。 見たところ16向きの離陸のようで、席は右側だから・・・・・よしよし。よゆーかまして搭乗ゲートをパス、まだ売ってるんだなの羽田限定「ビッグウィング」コーヒーなどを所望しつつ、 これから乗るB777をパチパチ撮ってみたり。ん、トリトンブルー塗装の、レドーム部分だけグレーの喫水線(をゐ)位置が高い? ここだけ別の機種用じゃあるまいか? ・・・・・そうこうするうち時間になって、搭乗。

 いざタキシング開始、右手の窓をひたすら覗き込む。周囲を見回すと1/4くらいしか席が埋まっていないようで、他の人は皆死角。人目を憚ることもない。さあ、そろそろ、そろそろ、 と思っていると、くい、と右へ曲がってしまった。あん? くそっ、クランクして管制塔に近いルートを採っちまったか。向こうの左側の小さい窓から、ダッシュ8の椿が認められ ・・・・・YSはどこか? いるのか? いないのか? C滑走路へ向けてまた右折。今度は右手に見えるハズ・・・・・む、あれか? JA8735、と読めたような読めなかったような ・・・・・うーん。16L離陸間際、駐機場にオリンピック航空のA340(?)を認める。なんと。

 逆方向であれば機内で「奥様は魔女」が観られたのだが・・・・・はさておき、トランジットの函館着。前回、ここで次への搭乗待合室への入口で並んでいる間に、 「ぶーん」と聞こえてきたのであった。音の主は勿論、丘珠から飛んできたYS。もたもたしていて見逃したのが口惜しい。今回は荷物の仕分けをとうに羽田で済ませたから、 とっとと搭乗手続きを済ませるのみ。座席は5Dと。主翼の前縁の、ちょっとだけ前。プロペラも下界もよく見えて、悪くない。待合室から窓越しに待ち構えていると、 やがて丘珠からのYSが降りて来た。今日はJA8729、初めて乗る機体。22、72、44ときて、これでANKばかり4機目になろうか。

 いよいよ搭乗開始。前回真っ直ぐターミナルに頭を向けていたけれど、今日は右舷をこちらに見せている。風が強いとか、そういう理由なのか?  そんなところをガラス越しに撮ったりして、前回あまりウハウハやってて乗り込むのがビリになった反省から、適当に切り上げてエプロンへ出る。大丈夫、ビリじゃない。 毎度のコトながらパチパチやりつつ前進、タラップを上がって、5Dに納まる。隣は空席。気兼ね無く窓を独占出来る(笑)。やがてエンジン始動。 そういえばYSで右舷に乗るのは初めて、それで判ったのが、先に始動する右舷のエンジンに近いために、後から左舷のエンジンが始動する音がよく聞こえないということ。 なんとなく勿体無い気がする・・・・・んなことを思ってると、我らがYSはタキシングを開始、CAさんの救命胴衣の実演などを眺めたりするうちに滑走路までやって来て、 離陸。西向きに上がって、すぐ右旋回、今回は逆サイだから函館山も見えないか、と諦めかけていると、上昇しながらぐるーりと360°、をを、見えた見えた。

 352便は遊覧飛行のように飛びながら北へ向う。 尾根を境に北側が白く南側が茶色い風景に、春の訪れを想ってみたり。と、機長から挨拶。YSで機長の挨拶なんて、 これまであの、大島でゴーアラウンドかました時しかなかったから、なんとなくわくわくいやーな予感を覚えるも、札幌は小雪が舞っているような具合なので揺れるカモと。 ナルホド。視程が悪ければまたあのオプション・メニューが、などとヨカラヌ期待。高度10000フィートというから、富士山より低い。 富士山では真下に町が見えることなど無いけど、眼下に広がる景色はまことに近い。本当に遊覧飛行よろしく、左手には駒ケ岳が見え、やがて洞爺湖が、などと放送。 生憎こっちは右舷席・・・。札幌が見えようかというところで、下界が白く霞みだし、やがて本当に真っ白になってしまった。どこをどう飛んでいるのやら判らないでいると、 突然海に出た。んん? 石狩湾であろうか。ぐいーと回り込んでまた陸地の上に入って行く。心なしか地面が近付いてくる。をを残雪バッチリ。どうやら14へアプローチする感じ。 やがてどんどん地面が迫ってきて、札沼線らしき列車が見えた。間違い無い。そして丘珠空港に着陸。ああ、今日は風向きが逆なのかな、と既に頭脳は今日の撮影プランを練り始める・・・。 雪は残ってる、薄日の空模様はどうしたものか。

 到着ロビーから送迎デッキへ直行。カメラ持った先客が2、3人。そのうち1人とちょっとお話。プロですかと訊かれる・・・・・無論素人の道楽なのだけど、 でかいリュックに三脚に脚立、何だこいつと思うわな・・・。雪で判り難いが丘珠空港は何やら工事をしているようで、その人の話では滑走路南端の金網エリアが広がって、 以前ほど近寄れなくなった由。そういえば前回何やら考古学方面な発掘作業をしているようだったけど、 ああいうのはそこで間もなく土木工事が始まることを意味している場合が多々あるわけで・・・・・うーん。それにしても、見たところその金網はよそと比べたらまだまだ近そうで、 「前輪で蹴飛ばされそう」な感じには違いないカモ。デッキからのスナップもほどほどに、離着陸の方向は32になったしで、早速そっちへ向う。

 その小道は途中まで除雪してあったのだが、雪の山で行き止まりとなっていた。それを回り込んで、ザク、ザク、といざ、雪中行軍。粗目雪を踏んで行くと、 時々膝までズボッとはまった。下の方が融けて無くなっているのである。生き残り頭脳ゲームを思い出しつつ、ズボッ、ズボッ、を繰り返しながら、 日頃殆ど発揮させようともしない、「根性」の2文字をこんなところで浪費しつつ、ひたすら前進。いつしか空には晴れ間、平日に雪焼けというのもなー、とフードを被る。(ぉ  ようやく、滑走路南端着。金網沿いに歩いてきたのだけど、ナルホド金網が新しい。滑走路も心なしか、数十m遠退いたようにも。 雪の上に脚立をそのまま立てるのは難儀なれど、踏み固めてどうには立ててみる。そうこうするうち着陸してくる便が。とにかくまず、魚眼で至近から仰いでみたかった。 前回魚眼を持って来ずに後悔したのである。秋に松本空港でやってはみたが、まだまだ遠かった。さて・・・・・

 ぶぃぃぃぃぃぃぃぃぃおぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅぅんん

・・・・・どうか? すぐさま超望遠に持ち替えて後ろを狙うも、脚立が不安定だし集中出来てないしで、うまく行かづ。出来ないことはすべきで無い。ここで少し粘って、 滑走路北端でもまたズボズボはまったりしつつ撮るも、どうも手応えが芳しくない。うーん、どうも、地に足が着いてない感じ・・・。何か忘れているんじゃなかろうか。

 そうこうするうちに日は暮れてきて、また南端に戻る。アプローチする機に西日は望むべくも無かったが、それでも夕闇ギリギリのところで狙おうと考えた。 風が吹く中、生録も試みる。いつものマイクにバンダナぐるぐる巻きではボコボコを抑えられず、大きいシリコンクロスも使うがこれも今一つ、 そこいらの雪で風除けを作りながらマイクを据えるも、定位の都合もあるしで、音源の方から吹く風を防ぐのは、どうにも難しい。そんな無理矢理生録も交えつつ、 ああでもない、こうでもないと撮るも、やはりどうも、なーんか手応えが・・・。まあ、じたばたしても始まらない。・・・と妙な余裕は、 達観か、またまた再来を決しつつある表れか・・・・・。ともかく、日も暮れて撮影はもうおしまい。次の最終の函館からの便は、録音だけしようと考えていた。 光跡のバルブ撮影もちょっと浮かんだのだけど・・・・・風向きからして、送迎デッキでならどうだろうと思い、人もいなさそうという読みでターミナルビルへ向う。

 と。今まで注意を払っていなかったのだけど、エプロンの黄色い照明に、大きな垂直尾翼の、見覚えのあるシルエットが。1日の仕事を終えて、先に休んでいるYSである。 以前は小型機がそこにいたと思うが、今はYSが、送迎デッキ正面から移動して、ここで休むようになっているらしい。ん、これだ。撮影機材は片付けてしまっていたが、 またがさごそとかき回し、今回使い道があるのかどうか判らなかった三脚を立て、そこにカメラを据えた。自信が無いので段階露光・・・・・しかし、なんだか今日一日で、 今この時間が最も充実しているような。実際、レリーズする指先が喜んでる・・・・・何の変哲も無いバルブ写真ではあろうけれど、まず情景が目の前にあり、 それを生でしみじみと眺め、五感で受け止めつつ、その傍らでいわば「お持ち帰り」を作る・・・・・そういう時間を忘れられないのが、写真を止められない理由の一つではある。

 おっと、こうしてられない。機材を片付け、ターミナルビルへ。んが、生憎既に鍵が。最終便までは開けておいてくれたと思うのだが、前回はもっと遅い時刻までいられたのだが ・・・・・閉まっているものは仕方が無い。さっきの場所へと戻るべく、急ぐ。歩きながらエプロンが見えてくる頃には、アプローチするYSが向こうを横切るのが見えた。 南へ回り込んで、180°回って降りて来るまでに、もう時間が無い。この先の雪道に走る気力もとうに失せ、さてどうしたものかと逡巡するうちに、とうとう着陸灯が点いた。 もう、間に合わない・・・。

 録音も撮影も考えずに、ただ眺めることに決めた。思えば今日はゆっくり眺める間も無かったから、むしろそれが有意義に思えた・・・・・まだほんの少し青い色彩を残す闇の中、 そこへ浮かぶ空港は、煌煌と空へ歓迎を示す。接近しながらYSは、安堵するように徐々にその姿を浮かび上がらせ、そして光の地上へと、舞い降りた。 そのまま向こうへ駆けて行き、制動、プロペラの刻む音が変わるのを聞きつつ、しっとりとした余韻に暫し浸る・・・・・さて、と荷物を背負い直して、眠りに入る空港を後にした。