2003.3.6 千歳
 試される大地に再び試される時が、やって来たのである。

 昨年中標津で、下半身がジーンズだけという井出達で震えて佇んでいたことを、友人に「北海道をナメ過ぎ」と窘められた私は、 用意万端・・・・・とはいけず、せめての気休めに下に履くタイツを買い込んだ。まあ無いよりはマシであろう。今回は雪中行軍を覚悟、 以前南部縦貫鉄道訪問の折だったかに購入した、カンジキをリュックに押し込む。これも小さいので心許ないが、無いよりはマシであろう。 それと・・・・・あ、カイロ。うーむ期限切れのが2つばかり、部屋から発掘される。無いよりはマシであろう。あと、今回長靴を。 往復の途上で些か小っ恥ずかしいが、靴の中で足がぐしゅぐしゅになる惨めさを思えば、構っていられぬ。思えば随分と長いこと、 長靴というものを持っていなかったので、DIY店で物色。見るとオカモト製、なるほど漏れないことでは定評である。(ぉ

 今回ANAの6:30発の便で発つというのに、こんな時に限って前日カイシャで面倒に巻き込まれ終電の帰宅。そんなこともあろうかと、 ちびちび荷造りなど済ませてあったのだが、にしても睡眠時間が足りないとかを通り越して、残り時間的にもう、寝るのが怖い。 うつらうつらとして、重い身体でのろくさのろくさと支度、よいこらしょ、とリュックを背負い、三脚持って脚立持って、いざ・・・・・ って例によって遅れ。乗ろうと思ってた電車に間に合わないではないか。ええと次の電車は何分だぁ?、チェックインはなんとかなっても、 またボーディング直前まで全部持ち込むのは、もう勘弁・・・。焦りまくりでようやく駅、ひゅー、京急エアポート快特が滑り込んできた!  気力を振り絞って階段を駆け上がる。うぅぅ・・・セーフ。北海道仕様の井出達のまま、汗ダラダラ・・・あふあふ。

 出発からこんな調子なのは殆ど毎度のことながら、どうも今回は暗示的なような、気も・・・・・ともあれ機中の人となり、一路千歳。 ここなら寝過ごす心配も無いので、少しだけ睡眠補給・・・・・目覚めれば室蘭の辺りが見え、もう着陸間近。白い大地、空はドピーカン、 これは幸先がよさそうではないか。着陸後のタキシング中、窓からYSの姿を探す。うーむ駐機場所はどこなんだろか。 HACのSAABの見えた辺りも目を凝らしたが、そこでもないらしい。ひょっとして自衛隊の基地の方まで回り込んだ方なんだろか・・・?

 すぐに女満別行きが発つのでこれを見送るべく、送迎デッキ・・・・・は冬季は閉鎖中と。ちぇっ。季節柄致し方ないのであろうが、 丘珠や他の空港のように、一部だけでも雪かきして入れてくれたって良いじゃん、手前勝手なコトをぶつくさ言っても始まらないので、 まあ滑って転んで因縁付けてくるのも、いるかも知れんケド・・・と他を探す。しばらくウロウロした挙句、結局、 スプリット・オブ・セントルイスの後ろの窓から見送ることに。ちょっと汚れてるが、構ってられづ。

 そろそろ時間の筈なのだが・・・・・iモードで運行情報を取ると、もう出てしまっている由。うっそぉ。 まさか小さいのは自衛隊の方の滑走路から飛ぶんじゃないだろな・・・・・いやいやさっきHACのSAABだってこっち使ってたじゃん ・・・・・などと思案しつつ、もう少し待ってみるべかと粘っていると、ふ、と現れたYS。10分以上も一体、どこで道草食ってたんだろね。 左手即ちターミナルの北側から出てきたから、あとであっちの方をチェックしておこう。

 YSは滑走路に沿ってタキシングして行き、やがて折り返すようにしてRWに出て、滑走をはじめた。ぶぅぅぅぅぅぅぅんんん・・・・・・ ああ、久しぶりだよね・・・。

 三脚をロッカーへ預け、ターミナルを出る。駐車場を突っ切る回廊へ。北海道の生の空気に初めて触れる。ううっ、それまでの汗がすっと引く。 長い回廊を抜けて、その先の道路を渡って降りた辺りに、小さな公園が。雪に埋もれてよく分からないけれど、 小さい丘がフェンス越しの視点を提供してくれる気遣いがうれしい公園。見れば向こうで、T4やらF15やらが、ゴーゴー飛んでたり。 さてYSはどこに駐機していたのか。出て行ってしまった後では判るわけも無いが、この辺り駐機場のようだから、 またあとでチェックしに来るとしよう。

 しばしぼーっと基地の方を眺め、次の稚内発の着陸を狙うべく、滑走路南端を目指す。しばらくは道路を歩いて、 どこかで脇道に入るようなのだが、この雪である。どこが道なんだか、何なんだか。これはと思しきところへトライしてみるも、 程なく足が膝上までズボズボ嵌まって、前進が困難となる。日頃使わない所の筋肉が悲鳴をあげ始める。そこでっ!、カンジキィ〜。 えんやこらえんやこらと足に嵌めてみるも、やはり小さいからか、気休めにしかならづ、ずぶ、ずぶ、ずぼっ。むぅぅ、変わらん。 どう考えてもこのペースでは、肝心の撮影もままならづ。雪遊びしに来たのではないのである。ひとまず撤退・・・。

 またしばらく歩くと、今度は車の轍のある明らかな脇道が林の中へ。もう滑走路南端まで来ているあたりだし、どうもアヤシイ。 これなら行けそうカナとこれを辿る。程なくして、クルマが止まってる。少し行くとまた1台。アヤシイ。実にアヤシイ。 足元を見れば、スノーシューらしき足跡が奥へ。うーむこれは、ますますアヤシイでわないか。幸いさっきのような吹き溜まりではなく、 しばらくカンジキ無しで快調に進む。人とすれ違う。「撮影ですか?」と訊ねてくるその人の井出達は釣り風。 そういえばスノーシューとか履いてないし。きっとあの足跡は先客に違いない。途中からカンジキを履く。しかし、 どれほど進めばポイントへ出られるんだか。そろそろ稚内からの便が着いてしまうでわないか・・・・・iモードで情報を取るともういけない。 開き直って、雪の林道から空を横切るYSか・・・・・とかいってるうちに来襲。おいおい今見た情報より随分早いじゃん。

 諦める私ではないのである。ダイヤ的に15分後の女満別発がある。僅かな時間しか残されていないが、01L南端を過ぎ、 ともかく前へ、前へ。しかしこれもどうだか・・・・・決断の時である。開き直ってワイワイワイドで自分撮り。まあ、私的記録は身上なれど・・・。

 今回って駄目カモ。

 ともかく、足跡はまだまだ先へ続く。もう到着便は夕方の1便しか残ってないが、こちらも意地である。この行く先を見届けねばならぬ。 01Rを回り込む頃、いかにもソレな2人組とすれ違う。足元にはスノーシュー。こんちわーと挨拶してすれ違いつつ、 どことなくプロっぽい風情が気になりまくり。そしてようやく、それと思しき場所へ出る。南の都会っ子の目に映るそれは、最早「雪原」であった。 うひょー。軟弱な身体には聊か過酷であった、重い重い荷物をドサっと降ろすと、体がふわりと軽い・・・・・あー、三脚まで持って来てたら、 どうなってたことか・・・・・なんだかちょっとハイ。時々ズボズボ嵌まりながら、カンジキでそこいらを歩き回る。 そのうち身体の火照りが収まって来ると、北から吹く風が寒い。これは置いて来なかった脚立に腰掛け、風上に背中を向けて縮こまるのがなんだか惨め・・・。 そのうち稚内行の出発。01Lからの離陸はここからではどうしようもなく、投げ遣りにぱちり。また1時間くらいうーうー言って女満行もそんな調子。 やる気無えな。

 北海道をナメ過ぎ・・・・・うーむ、今回もナメてしまったか。雪だるまでも作れば温まると思ったのだが、息が切れる割には労多くして実り無く。 ならばとにかく遮蔽物を・・・・・というわけで、小さな木の枝に持参の新聞紙を風圧で貼り付け、下の方はさっきの雪だるまを元手に壁を作る。 下は少し掘って姿勢を低く出来るように・・・・・どうやらこれで、陣地らしきものになった。あー、なにやってんだろ。

 ふと気付くと、政府専用機が飛んできた。ををさすが千歳だと見送る。風に背中向けているのでその先を追おうともしなかったのだが、 暫くするとまた政府専用機。やややっ、2機で羽田から帰ってきたのか?、と思えばまた暫くして政府専用機。あん? 振り返ると、 タッチ・アンド・ゴーかましてやがった。ううかっちょえぇぇ・・・。さすが地元。

 最終女満別発の到着は、日没時刻に近かったのでちと期待をしていたのだが、情報を取ると少し早まってしまったようである。 幸いにしてピーカンな今日にあって、僅かな時刻の違いが、空を彩るグラデーションの表情を変えてしまう・・・・・。 色々考えた挙句、望遠で寄せるのは止めにして、雪とグラデーションに、シルエット、で狙ってみる。やがて現れるYS、びぃぃぃぃぃ・・・・・ よーし来た来た・・・・・おぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅんんんん・・・・・ああ、この余韻が。遠くで、ぶおぉぉぉぉぉという音が風に運ばれてくる。

 これで今日の運行はおしまいである。んがしかし、01Rの照明が撮りたくて、暗くなるまで粘る。どんどん暗くなる帰り道は、 こんなに歩いたんだっけかと、道路が遠い。結局1時間。そこから空港までの道がまた、長い。

 いよいよ空港ターミナルというところで、さてYSはどこに、と今朝寄った公園へ寄ってみると、なななんと目の前でタングステン光の照明に、 YSが浮かんでる。もう、さあ撮ってくださいと言わんばかり好位置。中望遠級でよゆーのよっちゃんなんである。それはもう、 昼間の挫折を忘れさせる程の・・・・・本当に、昼間のあれ、どうせ撮ったってつまらん写真だったろうよ、とむしろ酸っぱいブドウ症候群。

 三脚はターミナル内のロッカーなので、まあ夕食でも済ませてから、とよゆーかます。 ステレオタイプというかいかにも北海道な具がてんこ盛りのラーメンに冷ややかな視線を送りつつ、なんか知らんがカレーラーメンとやらを。 これにライスと餃子。勢いとはいえ、昼間の運動分はすっかりチャラと思われる。食事後にロッカーへ行ってみると、これが開かない。 おっかしーな、おっかしーな、隣の閉めちゃったのかな、などと思案する目に、腹立たしい文言が映る。12時間毎・・・・・あんだよ。 しかも食事してる間にチャキン、であった・・・。24時間空港ならではのルールか。ともかく三脚は返してもらわねば困る。 バルブだけはしなくてはならぬ。300円(意外と安い)を叩き込み、再びフル装備になったところで長い回廊を歩き、公園に戻る。 戻ってみたら移動してて・・・・・というオチは幸いにして無く、相変わらずそこに佇む、JA8761。先ほどシルエットで狙った機体が、 一日の仕事を終え、じっと底冷えに耐えていた。段階露光をしまくりながら、ひょっとしたらこの時間が今日の最高な時なのかも、 と思い始める・・・。結構こういうじっくりな時間が、時折恋しくなる。

 電車に乗って、ようやく札幌入り。本来ならこのまま宿へ直行するところなれど、まだまだやることがあった。コンビニに寄るのである。 例の、タイムスリップ・グリコ捜索。先行発売なのか何なのか、目下こっちまで来なければ買えないシリーズを押さえるのも、 今度の渡道の重要なミッションなのであった。たしか駅前にローソンが・・・・・と入って行くと、いしなしある!  カサコソと箱を振ってみたりするも、中身の様子は杳として知れぬ。ええい決めたと、4つばかりカゴに放り込む。

 宿へ入って、早速グリコを・・・・・さあてどれから開けようかなー・・・・・1個目、中の袋をすぐ開けるのもつまらないので、 袋の上から指で摘んだりして中身を探る。ふむふむ、この薄っぺらい感触は・・・・・いきなしビンゴか!? はやる気持ちを抑えつつ、 震える手でそっと開けて、ご対面〜。くぅぅぅ。苦戦は覚悟の上であった。10個や20個は予定内と腹を括っていたのである。 今回も道中で折を見つけては買うつもりでいたのだが、1個目でいきなしとわ。やはり気迫であろうか?  他にスワローエンジェルC62 2なんぞ出てきて、もう北海道的にこれはなんとも。今日はバタバタしたけれど、 ちょっと良い締め括りであったか。明日はササラ電車を見に行くので早く寝なければ。